世界的名門企業であるドイツのアディダスが、中国および中華圏市場で大苦戦をしているという。
新コロナ感染症の影響を受けたことも事実だが、他のブランドと比較すると、それ以外の原因も見えてくると中国メディアの第一財経が報じている。
アディダスがこのほど発表した決算報告によると、2022年通期の売上高は前年比11%増の225億1100万ユーロ(約3兆2千億円)で、株主利益は同▼71%減の6億1200万ユーロ(約870億円)だった。
一方、中華圏での売上高は▼36%減(2300億円前後)で、特に同年第4四半期(10~12月)の売上高は▼50%減だった。アディダスは2年あまりになる7四半期連続して中華圏での売上高が減少し続けている。
アディダスは22年第3四半期決算を発表した際に、大中華圏での売上高減少の原因として、
・感染症による物流の停滞
・同社の大規模な在庫買い戻し
などを挙げた。
感染症の封じ込めも同地域の消費者需要を減少させたと主張した。
アディダスが2002年に提携していたYeezyブランドの事業から手を引いたことも、会社全体の業績にある程度影響を与えた。
Yeezyブランドは米国のラッパー「カニエ・ウェスト」が立ち上げたブランドで、米市場では一定の人気がある。
アディダスが中国市場を軽視していたのではない。
2019年には上海市内にアジアクリエイティブセンターを設立し、中国大陸市場での新たな改革に取り組んでいる。
例では、中国人には春節(旧正月)を迎えるに際して、新しい干支に関連する商品を縁起物として歓迎する習慣があり、アディダスは23年の春節期にウサギをあしらった新しいスポーツシューズを発売した。
アディダスのアドリアン・シウ(蕭家楽)大中華圏董事総経理(会長兼社長)は、取材に対して「今後2~3年で、中国で作られる製品の総量が、アディダスが市場に送り出す製品の3分の1を占めるようになる。アディダスは、より現地化されたイノベーションを通じて中国の若い消費者との距離を縮めていく」と述べている。
ナイキも中華圏で業績悪化に直面しているが、アディダスほどにはひどくない。
22年11月30日を期末とする同社23会計年度第2四半期決算で、ナイキの大中華圏の売上高は前年同期比6%増の17億8800万ドル(約2360億円)だった。ただし、ナイキも大中華圏での売上高を4四半期連続で減少させている。
<アディダス・ナイキの主たる減少要因は国内メーカーの台頭>
中国では、自国ブランドの台頭もアディダスを圧迫している。
福建省晋江市に本社を置く「安踏体育用品」は22年上半期、同期のアディダス中国の約2倍となる259億7千万元(約5000億円)の売上高を達成した。
福建省泉州市に本社を置く「特歩集団」の売上高も前年同期比35.4%増だった。
北京市に本社を置く「李寧」も、「高い成長」を見せている。22年の業績は、売上高は前年比14.3%増の258億300万元(約4900億円)で、新コロナ感染症前の19年の約2倍に達している。
ロンドンに拠点を置く市場調査会社のユーロモニター・インターナショナルによると、21年にはナイキとアディダスの中国における市場シェアが目に見えて低下した。
ナイキの場合、20年には25.6%だったシェアが、21年には25.2%になった。
アディダスの場合には、20年が17.4%で、21年には14.8%にまで低下している。
一方、中国内勢は、
「安踏体育用品」の中国市場におけるシェアは、20年は15.4%だったが、21年には16.2%に上昇。
「李寧」は20年には6.7%、21年には8.2%と、やはりシェアを拡大した。
アディダスについては、不適切なマーケティング戦略が災いしたとの見方がある。
中国市場で価格競争をやみくもに展開したために売上高と利益を減らし、市場シェアまでも失ってしまったとの指摘がなされている。
アパレルメーカーの「良栖品牌」の創業者である程偉雄氏は「スポーツブランドにとって、マーケティングを重視し研究開発を軽視する時代は過ぎ去った。研究開発への投資拡大を加速する必要がある」と指摘。
程氏によると、スポーツ関連商品では新たな素材の導入や機能面の向上を目指す研究と応用のために、投資しつづける必要がある。スポーツウェアのファッション性が評価されて事業規模が急拡大したとしても、効果は一時的なものにすぎず、シューズやその他の素材の研究で大きな成果を上げることが、ブランドをより長期的に成長させる道としている。
以上、レコードチャイナ参照
中国は3期目の習近平体制へ移行するため愛国主義を前面に押し出しており、カントリーリスクのある国となっている。3期目に入っても変わる兆候はない。政経分離など昔の戯言。世界は政治による経済の制裁ブームでもある。
マラソンにおける世界的な厚底ブーム。好成績者が続出して宣伝しなくともマスコミが報道し、開発したナイキは高収益率となっている。
超高速スイミングウェアーは禁止されたが、禁止されるまで一大ブームを巻き起こしたことも事実、各種スポーツでは製品開発競争が繰り広げられ、野球メジャーリーグ選手のシューズを見ればわかるとおり熾烈を極めている。
新コロナ下でも健康維持にキャンプや一人スポーツのジョギングなどは広がりを見せた。当然、スポーツファッションもシューズもそうしたニーズに応えたメーカーの売上高は大きく落ちていない。
アシックスも12月期は円安の追い風もあり、大きく業績を好転させている。同社は2018年12月期から2020年期まで低迷し続けてきていた。
22年12期の売上高は前年比19.9%増の4,846億円、営業利益は54.9%増の340億円、株主利益は111.5%増の198億円。
欧州で好調、北米はEC売上高の増加に伴う宣伝広告費の増加により営業利益段階から大幅減益となっている。市中の店舗では販売強化中のナイキに押された可能性が高い。
大谷選手のシューズもこれまでアシックスだったが、広告費が高騰、2023年はニューバランスに奪われている。テニスのジョコビッチもアシックスだがもう峠を越えかけている。落ちるのは早いテニスの世界。市場の大きい各スポーツに広告塔が必要だろう。
東南アジアや南アジアでは大幅な売上高の増加を見ており、今後が期待できる。
そん所そこらの内弁慶ではないアシックスにはさらに頑張ってもらいたいものだ。
↓セグメント別の営業利益は粗利益かもしれない。
営業利益率は最低でも10%以上が望まれよう。
デフレ国の日本は単純にTV-CMを増加させれば売れる国でもある。
スクロール→
アシックス 22/12月期決算/連結:百万円
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売上高
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営業利益
|
営業
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セグメント別
|
売上
|
前期比
|
営利
|
前期比
|
利益率
|
パフォーマンスランニング
|
258,272
|
24.0%
|
49,181
|
15.4%
|
19.0%
|
コアパフォーマンススポーツ
|
54,155
|
31.0%
|
9,489
|
88.3%
|
17.5%
|
スポーツスタイル
|
43,466
|
30.7%
|
6,425
|
49.1%
|
14.8%
|
アパレル・エクィップメント
|
35,278
|
3.4%
|
-1,645
|
-
|
-
|
オニツカタイガー
|
43,011
|
11.6%
|
7,399
|
49.1%
|
17.2%
|
小計
|
434,182
|
|
70,849
|
|
16.3%
|
調整
|
49,900
|
|
-36,847
|
|
|
決算数値
|
484,082
|
19.9%
|
34,002
|
54.9%
|
7.0%
|
地域別
|
日本
|
123,402
|
12.3%
|
6,046
|
406.6%
|
4.9%
|
北米
|
105,331
|
22.2%
|
26
|
-96.9%
|
0.0%
|
欧州
|
130,099
|
22.0%
|
11,254
|
3.4%
|
8.7%
|
中華圏
|
62,411
|
18.7%
|
10,067
|
10.1%
|
16.1%
|
オセアニア
|
33,292
|
34.5%
|
5,211
|
55.7%
|
15.7%
|
東南・南アジア
|
18,448
|
69.2%
|
2,984
|
209.5%
|
16.2%
|
その他
|
43,630
|
24.2%
|
3,646
|
102.9%
|
8.4%
|
小計
|
516,613
|
|
39,234
|
|
7.6%
|
調整
|
-32,531
|
|
-5,232
|
|
|
決算値
|
484,082
|
19.9%
|
34,002
|
54.9%
|
7.0%
|