ホンダが14日発表した2026年3月期連結決算(国際会計基準)は、最終的なもうけを示す純損益が4239億円の赤字(前年は8358億円の黒字)となった。世界的な電気自動車(EV)市場の変調を受け、開発中だったEV3車種の中止を決めたことで、関連損失を1兆5778億円計上したことが大きく響いた。1957年に東京証券取引所に上場して以来、通期での最終赤字は初めて。
売上高は前年比0・5%増の21兆7966億円だった一方、本業のもうけを示す営業損益は4143億円の赤字(前年は1兆2134億円の黒字)に転落した。
赤字の主因となったのは、主要市場である米国でのEV需要の急減速だ。ホンダは今年3月、次世代EV「0(ゼロ)」シリーズなどの旗艦車種を含む3車種の開発中止を断行。これに伴い、工場設備の資産価値を帳簿上で引き下げる減損損失に加え、部品を製造する取引先への補償費用などの巨額損失を計上した。
同時に発表した27年3月期の業績予想は、純損益を2600億円の黒字と見込む。ただ、EV戦略の見直しに伴う損失処理は来期も5000億円程度残る見通しで、黒字化を果たしても利益水準は低く、厳しい経営環境が続く。
「EV旋風」一転、際立つ誤算
ホンダが上場以来初となる最終赤字に追い込まれたことは、日本の自動車産業が直面する「EVシフト」の危うさを改めて浮き彫りにした。
かつて「2040年に新車販売をすべてEVと燃料電池車(FCV)にする」と掲げ、他社に先んじて脱エンジンを鮮明にしたホンダだったが、現実は甘くなかった。最大市場の米国では消費者が高価なEVを敬遠し、実用的なハイブリッド車(HEV)に回帰する動きが加速。強気の投資が裏目に出た格好だ。
今回の決算で1・5兆円超という巨額の「損出し」を行った背景には、早期に損失を確定させることで経営の足かせを外したいという三部敏宏社長の苦渋の決断がある。しかし、ホンダの看板を信じて投資を続けてきた部品メーカーなどのサプライヤー(供給網)への打撃は計り知れない。
来期の黒字転換を見込むとはいえ、世界的に「EVの踊り場」が続くなか、次なる成長の絵図をどう描き直すのか。創業以来の危機を乗り越えられるか、ホンダの「現場力」と「戦略の柔軟性」が今、かつてないほど問われている。