アイコン 韓国サムスンより台湾TSMCの優位性 群雄割拠の半導体業界


サムスンは汎用性のあるメモリ半導体を主力としており、同国のSKハイニックスも同じ。半導体ではサムスンが1位、インテルが2位、TSMCが3位、SKが4位。1と2位は入れ替わったりするが、サムスンが1位になる前は不動のインテルだった。

かって世界一の半導体強国の日本勢は、政治の無策により、日米通商交渉で米国からたたかれ、言われるがままに、姿かたちさえなくしてしまった。現在の米中貿易戦争をかって日米が繰り広げ、米国の圧倒的パワーに日本の政治家たちは米国に忠誠を誓い、言われるがままに政治主導で半導体もデジタル化のソフト開発の産業も駆逐させてしまった。

バブル後期の政権者の宮沢喜一から、細川護熙、羽田孜、村山富市、橋本龍太郎、小渕恵三、森喜朗、小泉純一郎の各首相の面々である。コロコロ政権が変わり長期政策どころではなく無策に没し、米国と一戦さえ交えず、事なかれ主義で内弁慶の経産省の問題でもあった。それは今に続いている。

森喜朗首相に至っては、日本がホスト国のサミットの席上で外国の元首たちに向かいITをイットと発言、日本の国家元首のITレベルを象徴するものとなっていた。

それから今に至るまで、FAXが主導するアナログ世界に国会も省庁も地方行政機関も埋没したままになっている。デジタル世界にあり算盤を弾いているようなものだ。
小泉に至っては日本國を米国のハゲタカに売り捌くほどのすさまじさで、今に至るまでそのツケであるデフレ・消費不況が続いている。無策という政治の貧困から生じ、現在に至っている。
そうして日本のIT産業は死滅した。この間、政治の世界にあり権謀術に優れた者が首相に就任し、歴史に名を残す政治家は誰一人としていない。

 

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本題、
システム半導体は性能が特化しており、駆動、通信、画像作成の基幹・派生システムの半導体で、ほぼ独占商品と競争化にあるシステム半導体に分かれる。
そうした半導体は目的によっては寡占化され、年間需要予測に基づき生産され、ほとんど値崩れを起こさない。
システム半導体の多くが、生産工場を持たず開発に専念、生産を外部委託するファプレスメーカーが多い。
そうした半導体を受託するファンドリーメーカーに生産委託している。今では工場を持つインテルは珍しい存在。

一方、メモリ半導体は設計そのものに多くの差異はなく参入しやすく、小型化、省電力化の進化が常になされ、常に価格競争にさらされている。
IT社会が進化を続け、開発も製造機械も生産設計・生産も進化し続けている。ただ、メモリ半導体は品薄=価格高騰、過剰生産=値崩れを40年以上繰り返している市場でもある。

ファンドリーメーカーの1位は台湾のTSMC、米欧の多くのファブレスメーカーから受注し、受託生産市場の過半の占有率を有している。同社は受託生産のファンドリー事業に特化し、メーカーにはならないと宣言している。

サムスンはメモリ半導体の巨大な生産工場をいくつも有しているが、IT機器や電子製品メーカーからメモリ半導体の需要が急増し、価格が高騰し、そのたびに生産工場を新たに開設、今度は供給過剰状態に陥り、当然価格も落ちた。
2014年から続いた半導体需要のピークは2018年3月だった。サムスンもSKも多くの在庫を抱えた状況下、サムスンは2018年前後に完成させた新工場では、メモリの生産をせず、ファブレスメーカーから受託生産する工場に転換した。
当時のシステム半導体は、需要が急増して間に合わないことなどから、また受託生産単価が安いことなどから、サムスンに対してシステム半導体の生産依頼が急増した。

そうした中でサムスンの「2030年№1宣言」=「30年システム半導体№1」宣言が発せられた。当時、失業問題などに悩む社会主義の文政権の圧力もあった。
受託生産は、半導体の生産設計において多くの技術が必要となり、その過程でシステム半導体の製品開発技術がファプレスからファンドリーにもたらされ、ファンドリー会社はシステム半導体の開発設計技術と生産設計技術の両方を取得することになる。そのため、その製品開発回路技術は極秘中の極秘、当然、特許も確立しているが・・・。
一方、TSMCはメーカーにはならないと宣言・約束してファブレスから受注している。

<性能競争>
超極細回路生産技術の極端紫外線焼付け技術を双方とも有し、サムスンもTSMCも高性能・省電力の生産技術力はほぼ同じだが、後発メーカーとしてそうした生産技術力に違いがあり、サムスンへの生産依頼のファプレスも旧世代の製品の発注が多く、一方、TSMCに対しては新開発製品の生産依頼が多くなっている。
新製品は新たな付加価値がもたらされており、当然、旧世代より新製品の生産量は拡大する。
生産技術力が同じならば、将来自社のライバルになる可能性のある受託生産会社に製造を依頼するファブレスメーカーは限定されてしまう。

<生産国の空洞化>
そうしたジレンマの中にサムスンのファンドリー事業はあり、拡大方針を採り続けている。当然、社会的責務として雇用拡大が求められていようが、最大のエンド需要先である米国では貿易保護主義を打ち出し、かれこれ5年、バイデン大統領になり、さらに先鋭化している。自由主義経済の米国が、半導体もEV用バッテリーも米国で生産せよとのお達し、世界最大の消費地でもあり、製造の貿易立国は岐路に立たされている。それも当然、最先端設備装備で進出することから、貿易額が急減するおそれもある。米国のEV補助金では、インフレ抑制法なるほうまで制定して、補助金対象車は一定割合の米国生産車、および北米製の材料や部品の使用が義務付けられている。バッテリーが車両販売価格の3割以上を占めるため、補助金をもらわなければ、他社との競争に負け、また比較して安価になる内燃機関車にも負け、淘汰されることになる(韓国メーカー3社のEVバッテリーの材料はほとんどが現状中国製)。

半導体では、そうした制約はないが、半強制的に米国進出を要請され進出を決定している。
サムスンは韓国でも巨大工場をまだ造り続ける計画でもある。
2018年前後に完成した工場をファンドリー工場へ転換させ、市場の16%前後まで急伸させたサムスンであるが、その後、シェアを伸ばせなくなっている。

<エヌビディアからの受注は・・・>
米半導体メーカーのエヌビディアが新しいグラフィック処理装置(GPU)の製造をファウンドリー(半導体受託生産)世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)に発注した。
GPUはコンピューターグラフィックや人工知能(AI)の演算に欠かせない半導体。前世代の製品はサムスンに製造を発注したが、新製品の発注先をTSMCに戻した。
 エヌビディアは9月20日、毎年恒例の技術イベント「GTC2022」を開催、GPUの新製品(RTX4090、4080)を公開した。
同社のジェンソン・ファン最高経営責任者(CEO)は、新GPUを手に持ち、「TSMCとの緊密に協力で、GPUに最適化された4ナノメートル製造プロセスを採用した」と述べた。
ファウンドリーの社名を公言するのは異例、「TSMC製(Made by TSMC)」をマーケティングポイントにした。
TSMCは世界のファウンドリー市場で50%以上を占める圧倒的首位。後発のサムスンがTSMCを追撃する中、「大口」顧客が相次いで離脱する状況に懸念の声が上がっている。

<大口顧客はTSMCへ>
 ファウンドリー業界2位のサムスン電子は現在、TSMCを懸命に追い上げている。今年6月には業界で初めて次世代技術「GAA、Gate All-Around)を採用し、TSMCに先駆け3ナノメートル製造プロセスによる量産を開始する勝負に出た。
(EUV導入はTSMCが早く、導入機数も多かったが、量産開始はサムスンが少し早かっただけ」
 しかし、グローバル顧客は最近、相次いでTSMCを選択している。

<クアムコムは・・・・>
米クアルコムは11月に発売するスマートフォン向けシステムオンチップ(SoC)である「スナップドラゴン8」第2世代(Gen 2)の製造をTSMCに委託した。
クアルコムは昨年末、同第1世代(Gen 1)の製造をサムスンに発注したが、今年5月にTSMCに乗り換え、次のモデルでもTSMCを選んだ。
半導体業界ではサムスン製のチップが発熱と性能低下の問題に直面したため、クアルコムがTSMCを選んだとの分析が聞かれる。(生産技術=生産設計の問題)
 TSMCの最大顧客であるアップルも、3ナノメートルによる量産に先に成功したサムスンではなく、TSMCと手を組んだ。

<アップルは・・・>
アップルはTSMCの3ナノメートル製造プロセスで独自設計した「M2チップ」を開発し、今年末に発売するノートパソコン「MacBook」に搭載する計画。
<AMDは・・・>
米半導体メーカーAMDも今年8月に発売した中央演算処理装置(CPU)「ライゼン(Ryzen)7000」シリーズにTSMCの5ナノメートル製造プロセスを採用、その後の製品もTSMCに発注した。
顧客獲得戦で押され、サムスンとTSMCのファウンドリー市場におけるシェアの差はますます拡大している。
台湾の市場調査会社トレンドフォースによると、今年第1四半期のTSMCのシェアは53.6%、サムスン電子は16.3%だった。
サムスン電子がファウンドリー事業に本格参入した2019年第1四半期には両社の差が29ポイントだったが、現在は37.3ポイントに広がった。

<後発のサムスンの大規模進撃は成功するか>
 TSMCは生産能力と歩留まりの両面で優位に立ち、世界の大口顧客を確保し、ファウンドリー業界の首位を守っている。
ファウンドリーは決められた納期に約束された品質の半導体を支障なく供給する信頼が重要であり、後発走者であるサムスン電子が短期間にTSMCに追いつくのは容易ではない。
現在、サムスン電子の生産能力はTSMCの40%程度。
半導体業界関係者は「サムスンはこれまでメモリ半導体とファウンドリーに投資を分散し、サムスンの社内受注割合も半分程度と高く、新規顧客を攻撃的に取り込むのは難しい側面がある」としている。
 サムスンファウンドリー事業部がサムスンの内部組織であることも弱点。
TSMCの魏哲家CEOは、サムスンを念頭に「TSMCは商品を設計する能力があるが、絶対に自社製品を作らない」とし、「TSMCの成功はすなわち顧客の成功だが、ライバルはそうは言えないだろう」と述べた。「セキュリティー面でサムスンより安全だ」と主張している。
(システム半導体の自社開発と組み込む製品の自社生産)
 
サムスンも3ナノ製造プロセスによる世界初の量産と米テキサス州タイラー市への大規模なファウンドリー工場を建設など、大々的な反撃を目指している。
半導体専門家である韓国科学技術院(KAIST)の金ジョン浩教授は「サムスンは最近、顧客としてグーグル、クアルコムを確保したと推定される」とし、「長期的にはファウンドリー市場でサムスンがTSMCと共にツートップの座を守るのではないか」と話している。

しかし、サムスンが米国に巨大工場を新たに開設しても、それ以上の投資額でTSMCも米国に新工場を開設する。米国の求めに応じて、米進出発表が早かったTSMCが既存顧客分も含め、取り込みも早く、TSMCの優勢は変わらない。

<ARM社の買収動向>
最新の動きでは、ソフトバンクがサムスンと英ARM社の売却交渉に10月にも入るとしている。SBは2020年に完全子会社の英ARMを米エヌビディアに売却することで合意したが、独占禁止の面から欧米政府から承認されず頓挫、中国事業など大打撃を受けているSBは次の売却先にサムスンをターゲットにした。
売却予想価格は5兆~7兆円規模とされている。購入できる企業は限られ、SBも必死。
「システム半導体2030№1」宣言のサムスン、ファンドリー事業の伸び鈍化の事態に、サムスンとしても喉から手が出るほど欲しいARM社でもある。

SB孫氏はたたき上げ、サムスン李氏はお坊ちゃま、状況からしてサムスンは言い含まれて高値で購入する可能性が高い。
ARM社のシステム半導体は一部、サムスンですでに製造している関係にもある。

<サムスンのSKのジレンマ>
両社は中国に大規模半導体製造工場を有している。サムスンが西安に、SKが無錫の工場にそれぞれ新たな工場も新設して生産量を急増させている。
そのため、韓国から中国への半導体輸出が減少過程に入っている。そうしたこともあり韓国の貿易収支に陰りが見えている。

<半導体需要に翳り>
半導体の需要は、組み込むIT機器・電子製品・家電製品が、テレーワーク・巣篭もりの新コロナ需要一巡、世界中で高いインフレにより経済悪化、スマホ・パソコン・タブレット・ウェアラブルの需要が減少している。半導体を大量に使用する新たなデータセンターの開設も少なくなっている。

そうした製品の一大生産拠点であり消費地でもあるのが中国。
 中国は、経済波及効果が大きな不動産バブル崩壊、新コロナによるロックダウンなどもあり、経済が低迷している。
韓国勢は中国の製品製造会社向けに半導体や部品部材を大量に輸出する関係にあることから大きくその影響を受けている。

<欧米の中国制裁、韓国系半導体企業にも影響>
欧米は中国に対して最先端の半導体製造機器の販売を禁じている。
米政府は、特に制裁を課した中国企業に対して、製品の輸出・アフターサービスの提供さえ禁止しており、「中国製造2025」の国家戦略は5年ほど遅れると見られている。5年遅れれば欧米も5年先を進むことから当面、追いつけないことになる。
その余波は回路幅7ナノ以下を実現する極端紫外線を用いた半導体露光製造装置(EUV)の輸出も禁じられ、サムスン・SKの中国工場では超高性能チップの生産は不可能となっている。

オランダのASML社の極端紫外線露光装置で実現できる回路幅7ナノ以下や13ナノ以下の液浸露光半導体製造装置(ArF液浸)も中国輸出が禁じられている。

中国最大の半導体メーカーであるSMICにしても主力は20ナノ前後、回路設計技術も含めて中国の半導体技術は制裁により遅れている(ただし、同社はEUVを使用せず7ナノを実現したと今年7月報じられている。中国は国家挙げて生産技術の向上を図っていることも事実)。

<生産用回路設計の技術力の格差>
半導体は生産設計技術力もファンドリー事業会社にとって核心技術、アマゾンがサムスンに生産委託したデータセンター用のシステム半導体につき、半導体に問題が生じ、センター開設が遅れたことなどから約7千億円がアマゾンからサムスンに損害賠償請求され、5千億円前後で和解したこともあった。

(昨年10月には、GMのEV火災での14万台のリコールでは、リコール総費用18億ドル、LG側負担7割の13億ドル、EVも普及してきておりリコールが数百万台になった場合、致命傷になる可能性もある。半導体も似たようなもの)

サムスンではまだ生産用の回路設計技術がTSMCより劣っているようだ。そうした懸念では、独占的システム半導体でない限り、ライバル社のシステム半導体に需要先が変更し、顧客を失うおそれもあり、ファブレスメーカーにとって製品リスクは許容できないものでもある。

メモリ半導体(DRAM+NAND)の生産用回路技術は進化させ続ければよいが、システム半導体は顧客ニーズに応じた多種多様な半導体であり、それぞれに生産用回路設計技術が必要でそれも進化し続けており、TSMCは専業だけにサムスンより一歩先を行っているようだ。

TSMCはそれを実現するため、設計技術者の陣容もさることながら、多くのラインを持つ試験生産用の大規模生産施設も有している。


スクロール→

SOX半導体指数

 

末日

21/12.

4,039

22/1

3,303

22/2

3,429

22/3

3,429

22/4

2,919

22/5

3,098

22/6

2,556

22/7

2,967

22/8

2,677

930

2,348

 21/12月の

0.5813

 

2021年の半導体メーカーの売上高ランキング

 

メーカー

方式

/百万ドル

前年比

1

サムスン

+

83,085

34%

2

インテル

75,550

-1%

3

TSMC

56,633

24%

4

SKハイニックス

37,267

38%

5

マイクロン

製 

30,087

33%

6

クアルコム

開発

29,136

51%

7

NVIDIA

開発

23,026

57%

8

ブロードコム

開発

20,963

18%

9

メディアテック

開発

17,551

60%

10

TI

16,904

25%

11

AMD

開発

16,108

65%

12

インフィニオン

13,616

21%

13

アップル

開発

米 

13,430

17%

14

STマイクロ

スイス

12,574

24%

15

キオクシア

12,132

15%

16

NXP

オランダ

10,715

28%

17

アナログ・デバイセズ

10,079

24%

 

小計

 

 

478,856

26%

 

・製は自社開発生産、受は受託生産、開発は生産委託

 

ICインサイトほか、

 

[ 2022年9月30日 ]

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