アイコン 半導体 冬の時代到来 米国の中国輸出規制強化 サムスンの業績


1、インフレ退治のための世界経済の調整による半導体需要低迷
2、米国の中国への最先端技術輸出強化策

1については、SOX半導体指数が昨年12月をピークに、以降一貫して低下し続けている。
中国では、主要都市のロックダウンの影響もあろうが、1~6月期、国内の半導体の生産量もスマホやパソコンなどの電子製品の生産数も前年同期比で減少している。
 それほど、世界のインフレは加速度的に消費者に影響してきていることを伺わせるが、インフレ退治の米金利の上昇は続き、米国以外での対ドル為替安から生じる世界の高いインフレ率の脅威は世界各国の経済に深刻なダメージも生じさせている。

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2については、
ロイター通信が、米国政府が早ければ10月7日から、中国の先端半導体を生産に必要な装備の輸出を制限する措置を発表すると報じている。

 中国のSMICが制裁されEUV(極端紫外線露光装置/ASML製)が入手できないにもかかわらず、7ナノの半導体製造の開発に成功したニュースも流れ、急いだものと見られる。
規制対象は具体的には、18ナノ以下のDRAM、128層以上のNANDフラッシュ、システム半導体の14ナノ以下のロジックチップを生産する中国の半導体企業に適用される。

前回のファーウェイに対する制裁では、同社製スマホは世界一を四半期ベースで初めて達成したものの、制裁により今では姿を消したが、今回の米国の措置は個別企業ではなく、中国の半導体製造会社に全車に適用される。
関係する製造装置や米国企業の技術が入った装置が実質輸出禁止措置となる。

韓国勢は、サムスン電子が西安市に巨大半導体工場を持ち、同社のメモリNANDの38%を生産している。
また、SKハイニックスは無錫工場でDRAMの約50%、NANDを25%製造している。
そうした外資系半導体企業に対しては、審査をかけた上で輸出認可されるという。
これまでもオランダのASML社製のEUV(シェアほぼ100%)は中国への輸出を禁じており、韓国勢の中国工場にも適用されている。
今回の輸出規制は、NANDの長江メモリ(YMTC、長江存儲科技/親会社は紫光集団=清華大学グループ/準国営)、DRAMの長シン存儲技術(CXMT/国営)などの打撃が大きいものとみられる。
システム半導体の受託生産で中国最大手のSMIC(中芯国際集成電路製造/元インテル社員、民営)はすでに輸出規制の対象となっている。
以上、
半導体はすでにメーカーで在庫を抱え、生産調整に入っているメーカーも多い。また、新規工場投資を先送りするなど緊急対策を採っている。ところが、半導体№1企業のサンスンは生産調整を一切行わないとしている。
半導体は好不調を繰り返しており、近いうちに好調に転じ、莫大な利益を稼げた過去に倣ったものだという。ただ、当時と今回は異なり、また汎用性も高いメモリ半導体を主力にした№1企業でもあり、吉と出るか凶と出るかわからない面もある。

半導体の生産は13ナノ以下はEUVで実現しており、EUVはすでに中国輸出を禁じている。すでに中国ではEUVなしに7ナノの半導体の開発に成功しており、米国は半導体の製造にかかわる多くの装置に対して輸出規制する動きとなっている。
半導体製造には多くの工程があり、検査装置も含めてそれぞれに製造装置が必要、最初に半導体を開発した米国の技術は、そうした各工程のあらゆる分野の装置に利用されている。

ただ、半導体工場を米国に造れという米政権、韓国勢や台湾勢が巨大工場での進出を表明している。しかも米国は材料も北米産を使えという。
米国の労働コストや物流コストは中・韓・台と比較にならないほど高く、材料も高い。そうして高価な材料と労働により生産された半導体は当然高くなる。半導体を各種組み込むセットメーカーもしかりで、最終製品メーカーは高い買物になり、消費者は高い買い物をさせられることになる。

中国のこうした半導体メーカーに対して輸出規制したところで、中国半導体メーカーがベトナムやタイなどに進出して生産し、安価に最終製品が市場に出回れば、米国では販売できないにしても、ほかの国では高い米国製は駆逐されることになる。

中国の場合、半導体は「中国製造2025」の国策で動いており、SMICが実際7ナノの開発に成功したとすれば、ほかのメーカーに技術供与され、米韓台メーカーにひけを取らない半導体の製造が可能となる。
また、こうしたハード面は現在の生産方法では限界も生じ、新たな半導体の開発やAIなどソフト面の開発競争が進むしかない。それを支援するAI用のシステム半導体の設計こそ、今後の半導体競争の主流になるものと見られる。

欧州では、エネルギー問題も含めて、経済疲弊からすでに自国第一主義のナショナリズムが台頭してきており、米国追随主義は破綻する可能性もある。
現実には米国自身がナショナリズムから、友好国ですら貿易制裁してきたトランプのような政権時代が再びやってくる可能性も高い。

日本が没落したのも現在の米中貿易戦争を、1993年当時、日米通商交渉により日本は米国から制裁を受け、バブルも半導体産業もITも制裁を受け崩壊した歴史がある。バブル当時、米国では日本車が米車を駆逐し、日本が米国のビルやゴルフ場など買い占めたため、米国のプライドがそれを許さなかったことによるもの。歴史は繰り返される。
 
ただ、中国は2015年当時からITやAIの技術者を国主導で学校を作り養成してきており、14億人から選抜され、国家主導でのスピードは計り知れないものがある。
米国は中国の最先端分野での台頭を許さないだろうが、SMICの創業者は台湾のTSMC同様、インテル出身でもある。米国に中国人の研究者がいる以上、最先端の技術情報は漏れる。今でも研究機関に山ほど在籍している。欧州も含めれば、限りがない。

サムスン電子の業績
サムスン電子が10月7日発表した2022年7~9月期の連結決算(速報値)によると、本業の儲けを示す営業利益は10兆8000億ウォン(約1兆1120億円)で前年同期比▲31.7%減少した。売上高は2.7%増の76兆ウォンだった。
営業利益が前年同期を下回ったのは2019年10~12月期以来。
 同社は昨年7~9月期に売上高が初めて70兆ウォンを突破した後、今年1~3月期まで3期連続で過去最高の売上高を記録した。しかし、4~6月期に77兆2000億ウォンと小幅減少したのに続き、7~9月期も減少した。
以上、売上高が増加し、営業利益が減少したのは単価下落の影響だが、半導体の材料費も物流経費も大幅に上昇しており、後日発表される分野別業績内容で検証する必要がある。

同社の業績の柱は、スマホと半導体、2015年の半導体景気が訪れる前はスマホが業績を牽引していたが、その後は中価格帯以下は中国勢におされ、プレミアム価格帯はアップルとの熾烈な争いが現在も続いている。ただ、アップルは品種を絞っており、またOSを有し利益率は比べようもない。
現在の収益頭の半導体はSOX指数に表れているようにピークの昨年12月からすでに4割以上下がっており、単価安に見舞われている。
米金利は上昇し続けており、経済悪化は今後とも続く、米政府の購入補助金が付くEVでさえ、購入ローン金利が上昇しており、補助金が付いても内燃機関車が安いことから、どこまで売れるかわからない。
EVは内燃機関車より更に多くの半導体を使用する。ただ、車両用は耐久性が求められ、メモリ半導体ですら一般用とは異なる。車両用は多くのシステム半導体が用いられており、サムスンの出番はそれほどなく、パワー半導体のファンドリー事業も含め目下強化中。

インフレ退治の金利高に世界経済の低迷、ウィズコロナ策により新コロナ需要(巣篭もり・テレワーク)の一巡もあり、今でも世界の工場である中国の電子製品の生産量は上半期からすでに減少に転じている。そうした影響を受けたサム寸の業績内容となっている。

 

SOX半導体指数

末日

月初価格

19/12

1,849

20/3

1,510

20/6

1,996

20/9

2,244

20/12

2,795

21/3

3,124

21/6

3,345

21/9

3,258

21/12

3,946

22/3

3,429

22/6

2,556

22/9

2,306

10/6

2,508

 

↓主要国のインフレ率

インフレ率が高ければ、賃金が少々上がったとしても追いつかず、消費者は多くの製品を購入することができなくなり、経済は下り坂に至る。

特に食料と電力・エネルギーは、生命維持装置の必須アイテム、ほかは故障でもしない限り、買い替え期間が長期化し、売れなくなる。経済は悪化し、マイナススパイラルに陥る。


スクロール→

 

インフレ率

食料インフレ率

 

9月

8月

7月

9月

8月

7月

日本

 

3.0

2.6

 

4.7

4.4

中国

 

2.5

2.7

 

6.1

6.3

韓国

5.6

5.7

6.3

 

7.9

7.9

シンガポール

 

7.5

7.0

 

6.4

6.1

フィリピン

6.9

6.3

6.4

7.4

6.3

6.9

タイ

6.4

7.8

7.6

9.8

9.3

8.0

インドネシア

5.9

4.6

4.9

7.9

7.7

9.3

インド 

 

7.0

6.7

 

11.4

10.9

米国

 

8.3

8.5

 

11.4

10.9

メキシコ

8.7

8.7

8.1

 

14.2

14.1

ブラジル

 

8.7

10.0

 

13.4

14.7

イギリス

 

9.9

10.1

 

13.1

12.6

フランス

5.6

5.9

6.1

 

7.7

6.8

ドイツ

10.0

7.9

7.5

 

15.7

14.0

イタリー

8.9

8.4

7.9

11.8

10.5

10.0

スペイン

9.0

10.5

10.8

 

13.7

13.5

ユーロ圏

10.0

9.1

8.9

 

13.9

12.8

 

[ 2022年10月 8日 ]

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