佐世保重工業(SSK)が発表した2025年9月中間決算は「増収減益」。一見よくある決算に見えるが、世界の造船・海運市場の潮流を踏まえると、同社の立ち位置がよりはっきりと浮かび上がる。
機械部門のクランクシャフト需要が伸びたのは、世界の海運業が依然として高水準の設備投資を続けているからだ。背景には、環境規制への対応でエンジンの更新需要が続いていることに加え、新興国を中心とした物流量の増加がある。国際海事機関(IMO)の環境基準強化は、老朽船の改修や更新を促し、中型造船所にも幅広い商機を生んでいる。SSKが原材料調達を多角化しコストを抑制できた点は、世界的な素材価格の乱高下が続くなかでの競争力維持につながった。
一方で、収益面で主力となる修繕部門は、国内艦艇工事の季節要因に左右され、なお不安定だ。特殊船や米海軍の大型修繕で数字を押し上げたものの、世界の修繕市場ではアジアの低価格競争が強まっており、日本の造船所が安定的に稼働率を確保するのは容易ではない。とりわけ韓国・中国勢は政府支援を背景に設備投資を続け、欧州では環境規制対応の改修需要が膨らんでいる。国内だけに視線を向けていては取り残されかねない状況だ。
それでも同社が5期連続の黒字を見込むのは、官需と民需の双方を取り込む受注基盤と、特殊船分野での技術力が世界的にも一定の評価を得ているためだ。ただ、円安と資材市況の不安定さが続くなかで、今回の増収減益は“待っていれば戻る”と楽観できる類のものではない。
世界の潮目が大きく動くなか、ニッチ技術を武器に海外修繕案件の取り込みをさらに強められるか。老舗造船所にとって、世界市場を前提にした事業モデルへの転換は避けて通れないテーマになっている。