福岡のマンション業界の現況⑩
穴吹興産④/⑤
前期比較で棚卸資産の推移を見れば、期中上げのマンションを相当数建て、3月に完成したところで、販売済みの分譲マンションが売上に立ち、6月期の棚卸資産が減ったと推察できる。決算では前期比較で現預金が70億円も増加している。09/6月期の流動資産の増加は約80億円であり、その殆どが現預金の増加であった。
一方、借入金は08年6月期350億円から中間期428億円に膨らみ、マンションが完成したところで売上計上・入金した、返済に回したことから09年6月期には303億円まで減少している。前期比較では47億円も減少している。総負債が65億円増加しているにも関わらず、借入金を減少させ、現予金も72億円増加させるとうすばらしい会社?である。
しかし、販売用不動産等棚卸資産は前期(08/6)比較で、約5億円しか減っておらず、マジックが何かある。
よく調べると、支払手形と買掛金が120億円増加していた。これで謎が解けた。同社はこれまでの建築費用を主に現金で支払っていたようである。その支払の殆どを手形に切り替えたため、契約できれば完成時に売上高計上でき、現金も入り、借入金を返済しても現預金が大幅に増加することが出来た。
九州特有のマンション建築代金の支払いが、完成後の手形一括払いが常識(今ではゼネコンの力が増し少し是正され、着手金が一部支払われるがそれでも力関係)であり、九州での開発がそうした手形支払になっているのは明らかである。そのため27億円から148億円と120億円増加している。
当然資金繰りは、マンション開発をし続け=売れ続けた場合は問題ないが、完成しても売れなくなった場合、手形の決済が控えており、資金繰りに問題をきたすことになる。
同社の場合には、まだ保たれているようであるが、販売状況を注視していく必要があろう。金融機関からしてみれば、300億円以上ある貸付金を減らしてくれるわけだから、喜んでいるのであろう。逆に今後融資してくれるかは業績次第か。
穴吹興産 | |||
流動資産 | |||
連結流動資産/千円 | 08/6期決算 | 08/12中間 | 09/6期決算 |
現金及び預金 | 6,644,781 | 9,000,889 | 13,853,806 |
受取手形及び売掛金 | 987,053 | 953,387 | 1,030,389 |
有価証券 | 10,123 | 10,143 | |
棚卸資産 | 33,249,488 | 38,671,668 | 32,725,097 |
販売用不動産 | 6,348,542 | 9,036,335 | |
仕掛販売用不動産 | 26,814,678 | 29,534,162 | |
その他たな卸資産 | 86,268 | 101,171 | |
繰延税金資産 | 436,253 | 943,843 | 333,422 |
その他 | 751,654 | 766,622 | 1,768,070 |
貸倒引当金 | -8,151 | -8,177 | -12,499 |
流動資産合計 | 42,071,203 | 50,338,377 | 49,698,287 |
主要負債の動きほか | |||
連結/千円 | 08/6期決算 | 08/12中間 | 09/6期決算 |
短期借入金 | 14,593,100 | 17,476,000 | 10,022,000 |
1年内の長期借入金 | 5,091,520 | 12,847,345 | 6,891,284 |
長期借入金 | 15,398,660 | 12,574,115 | 13,464,883 |
借入合計 | 35,083,280 | 42,897,460 | 30,378,167 |
仕手+買掛金 | 2,767,955 | 4,635,251 | 14,852,758 |
合 計 | 37,851,235 | 47,532,711 | 45,230,925 |
負債総額 | 43,261,491 | 51,789,939 | 49,791,348 |