アイコン 中国輸出統制令の米政権 韓国2社に1年の猶予措置 米中の狭間で苦悶

Posted:[ 2022年10月13日 ]

米国は中国が米国の技術を使って国防力を急向上させてきたことに腹立ち、その原点である半導体に対する制裁、これまでは米国が制裁している国との取引企業、中国軍や政府およびウイグル収容所(強制労働所でもある)との取引がある企業を対象に制裁してきた。しかし、今回は中国の半導体企業に対し網羅的に制裁を課す、中国に対する輸出統制令である。
それは米国技術が入った半導体の製造に関するすべての取引を、中国半導体メーカーに対して中止させることにあり、輸出は厳しい認可制になり、事実上、禁止となる。

これを受け、韓国半導体企業の2社は中国で大規模生産しており、そうした工場への適用はあってはならないとする韓国企業と韓国政府は、米政権と交渉してきた。

しかし、すでにEUV(極端紫外線露光装置/蘭ASML製)の中国輸出は韓国の半導体企業に対してもすでに適用され、最先端の一桁台のナノ回路幅の生産はできない状態にもなっている。今に始まったことではないが・・・。

 



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<韓国勢半導体2社の中国工場>
サムスンは、
西安市に大工場を構え、最近でも新ラインを完成させている。
同社のNANDの40%を製造している拠点でもあり、また、半導体をパッケージングする蘇州工場も有している。

SKハイニックスは、
無錫工場に隣接する新産業団地に新工場を建設する計画を発表している。
無錫工場ではDRAMを生産し、インテルから買収した大連工場ではNANDを生産(インテルもNANDを生産していた工場施設)、重慶にパッケージング工場を有している。
無錫工場の生産規模は同社のDRAM生産のほぼ半分に達している。

両社のDRAM世界市場のシェアは合わせて70.9%、NANDは52.9%、他社が雁首揃えても代賛できる数量ではない。

米国認可で韓国企業の中国工場とトラブルでも発生した場合、生産に即影響し、半導体不足が全産業に影響し、チップ価格は暴騰し、チップを組み込んだ製品単価も高騰する。高過ぎて売れなくなり景気さえ悪化することになる。

韓国勢の中国生産の半導体は、主に中国企業や中国進出の外資系工場向けに生産している。中国企業や外資企業は、そうした半導体を組み込む電子製品のメーカーが中国内での消費者向けや米国はじめ世界へ輸出している。
ほとんどの製品を中国で生産しているアップル製品も大量のNANDやDRAMを搭載している。

<米政権の通知>
米商務省は、サムスンとSKハイニックスに対して「今後1年間は中国生産工場に輸出統制を適用しない」という方針を公式に通知したという。

今後1年間は米国の半導体製造装置や米国技術が入った半導体製造装置の輸出は許可を有しないが、「1年経てば輸出統制を適用する」と解釈でき、最悪、メンテナンスやラインの再構成などのサービスも受けられなくなれば、既存の製品はともかく、新たな半導体の生産はほぼ不可能になる。

メモリ半導体の競争力は、積層数や回路幅で決定されており、段を積み上げれば、回路幅が狭ければ、容量も大きくなり、消費電力も少なくて済む。当然、使用する電子製品メーカーは高い付加価値製品では高性能の半導体を使うことになる。
そうした高性能半導体が大量生産されるようになれば、単価も下がり、現在の基準で高性能半導体を作れない半導体工場は競争に負け、淘汰されることになる。

中国の米TI出身のSMIC(中国の受託生産最大手=ファンドリー企業)は、中国政府が関係しているとし、米国から制裁されているが、EUVなくしては不可能とされた7ナノの半導体を独自技術で開発したとニュースされている。

米バイデン政権は、米国№1主義を最初に唱えたトランプ政権より先鋭化させている。2016年までのオバマ時代までの新自由主義経済下、中国進出を果たした先端技術を有する外資系企業は、その技術を利用して中国で生産しており、すべて撤退するしかなくなる。

iPhoneは台湾の鴻海Gが中国深セン市で百万人を雇用して組み立て生産している。スマホに限らず、パソコンやタブレット、ウェアラブルのほとんどは中国で生産され、海外へ輸出されている。

中国排除は、そうした企業にも大きな影響を与える。
米制裁の次は高性能半導体の輸出禁止に向かうはずだ。
そうなれば、そうした製品群を中国で生産することは不可能になる。

米国主義でいえば、米国で生産すれば、とんでもない価格になり、売れなくなり、経済は低迷することになる。売れなくなり技術開発も遅滞する。

政治がどこに線引くか、電子業界は今後、米国を柱とする世界の政治に翻弄されることになる。
つい先日の露制裁における外資露進出企業の露店舗・露工場等の放棄による膨大な損失を抱えての撤退と重なることが中国でも発生する可能性もある。

現在でも中国は世界の工場の位置付けのままになっており、影響は露制裁どころではない。
日韓はともに中国との交易が大きく、このままだとともに沈没する宿命を帯びている。

米国№1主義は経済度外視の政治の怖さをそこに秘めている。人は政治では何も食べれないが、経済活動で飯を食べ生きている。

現在の中国を作り上げたのも米国・特にオバマ政権時代である。その相棒が当時のバイデン副大統領だった。すでにボケも始まっている11月で80歳を迎えるバイデン氏、年取るごとに頑固になるのは世界共通のようだ。

韓国2社は、すでに米政権から通知を受けているアプライドマテリアルズ(AMAT)、ラムリサーチ、KLAのような米国半導体装備企業との取引も多い。中国工場では1年後1件1件認可を取り、それも有効期間1年の認可制、新高性能半導体の製造は不可能になる。さらにメンテなどのサービスさえも禁止された場合、製造装置がトラぶった場合、半導体生産も不可能になる。

<メンテ・サービスの禁止でも半導体の工場は動かなくなる例>
台湾のUMCが米マイクロンのDRAM製造技術(以前生産委託し、製造技術を伝授)を中国新鋭の国策半導体企業「福建省晋華集成電路(JHICC)」に漏洩したとして、米国から制裁を受けたが、中国JHICCの新工場の生産施設はほぼ製造装置は搬入され、ライン化の最中局面だった。
米企業のライン構築のサービス担当者たちが全員帰国したことから、装置の設定など動かすことができず、新工場はそのまま閉鎖された。
なぜか、UMCとマイクロンと米司法当局は、UMCに対し6千万ドルの罰金刑で和解した。会社は関与せずUMCの担当2人がJHICC側にDRAM生産技術を流出させたとのことで政治決着させた。
米マイクロンはUMCに対して87億5千万ドルの損害賠償請求訴訟を準備していたが、米政府から圧力を受けたようだ。UMCの巨額ロビー活動が奏功したのだろうか。世の中、政治家も官僚も銭次第も世界共通。

(東芝はNANDの生産技術をSKハイニックスに盗まれたが、1千億円の損害賠償請求訴訟に対して、たったの200億円で決着させた。その後、和解した粉飾野郎どもの東芝は解体された。米マイクロンは1桁異なり1兆円の訴訟を準備していた。今時さえ、はっきりものさえ言わぬ経営陣の東芝は再度解体されようとしている)

<習近平中国主席の顔の面の厚さは鯨並み>
中国習政権が一番イカンところは、中国進出企業に対して、技術情報を開示要求している点にある。要求を飲まなければ工場稼動の認可さえ取り消す傍若無人ぶりだ。当然、取得した技術情報は中国企業に伝授されている。そのため、外資系企業は一世代前の技術での生産を余儀なくされている。

数年前、LGディスプレイの最新の中国工場が完成したものの、中国当局から技術情報開示を求められ、LGが難色を示したことから工場稼働の認可が下りなかった。LGの最新有機ELパネルの生産技術は韓国の国立研究所との共同開発であり、LGは提出できないとした。しかし、親中の文在寅政権下、暫くしてLG工場の稼動が承認された。技術情報が韓国政府側から中国側に流された可能性が高い一幕だった。
以上、


 

 


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