アイコン 企業研究/武富士の倒産の危険性を占う【再掲載】

消費者金融業者や企業金融業者でも、東証がSFCGのような悪徳業者をいつまでも上場企業として上場させていたことにより、多くの被害者が出た。その結果法規制は一段と厳しくなり、利息制限法と出資法により異なっていた利息限度額を統一化してグレーゾーンを廃止、来る6月18日からは改正貸金業法が完全施行となる。
そうしたなか、いろいろな関係団体との付き合いがあったとされてきたオーナー会長が実質所有していた武富士であるが、そうした超ワンマン会長も2006年8月10日亡くなり、あまり社会面の紙面に同社の名前が出なくなったことも事実である。

06年1月13日最高裁判決がグレーゾーン金利を禁止した判例を出し、貸金業者の金利は、10年以上遡って違法と認定され、膨大な過払金請求と引当金に貸金業者は悲鳴を上げ、プロミスやアコムなどはお手上げ状態で大手銀行の傘下に入った。しかし武富士は独自路線を貫いており、過去いろいろなところとのお付き合いから、敬遠されたとも見られるが、スーパーバンカーの2社は決定済み、武富士とも関係が深かったみずほだけが大手貸金業者を抱えていない。しかし、みずほの財務はそれどころではなく、独自を貫き通すか外資傘下に入るかしか余地はなかろう。

貸金業の場合、最大のスポンサーは金融機関であり、不当利得返還請求が少なくなってきたからといって、金融機関とのパイプが細ると、貸付金利は下がっており経営は厳しくなる。10/3期と07/3期と比較した場合、有利子負債を6,654億円も減少させており、総資産も02年期2兆円超えていたものが10/3期6,869億円まで減少させている。そうしたなかで、不当利得返還請求にも対応して膨大な赤字とともにキャッシュアウトしている。今まで生きてきたのが不思議なくらいである。
 
10年3月期は利益を計上しているが、業法完全施行でもう一波乱ありそうである。どうしても同社の場合、金融機関に傘下入りした貸金業者と区別され、マスコミも亡くなった会長の記者に対する盗聴事件などありブラックなイメージが払拭されず、いろいろな意味でマスコミから叩かれる。
 
連結/百万円
01/3
02/3
03/3
04/3
05/3
営業収益
402,104
425,418
421,974
384,506
360,121
経常利益
241,498
231,602
183,255
138,601
119,256
当期純利益
127,266
64,486
95,146
74,745
68,726
純資産額
739,490
779,919
831,616
893,084
960,719
総資産額
2,018,058
2,017,066
1,939,530
1,899,140
1,903,991
自己資本率
36.6
38.7
42.9
47.0
50.5
有利子負債
 
 
 
 
 
 
連結/百万円
06/3
07/3
08/3
09/3
10/3
営業収益
351,259
328,920
270,479
186,349
120,266
経常利益
92,248
-163,764
42,285
-214,669
33,180
当期純利益
46,924
-481,274
14,105
-256,137
4,577
純資産額
973,626
457,714
433,776
149,648
150,418
総資産額
1,770,909
1,583,172
1,392,899
958,464
686,931
自己資本率
55.0
28.9
31.1
15.6
21.9
有利子負債
942,496
880,813
539,364
365,741
215,382

格付会社のムーディーズが、武富士について2010年3月25日格付を落とした時、次の通り事由を発表している。
武富士の流動性管理における調達進ちょくの遅れや利息返還請求の動向に不透明性が高いことなどから、同社の流動性上の圧力が想定していた水準以上に高まることに対する懸念を反映した。また、今回の格下げは、こうした資金繰り面での圧力の高まりを背景として、将来的に他の債務について同様の債務交換を実施した場合に、今後想定する経済的損失(債権者間において経済的損失に差異が出る可能性も含む)の水準の高まりへの懸念も反映している。としている。
 
株主
株数/千株
比率
株式会社大央
7,746
5.37
丸武産業有限会社
7,459
5.17
武井 健晃
6,941
4.81
日本トラスティ・サービス信託銀行
6,538
4.53
武井 博子
4,927
3.41
武井 俊樹
4,866
3.37
ノーザントラストカンパニー系
4,641
3.22
ザバンクオブニューヨーク系
2,608
1.81
ザバンクオブニューヨーク系
2,476
1.72
     09年9月30日現在
 
同社の借入金融機関は、外資系に偏重しているが、国内銀行より安定している。肝心のみずほは株主でもあったが、今では逃げ出しているようだ。
 
2009331日現在
 
主な借入先
借入額/百万円
ブルキャピタル
109,263
アメリカンファミリー
20,000
INGバンク
18,000
ノヴァ・スコシアバンク
13,000
UBS-SGバンク
10,000
 
2005331日現在
 
主な借入先
借入額/百万円
武富士キャピタル
177,389
タケフジ・ブルマート
60,588
みずほ信託
32,800
アメリカンファミリー
20,000
クレディセゾン系
17,541
メリルリンチ系
12,000
INGバンク
12,000
東日本銀行
10,536
UBS-SGバンク
10,000
 
結論からして、不透明感は残るが、遡って警察沙汰など発覚しない限り、総資産6,869億円に対して、自己資本1,504億円、有利子負債2,153億円、1年以内返済予定の長期借入金804億円のバランスからして、借り換えが効けば大丈夫であろう。こうしたことは多くの企業にも共通することであり、ましてや借入は外資になっており、検察も下手な動きには出てこないと思われる。
警察や検察は最近いつも大物を取り損ねており、捏造も含め何でもありであり、富士通に絡めて、死人に口なしの武富士の過去が暴かれたりすれば、コンプライアンス上、外資が引く可能性が残る。当然こうした外資は営業貸付金を担保としており、そうした事態になれば危険性は半々に向上しよう。
 
[ 2010年9月27日 ]
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