三菱電機が2月3日に発表した「グループ約4,700人の早期退職」と「8,000億円規模の事業選別」は、同社が長年抱えてきた低収益体質に終止符を打つための、踏み込んだ構造改革である。過去最高益を更新する中で断行された今回の施策は、いわゆる「黒字リストラ」であり、日本の大手電機メーカーの経営モデル転換を象徴する動きと言える。
今回の早期退職募集(ネクストステージ支援制度)は、53歳以上の正社員などを対象とし、結果としてグループ従業員の約3%にあたる4,700人規模が入れ替わる想定だ。組織の高年齢化を是正し、若手への権限移譲やデジタル・エンジニアリング企業への転換を加速させる狙いがある。特別退職金などの費用として今期約1,000億円を計上するが、同社はこれを将来の固定費削減に向けた「先行投資」と位置付けている。
人員削減と並ぶもう一つの柱が、8,000億円規模に及ぶ事業選別だ。特に注目されるのが、長年収益性に課題を抱えてきた自動車機器事業である。カーナビや電動化関連部品などを含む同事業について、同社は売却を前提とした検討を進めており、投資ファンドなどを候補とする入札プロセスに入ったとされる。2025年度中に方向性を定めるとしており、この金額は連結売上高の約15%に相当する。いわば「聖域なき仕分け」であり、FA(工場自動化)や電力インフラといった強みの分野へ経営資源を集中させる姿勢を鮮明にした。
市場や投資家の受け止めは概ね前向きだ。過去の品質不正問題を経て、三菱電機には「何でも手掛ける総合電機」から「収益性重視のデジタル企業」への転換が求められてきた。低採算事業を整理し、資産効率を高めることで、ROA(総資産利益率)など資本効率の改善につなげる狙いが明確だからだ。
今回の改革は、終身雇用や総合路線を前提としてきた日本型経営からの脱却を示す一例でもある。大手メーカーであっても、人員や事業を守ること自体が目的ではなく、「選択と集中」によって競争力を維持する時代に入ったことを示している。今後は、自動車関連事業の具体的な売却先や、成長ドライバーと位置付けるFA分野をどこまで拡大できるかが、三菱電機の再成長を占う焦点となりそうだ。