五輪開催といえば、金融市場では「景気浮揚効果から株価にはプラス」というのが定石だった。
しかし、新コロナの感染が収まらないなか、既に1年延期された東京五輪は、追加的な経済効果が乏しいだけでなく、政局への影響や感染拡大懸念から株式市場の重しとなってきているという。
各社世論調査でも既に菅政権の支持率が低下している中、開催を強行すれば総選挙を前に政治が不安定化するリスクが高まるとの見る向きが多い。
こうした政治リスクにとりわけ敏感なのが海外投資家。日本取引所グループの統計によると、海外投資家は5月第2週だけでも現物・先物合計で1兆円以上の日本株を売却し、昨年3月初め以来の大幅売り越しを記録したといい、逃げにかかっているという。
海外のリアルマネー投資家から日本の政治リスクに関する問い合わせが増えているという。「日本株は2月半ばから3ヶ月もアンダーパフォ―ムしており、欧米だけでなく、新興国のソブリン系投資家など、日本株に首をかしげる投資家が増えている。まだ本格的に売り始めているわけではないが、日本市場個別のリスクとして、新コロナ対策に失敗して政治が大きく変動するリスクとその影響をさしはかっている」という。
野村総研やソニーフィナンシャルホールディングス(SFH)などの試算でも、五輪の経済効果は、最大で2兆円足らず、日本の名目国内総生産(GDP)の0.3%程度。コロナ禍に伴う国内消費の落ち込みはこれより大きいとみられる。
観光庁の調査による、昨年7~9月期の国内旅行消費額は3兆円程度と、2019年の6.7兆円から3.7兆円も低下しており、外食や娯楽の自粛の影響などもあわせると損失はさらに大きいと見込まれるという。
以上、ロイターなど参照
「開催することに意義がある」とするが、反対の声が強い国内世論を押し切って開催した場合の政権への影響が懸念されている。
現在の宣言により来月にかけても感染者は減少してくることから、今では限定付きながら観客動員を検討している政府メンバーもいるという。
ただ、全国から集まった五輪客=観光客が、その後、各地へ帰宅し、各地で感染が広がる可能性は否定できない。
4月9日からまん延防止措置中の沖縄県、GW期間中、沖縄観光にこれといった対策をとらなかったことから、10万人以上の観光客が関東・関西方面から押し寄せ、その後感染者が急増、5月23日から6月20日まで宣言県となった。こうした事実からも人の移動が新コロナにとってどれほどリスクが高いことが窺える。見えない敵・新コロナウイルスと言っても政治家の判断でどうにでもコントロールできる現実もある。
第3波までと異なりN501Y型というそれまでのウイルスより1.5倍ほど感染力が強い第4波の新コロナ変異株、インド株も含め、前提にして検討する必要があろうか。
ワクチン接種率が他の先進国に比べ大幅に低い中で五輪が実施された場合、開催に伴って感染が再び拡大する懸念がつきまとう。
スクロール→
世界の接種回数
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5月26日更新分 5月25日現在
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接種延回数
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人口当たり
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UAE
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12,420,000
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125.53%
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イスラエル
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10,570,000
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122.10%
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バーレーン
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1,620,000
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95.28%
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チリ
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17,790,000
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93.09%
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英国
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62,000,000
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91.32%
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米国
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287,790,000
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86.05%
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ハンガリー
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8,240,000
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85.26%
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モンゴル
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2,730,000
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83.27%
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ドイツ
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46,060,000
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54.98%
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イタリー
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31,870,000
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52.72%
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フランス
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33,630,000
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49.85%
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中国
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546,710,000
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37.98%
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ブラジル
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63,740,000
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29.99%
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インド
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195,510,000
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14.17%
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アワー・ワールド・イン・データ版
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日本
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10,030,000
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7.93%
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・ワクチンはほとんどが2回用、集団免疫構成の140%が目安となる。イスラエルの感染者数はピークの日には1万人を超えていたが、今では50人以下まで減っている。
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