2月28日奇襲攻撃で始まったトランプのイラン戦争、トランプ軍はイランに対して大規模攻撃を続け、2万ヶ所余りを爆撃、軍事施設や工場、橋や体育館など公共施設、住宅、小学校から大学までの教育施設など10数万棟を破壊、4月からは小競り合いの小康状態に入り、6月下旬には、終戦交渉入りとなった。しかし、2週間もせずして交渉破綻、現在は攻撃合戦となっている。
7月下旬には、トランプ軍は再び、大規模攻撃を計画したが、艦対地巡航ミサイルトマホークも1200発あまり撃ち込んだことから、トランプ軍の迎撃・攻撃用ミサイル不足(制服組トップのケイン総合参謀議長が反対表明)から、中止せざるを得なくなった。
その後もホルムズ海峡の封鎖と逆封鎖、イランの通航無許可船への攻撃、トランプ軍のイランのタンカーなど攻撃、トランプ軍の本土攻撃、イランの湾岸諸国に点在する米軍施設への攻撃が今に続いている。
トランプ軍は兵糧攻め作戦へ移行、経済封鎖によりイラン船への攻撃、貿易の禁止措置=イランとの貿易相手国に対する経済制裁を発表し、それを執行している。しかし、中国がイランの最大の交易国であり、政治的にもつながっており、実行性は乏しい。
昨年からの中国との貿易戦争では、トランプは25年6月と10月と2連敗している。25年4月の高関税、中国の報復関税、さらなる米の高関税と、トランプの中国船の米港湾入港料徴収に対して、中国は米国へのレアアースの輸出規制を持ち出し、トランプは即刻ギブアップしている。
イランの国会議長ガリバフは、戦争開始初期から、米経済への打撃を公言しており、なかでも1990年代に経済学者が発表したテイラーの方程式迄持ち出している。
7月末になるとトランプ軍とサウジ軍の連合軍がイラクの親イラン民兵組織(政府組織に組み込まれている)を奇襲攻撃し、幹部を含む20数名を爆殺した。
一方、紅海側にあるイエメンのフーシ派が、サウジ船タンカーを攻撃、炎上させ、サウジ報復のためフーシ派陣地への爆撃を続けている。
9月10日になると、サウジの製油所やパイプラインが攻撃され、紅海のヤンブー港からの原油輸出(輸出量は、日量500~700万バレル)が停止する事態になり、原油価格が80ドルから100ドル台まで再び急騰している。(2025年のサウジの原油生産量1150万バレル/世界の産油量は1万バレル)。
9月に入り、サウジのムサンマドはフーシ派の紅海南端のマンデラ海峡封鎖に伴い、南イエメンのマカ等政府軍の支配地を制圧しながら南下、海峡へ突き出た半島や、島も制圧して、マンデラ海峡を軍事的にも制圧している。
一方、爆撃による報復を繰り返すサウジ軍は、2016年から2022年停戦するまでサウジ率いる中東連盟軍が空爆を続け、国旗用警備などにもあたっていた。
しかし、今回は各国はイラン戦争に対峙し、サウジへの中東連盟軍の形成はできず、さらに、9月に入り、ムサイマド皇太子は2度に渡りトランプに支援要請、しかし、トランプはこれを拒否し、フーシ派の攻撃により、原油輸出がストップする事態に陥っている。
サウジは、ヤンプ―からピストン輸送でスエズのパイプラインへ運び、地中海側から輸出する計画を有していたが、フーシ派はサウジのヤンブー沖タンカーをミサイル攻撃し命中させており、当計画は道半ばとなっている。
イランとトランプ軍の戦争長期化で先は見えなくなっている。
サウジはオマーンから原油輸出拡大
サウジは国土の南東に位置するオマーン側からの原油輸出を拡大させているが、パイプラインの油送規模が小さく大きな成果は得られていない。
トランプ軍がサウジを見殺しにしているのは、昨年、フーシ派とトランプ軍が締結した停戦がある。9月に入り、トランプ政権はフーシ派とオマーンと交渉しており、停戦は有効だとし、米軍や米軍施設、米民間船への攻撃はしないと約している。
トランプ軍はミサイル不足もあり、戦線拡大を嫌い、拒否したことになる。梯子を外されたムサンマド、7月29日のトランプ+ムサンマド連合軍のイラク民兵への奇襲攻撃は何だったのかということになる。
こうした実質的な戦線拡大は原油価格を高騰させ、米国のガソリン価格は3~5割高になり、トランプ政権に対する支持率が37~39%台(これまでの岩盤支持率は43%前後)まで落ち、底抜けの様相となっている。
11月3日に中間選挙を控え、トランプは、上下院とも共和党勝利が条件ながら、勝利すれば、成人全員に5000ドル(77万円/総額1.3兆ドル)を支給すると公約している。
米FRBは現在の原油価格の高騰で9月17日、0.25%と政策金利を引き上げ4.0%にした。
低金利指向のトランプであるが、自ら撒いた戦争の種により、自らの任命したウォーシュFRB議長も引き上げざるを得なくなった。
こうした原油価格の高値が続けば、タイムラグでプラスチックなど石油製品も上昇し、生活全般が高騰することになる。
イランのガリバフ国会議長はこうしたインフレにより、景気に関係なく、金利を引き上げざるを得ず、トランプ経済は大きな打撃を受けるとの発言を繰り返している。
ましてや、トランプ支給の5千ドルがもしも実行されれば、空前のインフレを引き起こす可能性も指摘されている。当然、FRBの政策は金利を大幅に引き上げ、インフレ退治にあたるこれまでの手段を講じることになる。
テイラーの方程式
米FRBの政策金利をインフレと「産出ギャップ」、実際の経済生産とその潜在能力の差と結びつけた方程式、最も単純な形式では、(金利政策行使の判断材料の一つ)
政策金利=インフレ+0.5(出力ギャップ)+0.5(インフレ−2%)+2%。
これは、インフレ率が2%の目標を上回る場合、または経済生産が潜在能力を上回った場合に、推奨される金利が上昇することを意味し、インフレが弱まったり、経済が潜在能力を下回ったりすると、その影響は低下するというもの。
経済学者でもないガリバフが、米国の経済学者テイラー教授が唱えた政策金利の方程式によりインフレ、金利高の悪循環を、今回のイラン戦争に対するトランプを批判する材料にしている。
更に、今回、米軍はミサイル不足を露呈しており、イラン戦争前の在庫にするには迎撃用のPAC3やTHAADなどは2029年までかかり、攻撃用の艦隊地巡航ミサイルのトマホークや長距離空対地ミサイルAGM-158(JASSM) などは2030年以降までかかると米紙が報じている。
余談、
台湾有事の現実
中国が台湾へ侵攻しても、米軍は攻撃用も迎撃用もミサイルを台湾へ緊急供与できないどころか、グアムや那覇の米軍の使用も限られたものになる。
習主席はこうした米軍の現状の機会を最大限活用する可能性もある。
中国の戦争を統括する中央軍事委員会は7人構成、眼下、5人を失脚させ、習主席と規律委の委員を副委員長に就任させた歪な組織となっている。現行、ほぼ、習主席は軍事も含め全権を専制的に掌握しており、何があってもおかしくない状況となっている。
ただ、軍は習主席1期目に江沢民一派が支配していたものの、不正腐敗撲滅キャンペーンで一掃、執行猶予付き死刑判決を受けた軍高官も多い。
習主席は軍幹部を総入れ替え、自ら軍幹部たちを任命し、ミサイル軍=ロケット部隊も陸軍から独立させ新創設、長官も配した。
しかし、自ら任命した軍高官たちが、不正に走り、2022年以降、これまでに50人以上の軍高官たちが更迭されている。こうしたことから、台湾侵攻に至った場合、軍を統率できるのか疑問も呈せられている。