アイコン 川崎重工業/会長らが、社長ら三井造船統合派を大クーデターで解任

川崎重工業」は13日、臨時の取締役会を開催、三井造船との経営統合に反対する取締役の決議で、統合に積極的だった長谷川聰社長、高尾光俊副社長、廣畑昌彦常務の3人を13日付けで解任し、経営統合に向けた交渉を打ち切ることを決定した。
大橋忠晴会長が動いたと思われる川崎重工業の歴史に残る大クーデター事件。
13日の臨時取締役会では、三井造船との統合反対派10名、社長ら推進派3名という悲しい構図、圧倒的多数で推進派3名は臨時取締役会の開催所要時間35分、問答無用で解任された。
後任の社長には、序列第8位の航空部門担当の村山滋常務取締役が就任した。

村山氏は記者会見で「ほかの多数の取締役は三井造船との経営統合に反対しており、3人の統合ありきの姿勢に強い不信感を覚えた。統合交渉を打ち切るための取締役会の開催を決めたあとも、3人は議決をしないよう議長に働きかけるなどしたため、業務執行の中核を担わせることはできないと苦渋の決断をした」と述べた。
解任された長谷川社長らは、世界的に厳しい経営環境が続く造船事業の強化や、成長が見込まれる海洋開発事業を強化するため、「三井造船」との経営統合に向けた協議を進めていた。
一方コケにされた三井造船は「川崎重工との間で経営統合に関して、その可能性を検討していた段階であり、経営統合に関して当社として機関決定された事実はありません。川崎重工からの突然の白紙撤回の方針につきましては遺憾に存じます」というコメントを出した。
 
<経営統合交渉の背景と経緯>
世界の造船は、今では造船シェア第1位の韓国を猛烈に追い上げた中国が第1位となっている。日本勢は円高もあり置いてきぼりされた。
リーマン・ショック以前は、世界のバブル好景気により、海運業界は大忙しとなり、海運業界からの新たな発注に造船業界も多くの船舶を製造してきた。
しかし、リーマン・ショック後は、世界経済が冷え込み(モノが動かなくなる)、それでもアメリカ経済は回復基調に至っているものの、欧州経済は、年毎に悪化、リーマン・ショックから5年も経過した現在、最悪の状態に至っている。連れて中国などBrics諸国の経済も悪化しているのが現在である。
こうしたことから、世界の船舶自体が過剰船腹となっており、韓国・中国・日本の造船業界は大不況に陥っている。
世界経済の縮小は、海上物流が減少、海運会社にあっては過剰船台問題、造船業界にとっては、大幅な新規造船の受注量の減少となっている。

また、日本の造船業界は、円高もあり、減少した発注量に対しての受注も厳しく、受注シェアも落としてきた。
(韓国の造船グループSTXグループは、6月7日傘下の海運会社STXパンオーシャンを負債額3,830億円で倒産させたほど、海運業界も造船業界も苦境に至っている)
こうしたことから、川崎重工と三井造船は経営統合の交渉によって、事業環境が一段と厳しくなっている造船部門などを強化し、熾烈な国際競争に勝ち残ることを模索した。
両社が経営統合を目指した背景には、主力事業の一つである造船部門が、世界的な船の供給過剰で新規の受注がなかなか確保できず、今後、造船所の稼働率が大幅に悪化し、事業環境が一段と厳しくなることへの危機感などがあった。
両社は、統合によって経営基盤を強化し、造船事業へのてこ入れを図るとともに、航空宇宙や鉄道車両、海洋開発など幅広い事業を手がける重工大手となることを目指した。
しかし、こうした社長の動きに対して、川崎重工の役員たちの多くが反対していたことを、今回のクーデターは物語っている。
クーデターの原因としては、三井造船は不況真っ只中の造船のウエイトが大きく、海洋プラント等海に依存している。一方、川崎重工は、造船は1割程度、プラントを入れても2割程度、今や航空宇宙部門を成長させており、三井造船とは成長する畑が違うとしたのであろう。

<役員異動>平成25年6月13日付
・村山滋   代表取締役社長 (前 代表取締役常務 航空宇宙カンパニープレジデント)
・松岡京平 代表取締役副社長 (前 代表取締役常務 車両カンパニープレジデント)
・髙田廣   代表取締役副社長 (前 代表取締役常務 モーターサイクル&エンジンカンパニープレジデント)
・金花芳則 代表取締役常務 (前 常務取締役 マーケティング本部長)
・長谷川聰 取締役(社長付) (前 代表取締役社長)
・髙尾光俊 取締役(社長付) (前 代表取締役副社長)
・廣畑昌彦  取締役(社長付)(前 常務取締役 企画本部長)

<業務執行新体制>平成25年6月13日付改正
・社 長   村山 滋(前 常務 航空宇宙カンパニープレジデント)
・副社長  松岡京平(前 常務 車両カンパニープレジデント)
・副社長  髙田 廣(前 常務 モーターサイクル&エンジンカンパニープレジデント)
・常 務車両カンパニープレジデント   金花芳則(前 常務 マーケティング本部長)
・常務執行役員マーケティング本部長 衣斐正宏(前 常務執行役員 マーケティング本部副本部長)
・常務執行役員航空宇宙カンパニープレジデント
石川主典(前 執行役員 航空宇宙カンパニーバイスプレジデント)
・常務執行役員モーターサイクル&エンジンカンパニープレジデント
紀山滋彦(前 執行役員 モーターサイクル&エンジンカンパニーサプライチェーン本部長)

川崎重工業の業績推移
連結/百万円
2011年3月期
2012年3月期
2013年3月期
売上高
1,226,949
1,303,778
1,288,881
営業利益
42,628
57,484
42,062
経常利益
49,136
63,627
39,328
当期利益
25,965
23,323
30,864
総資産
1,354,278
1,362,139
1,466,290
自己資本
289,057
306,054
338,240
資本金
104,340
104,484
104,484
有利子負債
428,256
406,305
483,872
自己資本率
21.3%
22.5%
23.1%
船舶9(3)、車両10(4)、航空宇宙16(4)、ガスタービン15(4)、プラント9(11)、二輪車18(-1)、精機14(15)、他9(3)【海外】57(2012.3)
 
三井造船の業績推移
連結/百万円
2011年3月期
2012年3月期
2013年3月期
売上高
589,209
571,852
577,093
営業利益
38,895
31,420
24,001
経常利益
36,216
32,345
26,162
当期利益
13,493
17,880
-8,207
総資産
686,325
655,929
660,397
自己資本
164,328
181,515
175,623
資本金
44,384
44,384
44,384
有利子負債
172,032
144,564
148,256
自己資本率
23.9%
27.7%
26.6%
船舶54(5)、鉄構建設8(2)、機械28(9)、プラント7(-3)、他3(5)【海外】55(2012.3)
 
世界の造船受注量(千総トン)
2006
2007
2008
2009
2010
2011
世界の受注量
99,600
169,600
88,000
33,600
82,400
56,800
日本の受注シェア
34.9%
30.6%
27.6%
24.6%
21.0%
19.0%
 
<2011年 造船 国別ランキング>(千総トン)
1
中国
39,609
2
韓国 
35,850
3
日本
19,367
4
台湾 
767
5
ドイツ
418
 
<2011年 造船 世界ランキング>
1
サムスン重工業
韓国
2
大宇造船海洋玉浦造船所
韓国
3
現代重工業蔚山造船所
韓国
4
STX鎮海造船所
韓国
5
現代三湖重工業
韓国
6
現代尾浦造船
韓国
7
熔盛重工
中国
8
金海重工
中国
9
大連造船
中国
10
白東造船
韓国
 
川崎重工の事業部門別業績
 
平成25年3月期
平成24年3月期
受注高
 
売上高
営業益
売上高
営業益
H25/3
H24/3
船舶海洋
903
41
1,135
39
1,057
399
車両(列車等)
1,299
22
1,326
51
1,244
660
航空宇宙
2,391
148
2,065
78
2,834
3,272
ガスタービン・機械
2,070
70
1,946
77
2,555
2,272
プラント・環境
1,158
97
1,228
141
1,136
1,192
モーターサイクル&エンジン
2,518
23
2,352
-29
2,518
2,352
精密機械
1,304
84
1,750
266
1,097
1,745
その他
1,242
12
1,232
38
1,251
1,222
調整額
 
-80
 
-88
 
 
合 計
12,888
420
13,037
574
13,695
13,118
・航空宇宙部門は、ボーイング777・787の分担製造品が売上・受注とも増加。また、防衛省向けC-2輸送機も売上高が増加している。
<役員構成>
2015年6月12日現在分、6月13日のクーデータ以前の分。
川崎重工業の取締役 平成25年6月11日現在 灰色はクーデターで失脚した取締役
 
役名
職名
生年月日
略歴
1
取締役会長
昭和19年11月生
昭和44年4月
入社
大橋 忠晴
平成13年4月
執行役員就任
 
平成15年4月
車両カンパニープレジデント就任
 
平成15年6月
常務取締役就任
 
平成17年4月
取締役副社長就任
 
平成17年6月
取締役社長就任
 
平成21年6月
取締役会長就任(現任)
2
取締役社長
昭和22年8月生
昭和47年4月
入社
代表取締役
平成17年4月
執行役員就任
長谷川 聰
平成19年4月
ガスタービン・機械カンパニープレジデント就任
 
平成19年6月
常務取締役就任
 
平成21年4月
取締役副社長就任
 
平成21年6月
取締役社長就任(現任)
3
取締役副社長
社長補佐
昭和22年11月生
昭和45年4月
入社
代表取締役
マーケティング本部
平成16年4月
執行役員、車両カンパニー
瀬川 雅司
・調達本部・
バイスプレジデント就任
 
技術開発本部担当
平成17年4月
車両カンパニープレジデント就任
 
 
平成17年6月
常務取締役就任
 
 
平成21年4月
取締役副社長就任(現任)
4
取締役副社長
社長補佐
昭和25年4月生
昭和47年4月
入社
代表取締役
企画本部
髙尾 光俊
・財務本部・
平成16年4月
財務経理部長就任
 
CSR推進本部
平成17年4月
執行役員就任
 
・人事本部・
平成20年6月
常務取締役就任
 
総務本部担当
平成24年4月
取締役副社長就任(現任)
5
常務取締役
船舶海洋カンパニープレジデント
昭和23年5月生
昭和46年4月
入社
代表取締役
平成14年10月
㈱川崎造船 取締役就任
神林 伸光
平成17年6月
同 常務取締役就任
 
平成20年4月
当社 常務執行役員就任
 
平成21年6月
常務取締役就任
 
平成22年4月
常務取締役(非常勤)就任
 
平成22年10月
常務取締役就任(現)、船舶海洋カンパニープレジデント就任(現)
6
常務取締役
車両カンパニープレジデント
昭和24年9月生
昭和48年4月
入社
代表取締役
平成18年4月
執行役員就任
松岡 京平
平成20年4月
常務執行役員、車両カンパニーバイスプレジデント就任
 
平成21年4月
車両カンパニー
 
プレジデント就任(現任)
 
平成21年6月
常務取締役就任(現任)
 
常務取締役
モーターサイクル&エンジンカンパニープレジデント
 
昭和47年4月
入社
代表取締役
平成21年4月
常務執行役員、汎用機カンパニープレジデント就任
髙田 廣
平成21年6月
常務取締役就任(現任)
 
平成22年4月
モーターサイクル&エンジンカンパニープレジデント就任
 
(現任)
8
常務取締役
航空宇宙カンパニープレジデント
昭和25年2月生
昭和49年4月
入社
代表取締役
平成17年4月
執行役員、航空宇宙カンパニーバイスプレジデント就任
村山 滋
平成20年4月
常務執行役員就任
 
平成22年4月
航空宇宙カンパニープレジデント就任(現任)
 
平成22年6月
常務取締役就任(現任)
9
常務取締役
精密機械カンパニープレジデント
昭和23年12月生
昭和46年4月
入社
代表取締役
平成14年10月
㈱カワサキプレシジョンマシナリ 取締役就任
園田 誠
平成17年6月
同 常務取締役就任
 
平成19年6月
同 取締役社長就任
 
平成22年6月
当社 取締役(非常勤)就任
 
平成22年10月
常務取締役就任(現任)、精密機械カンパニープレジデント就任(現任)
10
常務取締役
ガスタービン・機械カンパニープレジデント
昭和26年9月生
昭和52年4月
入社
代表取締役
平成21年4月
執行役員就任、ガスタービン・機械カンパニー機械ビジネスセンター長就任
井城 讓治
平成24年4月
常務執行役員就任、ガスタービン・機械カンパニープレジデント就任(現任)
 
平成24年6月
常務取締役就任(現任)
11
常務取締役
企画本部長
昭和26年9月生
昭和50年4月
入社
広畑 昌彦
平成20年4月
執行役員就任、ガスタービン・機械カンパニー企画本部長就任
 
平成23年4月
常務執行役員就任、企画本部長就任(現任)
 
平成24年6月
常務取締役就任(現任)
12
常務取締役
プラント・環境カンパニープレジデント
昭和27年2月生
昭和49年4月
入社
代表取締役
平成20年6月
カワサキプラントシステムズ㈱ 取締役就任
井上 英二
平成22年6月
同 常務取締役就任
 
平成22年10月
当社執行役員就任
 
平成24年4月
常務執行役員就任、プラント・環境カンパニープレジデント就任(現任)
 
平成24年6月
常務取締役就任(現任)
13
常務取締役
マーケティング本部長
昭和29年2月生
昭和51年4月
入社
金花 芳則
平成21年4月
執行役員就任、車両カンパニーバイスプレジデント就任
 
平成23年4月
常務執行役員就任
 
平成24年4月
マーケティング本部長就任(現任)
 
平成24年6月
常務取締役就任(現任)
 
 

[ 2013年6月14日 ]
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