アイコン 建設事情 安倍さん困ります コストプッシュインフレ・・・ 

デフレ経済の解消は、景気回復の施策によるものであればよいが、単なるコストアップによるインフレでは国民生活は、デフレ時代より悪化する。
すでに、円安により、穀物などを原材料とする小麦粉や飼料などが値上がり、スーパーなど上から押さえつけられている豆腐屋さんは潰れたり、窮地に立たされている。円安による燃料費の高騰は電気代・ガス代に跳ね上がり、運送会社の経営破綻も多くなっている。
そうしたなか、首都圏のマンションが高騰している。景気回復の起爆剤として放された矢の公共投資は、前年度当初比16%増の5.3兆円増加している。当然、2011年3月の大震災直後から復興事業に投資は注がれており、今回の分のほとんどは全国へばら撒かれた公算が強い。
そ れゆえ、建設工事とりわけ建築工事は、建築資材が値上がりし、また、それまで財政問題から公共投資を減額することで建設労働者を減らし続けてきた政策が、 振って沸いた東日本大震災の復興工事に安倍政権の公共投資が加わり、さらに建設技能労働者(職人さん)不足を引き起こしている。
(1996年の地方を含めた公共投資はピークとなる44兆5,815億円、2011年には20兆6,937億円まで削減され、その間、建設業就業者数が212万人も減少して、500万人を割り込んでいた。職人さんに至ってはもっと深刻)

当然、職人さんたちの価格は跳ね上がり、建設資材も値上がり、ゼネコンに至っては、受注しようとすれば受注出来るものの、あまりの予算の低さに赤字工事を余儀なくされ、全国で入札辞退や入札者0の入札不調が続いている。
東日本大震災の復興工事で多発し、秋田市役所でも2回不調、坂出市立病院、旭川市立中央中学校など、4~6月だけでも官庁工事が全国で65件入札不調。築地魚市場豊洲移転新築工事も3街区とも、スーパーゼネコン3JVそれぞれが都の示した予算価に応札辞退の不調となっている。
民間工事でも、ゼネコンは赤字まで出して受注する時代は終わっており、10月の首都圏の分譲マンションの販売価格は、前年同月比1㎡当たり16.7%アップの71.1万円と大幅に上昇している(不動産研究所)。(同所によると、10月の近畿の分譲マンションの価格は、前年同月比1㎡当たり1.2%増の50.7万円となっている。土地価格に大きな差)
職人さん不足は特に首都圏で深刻のように見られる。田舎から職人さんを集めると、交通費や宿泊代をゼネコンが負担することになり、コストアップとなる。

ゼネコンは、前々期や前期の決算で、復興需要などで売上高は増加したものの、コストアップから採算性を悪化させた。顕著な例が下記の準大手ゼネコンの戸田建設の業績であろう。
そうしたことから、ゼネコンは、昨年あたりからある程度コスト上昇も見込み受注しており、その結果、今期の中間決算に反映されたものとなっている。
前期までは、殆どのゼネコンが戸田建設同様の業績悪化を招いていた。建築工事は工期が長く、大型工事になると2年も3年もかかる。今回のようにその間に建築職人さんたちのコストが大幅に値上がり、資材も値上がっても、工事契約金を上げることは出来ず、赤字工事が続出した。
結果、建設費用は大幅に上昇しており、分譲マンション価格が上がり続けている。しかし、上昇が続けば、景気回復しだいだが、需要に翳りが出てくることだけは間違いなく、また、一方で住宅費用を除いた可処分所得も減少する。消費税増税、諸税の増税、電気代の値上がり、燃料費の高止まりなど、可処分所得は、バブルが再来しない限り、減り続ける一方となる。

これでは、内需回復も一過性のものはあったとしても継続性はまったく見込めないものとなる。
日本に富裕層がどれだけいるのか知らないが、株式投資をしている方々はバブル所得をすでに謳歌している。昨年と今年の10月末比較では、日経平均が60%以上値上がり(下記参照)している。百貨店の高級絵画や高級時計が飛ぶように売れたと報告されている。しかし、今は小幅な範囲の値動きとなっており、すでに百貨店では今春のような売れ行きではなくなっている。また、そうした人たちだけで日本の内需経済が成り立っているなら別だが、そうした人たちでも一人でTVを10台買う人はまずいないだろう。
2020東京オリンピックまで、こうした事態が続くとしたら、それはシャブ漬けの日銀券による不動産の流動化がまた大きく始まるバブル到来を待つことになる。

職人さんの労務コストはある程度上がれば、落ち着いてくるものと見られるが、資材価格は円安のほかに、世界経済の景気の回復でも大きく値上がりする可能性がある。また、土地・不動産価格もまた都心部を中心に値上がることになり、分譲マンションの上昇圧力はこれまでになく強くなっている。
しかし、需要と供給のバランスが崩れてもいつかは調整される。それが2021年以降のバブル崩壊となるのだろうか。
全国の建設関係、特に土木関係の会社の倒産が大幅に減っている。今回の公共投資のおかげだろう。財政問題もあり、来年は縮小すると首相の諮問機関が提案している。

また、公共投資は、その後の管理維持費用がかかる。過去5年間の維持管理費用は年間5.8兆円であるが、2050年には年間20兆円かかると試算されている。景気回復と財政再建を両立させ、早期に財政問題を解決しなければ、日本は首を曲げようにもギブスにはめられ、身動きできなくなる。

建築コストが上がった顕著な例 戸田建設の業績推移
連結/百万円
売上高
営業利益
経常利益
当期利益
13年3月第2四半期
212,830
-14,415
-13,608
-33,824
14年3月第2四半期
208,387
5,892
6,665
11,109
14/Q2/13/Q2比
97.90%
 
 
 
14年3月期予想
450,000
4,700
6,000
10,000
14期予想/13期比
90.50%
 
 
 
13年3月期
497,048
-46,997
-45,581
-65,285
12年3月期
489,385
-7,994
-6,690
-19,872
11年3月期
452,499
5,766
7,265
3,567
・建築工事比率が85%~90%と高い。・建築工事の工期は、10億程度で1年前後、大型工事では3年前後かかる。
 
東証一部の全銘柄時価総額比較
 
上場数
時価総額/百万円
日経平均
2013年10月31日
1,754
418,973,677
14327.94
2012年10月31日
1,682
257,801,732
8928.29
      増減率
4.3%
62.5%
60.5%
 
スーパーゼネコン4社 2014年3月期第2四半期累計受注高前期比較
 
土木
 
建築
 
前期
今期
 
前期
今期
鹿島
96,697
151,887
 
271,097
501,385
大成
133,896
112,957
 
310,169
440,896
大林
84,832
114,713
 
340,641
445,583
清水
80,675
102,612
 
428,002
599,892
合計
396,100
482,169
 
1,349,909
1,987,756
増減率
 
21.7%
 
 
47.3%
 
2014期第2四半期累計受注高
官庁工事
 
前期
今期
鹿島
66,100
183,012
大成
135,406
109,041
大林
82,910
115,062
清水
78,559
80,551
合計
362,975
487,666
増減率
 
34.4%
 
[ 2013年11月20日 ]
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