アイコン 山路敬介氏投稿 書評 篠原章 『「外連(けれん)の島・沖縄――基地と補助金のタブー』への道 その2

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きょうも、秀逸のブログ(農と島のありんくりん)を読んでみてください。最近の沖縄にはがっかりするとも多いですが、(農と島のありんくりん)には納得させられることばかりです。

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山路敬介氏投稿 書評 篠原章 『「外連(けれん)の島・沖縄――基地と補助金のタブー』への道 その2

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山路敬介氏の投稿の第2回を掲載いたします。

篠原氏と山路氏の分析の眼は、翁長氏を戴く「オール沖縄」を批判するに止まらず、なぜ「翁長知事」のような異形のものが生れてしまったのかという原因まで遡って見ようとしています。

いや、異形ではない、翁長氏はあたりまえの既得権益を配分する「保守」のあり方なのだとしています。

その意味で、翁長氏は「根っからの保守」だといまでも自己認識しているだろうということです。

「オール沖縄」は、いままで隠然としてあった保革の「二人羽織」関係を、一歩進めて潜在化させブランド化しただけだともいえるのかもしれません。

ただし、誤解なきようにお断りしておけば、翁長氏がいう「保守」とは、我那覇氏の運動にみられるような本土の保守と共有可能な価値観を持つ理念的保守ではまったくないことです。

言ってみれば、本土にもよくいる橋が掛かったの、道路ができたのが政治だと思っている村の保守系議員に、国策規模の金を40数年に渡って与えて、ジックリ熟成させたスピリッツのようなものが「翁長知事」なのかもしれません。

もっとも熟成ではなく、いまや腐敗になっているようですが。

そしてその原因を作ったのは、むしろ本土政府が、基地を受け入れることの見返りに、ジャブジャブと与え続けてきた金にあるのではないかと捉えています。

その意味で、「オール沖縄」をうみだしたのは、沖縄と本土政府との関係そのものなのです。

かつて私も「沖縄の二人羽織」と題して、沖縄保革のいわく言い難い相利共生関係について書いたことがありましたが、それをさらに緻密に論証していただきました。

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■書評 篠原章 『「外連(けれん)の島・沖縄――基地と補助金のタブー』への道  
         ~ 疎外される本土の納税者~      その2
                                山路敬介
承前

■ 沖縄の「真正保守」たる翁長知事の目的と、安倍政権の失敗
 
本書において筆者が到達した重大な結論のひとつは、翁長知事は就任当初から「辺野古阻止が出来る」などとは考えていず、その目的は「2022年度からの沖縄振興計画の延長にある」というものです。

翁長氏の普段の言動から考えると信じがたい説のように思えるでしょうが、本書を読めば合理的で説得力のある結論だと良くわかります。

裏付けとなる詳細な事実群は本書をご覧頂くとして、雑駁に私の持論を中心に説明します。

そもそも翁長氏は就任直後から、「根っからの保守である」と言っています。

それはもうそのとおりで、ここで勘違いしやすいのは概して、「沖縄の保守」は本土で言われるような保守とは意味合いが違うという事です。

もちろんそれは、我那覇真子氏らが標榜するある種の普遍性を有した「普通の保守」を意味しません。

また、そもそも我那覇氏らと沖縄の伝統保守勢力とは、「保守」する目的も対象も違うのです。

我那覇氏らは旧態依然とした既得権護持を保守の目的としないので、(一時的に反翁長で一致点を見出すとしても)本来的な守旧派が大部分を占める沖縄自民党県連を忌避・批判してもそれは当然なのです。

歴史上、対日本政府であれ米軍統治時代の米国からでもあれ、補助金を要請し、交渉し、これを拡大するのが沖縄の保守たる沖縄自民党の目的であり役割でした。

それを「反抗」という手段で、結果的産物であったとしても「妥協」という名状の下に共闘・側面支援してきたのが「沖縄革新」の役割であり、これが口さがない連中の言う「沖縄政治の伝統芸能」と揶揄される「外連」の歴史です。
 
早い話が、本土に対して補助金を「頼む」沖縄自民党、補助金を「脅して取る」翁長知事、両者の違いはこの「手法」の違いしかありません。

ですので、この「反抗」の手段を内側におき、目的達成に向けよりラジカルに原点回帰して補助金獲得を希求するのが翁長知事なので、著者が言うように翁長知事はまさに沖縄の「真正保守」なのです。
 
沖縄県内でも「翁長知事はいくら何でもやり過ぎだろう」という声が出始めましたが、「その目的は補助金獲得にある」と薄々勘づいている県民も多く、それゆえあれだけ不道徳で違法な行為をやりたい放題でも県民から大きな批判もなく、支持率も落ちないのです。

「3000億円、7年間」の仲井眞知事との約束を安倍政権は忠実に守っています。
安倍総理はこれを約束した当時は仲井眞知事再選の助力とし、強力な側面支援としたつもりだったのでしょう。

本来ならば仲井眞氏は県民の大多数が望むところの偉業を達成したのですから、論功行賞として再選して当然だったでしょうが、第一には沖縄のメンツの問題があり「外連による塗り込め」が足りなかった。
「沖縄の心を金で売った」、というような馬鹿げた論調が県内マスコミによって徹底的に流布され、結果は裏目に出てしまいました。
私は仲井眞知事がした「承認」と「補助金」との取引に見えさえする、一連の行政を了とします。
「基地の存在」とそれを承認する「対価」を顕在化させ、そこを数値化し可視化する未来への第一歩になると思ったからです。

第二に、仲井眞知事の失脚の原因は、表向き県民が辺野古反対にもかかわらず「埋め立て承認」を成した事から始まったもののように見えますが、本当のところは承認しそうな大分以前から革新側から「革新外しの疑いあり」と捉えられ、共闘を拒んだように理解された事が二紙からの批判の原因です。

あの当時、保革両者において重要だったのは「過程」なのであり、結果的な「辺野古移設」ではなかったのです。

それゆえ二紙は死に物狂いの再選阻止報道を打ちまくり、一連の事象を慧眼をもって鋭く見ていたのが翁長現知事です。

革新の力を用いる事なく歴史的振興資金が実現するなら、革新の以後の立ち位置は狭まらざるを得なく結果的に保革のバランスが崩れる危険性がありました。

これまで阿吽の呼吸で巧妙に按分されてきた補助金使途に対する発言権にも影響します。
国から金をむしり取る場合でも常に体面を繕いつつ、キチンと「革新と共闘」の結果である事が手続き上の必須だし、歴史にならう旧来からの沖縄の鉄則です。
そして、その結果達成されるのは、あるいは最初からの目的や意味合いは、既得権者の利益保護にほかなりません。。

「外連」のせいで安倍政権と仲井眞前知事は翁長知事にまんまと油揚(3000億 7年間)だけさらわれてしまい、2022年までの最低3000億円は約束されたものとして実行される見通しとなりました。

翁長知事や県は積み増しのための儀礼だけは取りあえず怠りなくするものの、それまでの間はフリーハンドを手に入れたも同然です。

だからこそ高裁和解を破ろうが、国連に行ってデマを言い放題で日本政府をこき下ろそうが、何も憂慮する必要がないのです。

しかも無明に見える訴訟合戦は翁長知事の狙いどおりに効果が上がっており、念願の22022年以降の補助金についても5月に菅官房長官が示唆した通りに行くならば、百点満点でお釣りも来る出来栄えとなるでしょう。

ここはさらに緩急自在にスラップ訴訟でも用い、日本政府を脅しながら上手に革新の顔を立てつつ、ウラで出来かかっている2022年からの補助金の交渉を巧みに行い「確定」に持ち込もうとする場面です。

だから、今ここで直ちに「承認の取り消し」カードを切るなどは、最も愚策で論外なのです。

櫻井よしこ氏が講演会か何かで、「沖縄の政治家は保守も革新も皆、とても悪い」と言った事がありました。

その意味を具体的にハッキリとは説明されませんでしたが、前後の文脈から「沖縄の保革が一致する地点としての補助金の問題」を指しての事だったのは明らかでした。

衆院選後、小選挙区で惨敗し比例区で復活当選した沖縄自民党議員たちを東京に集めて、石破茂氏(当時の幹事長)が「辺野古容認」へと転じさせた事がありました。

ほとんど全ての報道によれば、「辺野古がダメなら、普天間固定化しかない」と脅し上げたゆえの翻意であったように書かれていて、当時の私は「石破幹事長もさすがやるもんだなぁ」と妙に感心したものでした。

しかし、後でその時の当事者の一人に聞くとそうではなく「仲井眞知事との約束を誠実に実行する事」と、「その後の振興計画についても手応えがあった」ので辺野古容認を受け入れたのだと説明しました。

それはそうでしょう。そうでなければ沖縄自民党県連に持ち帰っての説明など出来やしません。
 
安倍総理が迂闊にも7年間もの長期にわたる約束をしてしまった事が原因で、翁長知事が(違法でも何でも)やりたい放題の自由を手にしてしまった、とは言えます。

ですが、もしそれを内示しなかったらなら当時の仲井眞知事は容易に「承認」を下ろさなかったでしょうし、その後に(3000億円 7億円を)留保するならば、沖縄自民党はさらに壊滅的な打撃を受けたでしょう。

そもそも沖縄の「外連」は最初から沖縄県や翁長知事だけのものではなくて、歴代日本政府や自民党全体をも含めた一切に責任の所在があるという事だと言えるでしょう。
 
                                        (続く)

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[ 2017年9月28日 ]

 

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