ロシア最大の政府系ガス会社ガスプロムは15日、ドイツ向けの主要なガスパイプライン「ノルドストリーム」を経由する天然ガスの供給量を、設備の修理期限が過ぎたとして減らすと2日連続で発表した。14日は40%削減、15日は60%削減すると発表している。
EUは原油と異なり、天然ガスについてはまだ公式に削減計画を発表していないが、すでに国にわっては大幅削減し、ほかの生産国からの調達を増加させている。
エネルギーでロシアに依存するドイツは、修理予定は秋であり、「価格を高騰させるための明らかな戦略だ」などと非難している。
イタリアの石油ガス会社ENIは15日、ロシアからの天然ガスの供給量が15%削減されることになったと明らかにした。ガスプロムは削減理由など詳細を明らかにしていないという。
イタリアもロシアからの天然ガスに40%依存していたが、この間、アフリカや中東などから調達先を多様化させ、15%の削減については、直ちに影響が出る状況にはないとしている。
以上、
天然ガス価格は、6月6日に最高値となる9.322ドル(MYM)を付けた後急落し、14日には7.189ドルまで下落している。しかも、今回のロシアの独60%削減発表でも7.530ドルと急反発には程遠く、相場師のハゲタカ投資家たち(ほとんど西側)が知らん振りした可能性もある。
天然ガスは即需要家のもとへ送られることから、ドイツとしてもこうした動きに戸惑いを隠せない。夏場は冷房で電力需要が大幅に伸びる季節、電力に支障が出る可能性がある。冬場は電力のほか暖房用も増加かるが、11月にスタートし3月まで需要期が続く。
ロシアとしても、相場がそのまま落ちることは予想に反すること、価格を上昇させる計画のもとに一方的な削減を発表したものと見られる。
(ガスプロムは価格高騰により、すでに昨年間の売上高以上になっている)
天然ガスの大量産出国は限られており、世界最大の原油と天然ガスの産出国である米国が大増産しなければ、こうした欧州に対するロシアの動きに対応することはできないものと見られる。
米国の天然ガスはシェールガスであり、原油とともにシェール層から産出しているが、ゆっくりとしたペースでしか増産は進んでいない。
生産を増加して値を下げるより、世間体を考慮してOPEC並みに増産スピードをゆっくりにし、高価格を維持して儲けたほうが楽だとしているもの。
シェール団体は国内のパイプラインを認可した共和党のトランプ派であり、その認可を取り消した民主党バイデンを目の敵にしており、政治的な動きが大きく絡んでいる。
カタールは海底ガス田で急に大量生産しようとすれば、産出施設があったとしても、イランの海底ガス田と隣接しており、イランとの交渉が必要になると見られる。
米制裁下のイランは、米国との核合意がさらに遠のいており、欧州国が購入することはできない。
オーストラリアも生産を急拡大させるほどの運搬用のLNG生産施設は有していない。天然ガスを運ぶにはマイナス162度に冷却するLNG化施設が必要であり、一長一短に生産施設を造ることはできない。
スクロール→
天然ガス生産国 Bcm=10億㎥
|
2020年
|
Bcm
|
2019年
|
前年比
|
米国
|
960
|
959
|
0.0%
|
ロシア
|
705
|
751
|
-6.1%
|
イラン
|
195
|
232
|
-15.9%
|
中国
|
172
|
178
|
-3.4%
|
カナダ
|
167
|
176
|
-5.1%
|
カタール
|
154
|
168
|
-8.3%
|
オーストラリア
|
116
|
142
|
-18.3%
|
ノルウェー
|
97
|
119
|
-18.5%
|
サウジ
|
84
|
97
|
-13.4%
|
アルジェリア
|
66
|
90
|
-26.7%
|
UAE
|
65
|
|
|
マレーシア
|
65
|
71
|
-8.5%
|
エジプト
|
ランク外
|
69
|
|
・Enerdata版
|
天然ガス
|
輸出額ランキング/百万ドル
|
UNCTAD 2020年版
|
ロシア
|
33,006
|
カタール
|
20,480
|
米国
|
18,672
|
ノルウェー
|
12,132
|
ドイツ
|
9,192
|
マレーシア
|
6,869
|
アルジェリア
|
5,935
|
インドネシア
|
5,452
|
トルクメニスタン
|
5,282
|
カナダ
|
5,163
|
ほか計
|
36,661
|
世界計
|
158,844
|
輸入額 ランキング
|
中国
|
33,455
|
日本
|
30,057
|
ドイツ
|
23,358
|
韓国
|
15,718
|
イタリア
|
10,229
|
インド
|
7,782
|
フランス
|
7,206
|
イギリス
|
6,111
|
米国
|
5,638
|
台湾
|
5,516
|
ほか計
|
51,837
|
世界計
|
196,907
|
|
2020年 液化天然ガス 輸出入国/万トン
|
液化LNG船舶輸出入
|
船舶調査会社の英マークイット版
|
オーストラリア
|
8,300
|
カタール
|
8,130
|
米国
|
7,360
|
輸入
|
中国
|
8,140
|
日本
|
7,500
|
韓国
|
4,640
|
|
ロシア産の天然ガス購入国リスト
|
2020年
|
億㎥
|
ドイツ
|
382
|
イタリア
|
293
|
フランス
|
182
|
トルコ
|
133
|
オランダ
|
128
|
オーストリア
|
119
|
英国
|
84
|
ハンガリー
|
65
|
ポーランド
|
97
|
欧州上記以外のOECD加盟国
|
240
|
ベラルーシ
|
188
|
欧州上記以外のOECD非加盟国
|
116
|
カザフスタン
|
111
|
中国
|
108
|
日本
|
85
|
その他アジア
|
64
|
合計
|
2,395
|
・ロイター参照
|
|
|
|
米国の原油掘削リグ数の稼動推移/ベーカーヒューズ社
|
|
末基準
|
稼動数
|
月増数
|
原油相場
|
|
LNG相場
|
|
|
|
|
WTI/ドル
|
|
NYM
|
|
19/12月
|
677
|
|
59.8
|
新コロナ以前
|
2.292
|
|
20/4月
|
378
|
|
16.71
|
新コロナショック
|
1.790
|
|
20/8月
|
172
|
|
42.42
|
新コロナ
|
2.371
|
|
20/12月
|
267
|
|
47.09
|
|
2.583
|
|
21/6月
|
372
|
|
71.40
|
新コロナ経済回復
|
3.274
|
|
21/12月
|
467
|
|
71.53
|
|
3.865
|
|
22/1月
|
495
|
28
|
82.86
|
|
4.261
|
|
3/1日
|
522
|
27
|
92.05
|
2/24露ウクライナ侵攻
|
4.471
|
|
3/8日
|
519
|
|
3/7日露制裁
|
4.257
|
|
4/1日
|
531
|
9
|
100.28
|
EIA備蓄放出
|
5.642
|
|
5/1日
|
552
|
33
|
104.02
|
4/11,94ドル台
|
7.476
|
|
6/1日
|
574
|
|
115.26
|
5/30EU停止合意
|
8.696
|
|
6/5日
|
574
|
|
120.26
|
|
8.539
|
|
6/16日
|
580
|
|
116.44
|
|
7.574
|
|
・現在の掘削リグは効率の良いリグを稼動させており、原価は30ドル前後。総じて40ドル前後/原油価格はWTI原油先物価格、メキシコ湾岸で原油、国内のシェール層から原油と天然ガスを採取している。
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|
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↓米原油生産量(米EIA版)
5月の生産量は11,655BBL/D/1K(1キロレットルは6.29バレル)