アイコン フェラーリ初のEV、市場は「冷や水」 株価急落、ブランド希薄化に懸念

Posted:[ 2026年5月27日 ]

伊高級車メーカーのフェラーリが発表した初の完全電気自動車(EV)「ルーチェ」を巡り、株式市場が揺れている。26日のミラノ株式市場で同社株は一時前日比7.8%安まで急落し、年初来下落率は8.7%に達した。世界屈指の収益力を誇る「跳ね馬」の電動化戦略に対し、市場は「ブランドの唯一無二の価値が揺らぎかねない」との冷ややかな視線を投げかけている。


■ 「アップル流」が招いた均一化の影

投資家が警戒感を強めた最大の要因は、EVシフトがもたらすデザインの「コモディティ化(汎用商品化)」だ。

ルーチェの外観デザインには、米アップルの元最高デザイン責任者(CDO)であるジョニー・アイブ氏が率いるデザイン会社が深く関わった。空力性能を極限まで追求した結果、スリムなLEDライトと滑らかな面構成を採用したが、これが市場の不評を買った。

AIRキャピタルの調査責任者、ピエールオリヴィエ・エシグ氏はリポートで、ルーチェの価格が55万ユーロ(約1億円)からと高額である点に触れた上で、「米テスラの『モデル3』やホンダの『アコードEV』を混同したようだ。フェラーリは新戦略で『らしさ』を見失っている」と厳しく指摘した。EV化によるフロントグリルの廃止や、空力重視のシルエットが、他社EVとの差別化を困難にしている構図が浮かび上がる。

 



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■ 「5人乗り」実用性への傾斜

さらに市場を驚かせたのは、同社として歴史上初となる「5人乗り・4ドア」仕様を選択した点だ。

同社は初の4ドアクロスオーバー車「プロサングエ」で顧客層の拡大に成功したが、今回の5人乗りへの拡大は、超富裕層が求める「絶対的な特別感(エクスクルーシビティ)」を希薄化させ、実用的なファミリーカー路線へ接近しすぎているとの懸念を誘発した。

性能面では、4モーター搭載で最高出力1050馬力を叩き出し、時速100キロメートルまでの加速時間は2.5秒と、V型12気筒(V12)エンジンを積むプロサングエをも凌駕する。しかし、フェラーリのコア資産である「内燃機関が奏でる官能的なサウンドとドラマ」を欠く中、1億円の価格に見合う価値を富裕層に提示し続けられるかは不透明だ。


■ 揺らぐ電動化戦略への不信

株価急落の背景には、同社のマルチエネルギー戦略に対する投資家の不信感も透ける。

フェラーリは直前、2030年時点の販売構成比における完全EVの目標を、従来の4割から「2割」へと半減させたばかりだった。欧州を中心とするEV需要の減退を受け、ポルシェやランボルギーニなどの競合が相次いで電動化計画を後ろ倒しにする中、フェラーリはあえてニッチかつ巨額の投資を伴う高級EVの投入に踏み切った。

目標を下げながらも象徴的なEVを投入するという一貫性を欠く動きが、投資家には「足元の戦略の迷走」と映った。

時価総額530億ユーロ(約9兆円)を誇るフェラーリだが、伝統のブランド力と次世代技術の「最適解」を見出せなければ、プレミアム(上乗せ)評価の修正を迫られる局面が続く可能性がある。同車の納車が始まる2026年末に向け、富裕層の実際の受注動向が次の試金石となる。



 

 

 


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