アイコン サムスン重工業、ロシア最大の造船所を提訴 地政学リスクが浮き彫りに


韓国の造船大手・サムスン重工業は6月18日、ロシア極東のズベズダ造船所に対し損害賠償を求めて訴訟を起こしたと発表した。問題となったのは2020〜2021年に締結された約5,100億円規模の資機材供給契約で、ウクライナ侵攻による国際制裁の影響を受けて履行が困難となり、最終的にサムスン側が契約解除に踏み切った。

契約は、サムスンがLNG運搬船やタンカー向けの船体ブロックを製造し、ズベズダで最終組み立てを行うというものだった。しかし2022年のロシアによる侵攻以降、ズベズダは米国の制裁対象となり、設計作業が中断。その後、ズベズダ側が一方的に契約解除を通告したことから、サムスンは国際仲裁に訴え、今回の提訴に至った。

 

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同社はすでに受け取っていた前受金8億ドルの返還を留保しており、それを上回る損害賠償を求める構えだ。
「違法な契約解除による損害を精査し、国際仲裁で正当性を明らかにする」とサムスン関係者はコメントしている。

一方で、造船業界では「被害は限定的」との見方も出ている。事業は設計段階で止まり、資機材調達やドック確保などの実質的なコストが発生していないためだ。むしろ当時の受注価格は現在の市況と比べて割安であり、「今となっては手を引いた方が得策」との声もある。

今回の訴訟は、企業が国際契約を結ぶ上で地政学リスクがいかに大きな影響を与えるかを示す一例だ。とくにエネルギー・輸送インフラを巡る事業では、政治・外交情勢の変化がビジネスの根幹を揺るがす。サムスン重工業の戦略的な見切りと、今後の仲裁判断が注目される。

 

 

[ 2025年6月19日 ]
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