ロイヤルホールディングスのすべて/会長と社長が対立 会長更迭 内紛勃発
ロイヤルホストのロイヤルホールディングスは3日、今井明夫会長を同日付で解職したとリリースした。
同社はこれまで、今井会長が経営方針をめぐって菊地社長らと対立。今井会長は、自らを含む7人の取締役選任などを株主提案した。そのため同社の取締役会は今井会長を解任した。
記者会見した菊地社長は「取締役会の議長である会長が、株主提案権を行使するのは異例。会長の適格性に問題がある」と今井会長の会長職解任について説明した。
同日の臨時取締役会において、3月の株主総会に提案する役員体制を決議。榎本取締役最高顧問は今期限りで退任する。
今井会長は、株主12人と連名で「利益重視の経営で顧客満足度が犠牲になっている」などとして、株主提案権行使に関する書面を会社側に提出。会社側は、提案取り下げを求め今井会長と協議したが折り合いがつかなかったとされている。
今井氏の代理人は3日、「あまりに短期的利益に偏重した経営姿勢、一部の私利私欲に走る非常勤取締役の専横を憂う」などと菊地社長や榎本氏を批判する株主提案書を公表した。
(榎本氏が退任の予定であり、今井氏も取締役を退任すると報道されている)
(榎本さんも今井氏からここまで言われたら立つ瀬がなかろう)
<コメント>:
ロイヤルホールディングスに同社の創業者の江頭さん(元進駐軍のコックさん)亡き後、榎本さんが江頭さんの意向もあり、これまで同社に君臨していたことは世間が認めるところである。
榎本さんは「キャナルシティ博多」の福岡地所の実質オーナーであり、関係会社には福岡リート投資法人など多数ある。そうした企業群には多くの元証券会社や元都市銀行マンが在籍している。現在のロイヤル社の菊池社長も、平成16年4月の入社であり、それまでドイツ証券の投資銀行本部ディレクターを務めていた人、榎本さんが招聘したものであった。当然、招聘された菊池社長(平成22年3月から社長)には増益が求められ、その経営方針が貫かれてきた矢先と思われる。
一方、今井会長は、長い間ホテル部門を担当、平成13年3月から副社長となり、17年7月から昨年3月まで社長を務めていた。当然、それまで今井社長の経営方針により経営は執行されてきたが、社長の座が菊池氏に変わり、大幅に経営方針が変更されたと察せられる。取締役会で問題にしたものの、取締役会は殆ど社長派=榎本派により構成されており、相手にされず、株主提案という手を使って反旗を翻したものである。
同社の役員構成は、榎本取締役最高顧問、今井取締役会長、菊池(代)取締役社長、高岡専務取締役、矢崎取締役、末吉社外取締役(コカ・コーラW会長)の6名で構成されている。 末吉社外取締役は榎本氏(福岡地所がコカ・コーラWの大株主)に招聘されたものである。高岡専務(江頭さん関係者)と矢崎取締役はプロパーであるが、榎本さんや菊池社長に同調する人たちである。
会社側の榎本=菊池派は、こうした今井会長の動きに対して会長職を解任するに至った。
<過去の経営危機 その時の江頭オーナー>
同社では、バブル崩壊の1992年、経済破綻とジョイフルなど低価格レストランの台頭で経営危機に陥ったことがある。その時、オーナーの江頭さんは、引退していたにもかかわらず立直しに奔走、陣頭指揮を取り、社長にも再就任して見事再生させた。その時のことを江頭さんは「まず、社員に誇りを持たせることであった」と記している。当時ライバルであった「すかいらーく」は低価格路線のガストとなり昔の面影はない。江頭氏により同社は、それほど価格を落とさず、顧客満足度を上げることで再生されたと記憶している。
そうした経緯を今井会長は、入社したてで目のあたりにしており、現状に対して危機感が走ったと思われる。ましてや今では利益部門の飛行機の機内食は、飛行機会社の経営の効率化やLCCの台頭で市場は縮小するばかりである。
現在の同社にとって、今後何で飯を食っていくのか、レストランなのか、食品事業なのか、ホテル事業なのか、経営の分岐点に差し掛かっているといえる。
また、今回の内紛がどうなろうと、同社の経営は売上構成上、外食事業で成り立っており、レストラン事業の再生において、利益追求と顧客満足度が同時に引き揚げられるか同社の経営陣は問われているといえる。
古いかもしれないが、ハゲタカに翻弄される世の中に変わっても、江頭さんの創業者精神の経営哲学は生きているはずである。
同社のホームページ私の履歴書第28話参照
<同社の外食事業>
ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」、天丼・天ぷら専門店「てんや」、ピザレストラン「シェーキーズ」などのチェーン店のほか、空港ターミナルビル・高速道路サービスエリア・大型商業施設・百貨店・オフィスビル・介護施設・ゴルフ場等に店舗を構えている。
店舗数 2010年12月期予 | |
ロイヤルホスト | 285 |
てんや | 120 |
百貨店レストラン | 89 |
空港内レストラン・売店 | 34 |
高速道路SAレストラン・売店 | 16 |
シェーキーズ | 21 |
シズラー | 9 |
カフェクロワッサン | 15 |
専門店 | 128 |
小 計 | 717 |
リッチモンドホテル | 29 |
合 計 | 746 |
2009年12期の売上高構成と前年比 | ||||
売上高 | 営業利益 | |||
連結 | /百万円 | 前年比 | /百万円 | 前年比 |
外食事業 | 90,297 | -8.4% | 1,289 | 42百万円 |
食品事業 | 3,525 | -6.5% | 330 | 21.3% |
機内事業 | 5,717 | -13.0% | 642 | -38.3% |
ホテル事業 | 12,356 | 10.1% | 479 | -34.0% |
合計 | 111,895 | -6.8% | 1,763 | 63.7% |
営業利益の誤差は社内売上によるもので相殺されたものだろう。 |
<ロイヤルホールディングスの業績推移> 1/2
平13/12 | 平14/12 | 平15/12 | 平16/12 | 平17/12 | |
売上高 | 105,930 | 103,415 | 100,130 | 100,546 | 101,533 |
経常利益 | 1,516 | 2,416 | 4,144 | 6,155 | 5,014 |
当期利益 | -6,361 | 1,340 | -9,257 | 4,896 | 3,395 |
純資産額 | 54,317 | 55,282 | 44,896 | 49,677 | 53,336 |
総資産額 | 96,970 | 100,897 | 89,168 | 83,315 | 84,578 |
自己資本率 | 56.0 | 54.8 | 50.4 | 59.6 | 63.1 |
<ロイヤルホールディングスの業績推移> 2/2
平18/12 | 平19/12 | 平20/12 | 平11/12 | 平22/12予 | |
売上高 | 116,199 | 122,995 | 120,095 | 111,896 | 107,500 |
経常利益 | 4,563 | 4,570 | 1,191 | 1,916 | 2,000 |
当期利益 | 1,653 | 1,064 | -5,597 | -468 | 100 |
純資産額 | 53,314 | 52,836 | 43,483 | 42,816 | |
総資産額 | 84,992 | 85,239 | 77,721 | 78,214 | |
自己資本率 | 60.2 | 59.3 | 54.6 | 53.5 |
<主要株主名簿>
主要株主名簿 平成22年6月30日現在 | ||
氏名又は名称 | 所有株数/千株 | 割合 |
キルロイ興産株式会社 | 3,174 | 7.78 |
江頭(個人) | 1,675 | 4.1 |
財団法人江頭ホスピタリティ | 1,452 | 3.56 |
事業振興財団 | ||
株式会社ダスキン | 1,400 | 3.43 |
日本生命保険相互会社 | 1,147 | 2.81 |
コカ・コーラウエスト株式会社 | 962 | 2.36 |
西日本シティ銀行 | 955 | 2.34 |
福岡銀行 | 833 | 2.04 |
株式会社伊勢丹 | 681 | 1.67 |
ハンナン株式会社 | 632 | 1.55 |
計 | 12,913 | 31.65 |
<これまでの役員経歴>今井氏は会長職解職により現在は取締役
略歴 | 所有株式数 | ||
榎 本 一 彦 | 昭和41年4月 | ㈱日本不動産銀行(現㈱あおぞら銀行)入行 | 14,800 |
取締役最高顧問 | 昭和47年4月 | ㈱福岡相互銀行(現㈱西日本シティ銀行)入行 | |
昭和18年9月生 | 昭和48年4月 | 福岡地所㈱入社 | |
昭和49年6月 | 同社専務取締役 | ||
昭和52年3月 | 当社取締役 | ||
昭和54年8月 | 福岡地所㈱代表取締役社長 | ||
平成3年3月 | 当社代表取締役副会長 | ||
平成9年3月 | 当社代表取締役会長 | ||
平成15年8月 | 福岡地所㈱代表取締役会長(現任) | ||
平成22年3月 | 当社取締役最高顧問(現任) | ||
今 井 明 夫 | 昭和43年4月 | 富士製鐵㈱(現新日本製鐵㈱)入社 | 12,900 |
取締役会長 | 昭和49年6月 | 福岡地所㈱入社、東京支社長 | |
昭和20年12月生 | 平成3年4月 | アールアンドディープランニング㈱(現ダイワロイヤル㈱、平成16年4月ビジネスホテル事業を会社分割(アールエヌティーホテルズ㈱))取締役 | |
平成9年3月 | ロイヤルインターナショナルエアーケイタリング㈱取締役 | ||
平成11年3月 | 当社監査役 | ||
平成13年3月 | 当社取締役副社長 | ||
平成17年7月 | 当社代表取締役社長 | ||
平成22年3月 | 当社取締役会長(現任) | ||
会長と社長が対立 | |||
菊 地 唯 夫 | 昭和63年4月 | ㈱日本債券信用銀行(現㈱あおぞら銀行)入行 | 1,500 |
代表取締役社長 | 平成9年6月 | 同行秘書室秘書役 | |
昭和40年12月生 | 平成12年2月 | ドイツ証券会社東京支店入社 | |
平成15年4月 | 同社投資銀行本部ディレクター | ||
平成16年4月 | 当社入社執行役員総合企画部長兼法務室長 | ||
平成19年3月 | 当社取締役総合企画部長兼法務部長兼グループマネジメント部長 | ||
平成20年11月 | 当社取締役事業統括本部副本部長(財務・経営計画担当)兼総合企画部長兼法務部長 | ||
平成21年5月 | 当社取締役管理本部長兼総合企画部長兼法務部長 | ||
平成21年10月 | 当社取締役管理本部長 | ||
平成22年3月 | 当社代表取締役社長(現任) | ||
高 岡 淑 雄 | 昭和46年4月 | 当社入社 | 16,000 |
専務取締役 | 平成3年2月 | 米国ハワイ州ペンタグラム社取締役社長(CEO) | |
昭和22年7月生 | 平成6年3月 | 当社取締役(平成10年6月辞任) | |
平成11年10月 | ロイヤルインターナショナルエアーケイタリング㈱常務取締役 | ||
平成14年5月 | ㈱関西インフライトケイタリング専務取締役(現任) | ||
平成20年11月 | 当社常務執行役員事業統括本部副本部長(営業担当) | ||
平成21年5月 | 当社常務執行役員事業統括本部長 | ||
平成22年3月 | 当社専務取締役事業統括本部長 | ||
(現任) | |||
矢 崎 精 二 | 昭和49年4月 | 当社入社 | ― |
取締役 | 平成2年7月 | 当社ロイヤルホスト矢崎事業部長 | |
昭和26年1月生 | 平成14年2月 | 当社業務執行役員専門レストラン事業部長 | |
平成16年2月 | 当社業務執行役員空港レストラン事業部長 | ||
平成17年7月 | ロイヤル空港レストラン㈱代表取締役社長 | ||
平成20年11月 | 当社高速道路カンパニープレジデント | ||
平成22年3月 | 当社取締役高速道路カンパニープレジデント(現任) | ||
末 吉 紀 雄 | 昭和42年4月 | 日米コカ・コーラボトリング㈱(現コカ・コーラウエスト㈱)入社 | ― |
取締役 | 平成3年3月 | 同社取締役 | |
昭和20年2月生 | 平成7年3月 | 同社常務取締役 | |
社外取締役 | 平成9年8月 | 同社専務取締役 | |
平成11年3月 | 同社取締役副社長 | ||
平成14年3月 | 同社代表取締役社長兼CEO | ||
平成17年3月 | 当社取締役(現任) | ||
平成18年7月 | コカ・コーラウエストホールディングス㈱(現コカ・コーラウエスト㈱)代表取締役CEO | ||
平成21年1月 | 同社代表取締役社長兼CEO | ||
平成22年1月 | 同社代表取締役会長(現任) |
<ロイヤルホールディングスのリリース全文>
株主提案権行使に関する書面の受領および株主提案に対する当社取締役会の考え方について
当社は、当社株式を保有する下記の株主13名より、平成23年1月14日付で平成23年3
月開催予定の当社第62期定時株主総会における株主提案権行使に関する書面を受領いたしましたので、当該提案の内容等を慎重に検討いたしました結果、当社取締役会の考え方につきまして、下記のとおり、お知らせいたします。
記
Ⅰ.株主提案権行使に関する書面の受領について
1.提案株主
(1)氏 名:以下に記載する13名の株主(敬称略)
今井明夫、前原和洋、前原冨美枝、前原賢太、吉田郁朗、吉田久美子、倉田誠司、成田鉄政、小駒匠、高橋ひとみ、太田勝久、桂山邦明、桂山悦子
(2)保有株式:34,952株(13名の合計所有株式数)
2.提案された内容の概要
議案1 取締役7名選任の件
(取締役候補者)
菊地唯夫、矢崎精二、今井明夫、吉田郁朗、倉田誠司、黒須康宏、児嶋隆
議案2 監査役2名選任の件
(監査役候補者)
樋渡利秋、浦一馬
Ⅱ.株主提案に対する当社取締役会の考え方について
1.議案1 取締役7名選任の件
(1)株主提案の内容
取締役候補者として、
菊地唯夫、矢崎精二、今井明夫、吉田郁朗、倉田誠司、黒須康宏、児嶋隆の7名の取締役選任を請求しております。
なお、児嶋隆氏は社外取締役候補者であります。
(2)当社取締役会の考え方
当社取締役会は、本議案に反対いたします。
当社といたしましては、本日別途開示する再任候補者4 名(菊地唯夫・高岡淑雄・矢崎精二・末吉紀雄)を含む取締役候補者による経営体制が、グループの一体感の醸成や顧客満足ならびに企業価値の向上に資する各種施策の連続性の観点から望ましいと考えるためです。よって、当社取締役会は本議案に反対いたします。
2.議案2 監査役2名選任の件
(1)株主提案の内容
監査役候補者として、樋渡利秋、浦一馬の2名の監査役選任を請求しております。なお、樋渡利秋氏は社外監査役候補者であります。
(2)当社取締役会の考え方
当社取締役会は、本議案に反対いたします。
当社といたしましては、浦一馬を含む常勤監査役2名および社外監査役2名の合計4名の監査役体制で十分であり、現経営環境下で監査役5名の必要はないものと考えております。よって、当社取締役会は本議案に反対いたします。
以上
[ 2011年2月 4日 ]
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