中国が東南アジアやアフリカなどの貧困国に大規模な借款を行い、世界最大の借款供与国の地位を狙っている。中国の習近平国家主席が就任後、本格的に増え始めた中国の海外借款供与は低開発国のインフラ整備を支援するという名目で始まった。しかし、それを返済する能力がない国に対する大規模な資金投入は新たな高利借款の引き金になった。借金が借金を生む中国発の「借金漬け」が発展途上国に広がっている。
米ウィリアム・アンド・メアリー大の研究所「エイドデータ」によると、中国はこの10年間に経済難に陥っている国に2300億ドルの緊急借款支援を提供した。
中国の借款支援は2013年に習近平国家主席が就任後、急激に増えた。
2011年には10億ドルにすぎなかったが、2021年には405億ドルへと40倍以上増加している。2021年には中国ほど多額の借款支援を行った国はほかにない。それを上回ったのは国際機関である国際通貨基金(IMF・686億ドル)だけだ。
習近平主席の就任後、借款支援が大きく増えたのは、習政権が推進する一帯一路(陸と海のシルクロード)政策による影響が大きい。
中国は一帯一路政策を通じ、新興国・低貧国151ヶ国に対して道路、発電所、ダムなどインフラの建設費名目で9千億ドルを貸し付けたが、それを返済できない国が続出した結果、返済できず、返済金を貸し付け、さらに借金は膨らんでいる。
そうした借款や借款支援の大半は、変動金利で、最近の金利上昇によって償還負担が倍増する国まで登場している(IMFの債権カットの防御のために、形式的に中国の民間銀行からの融資となっている)。結局、中国が貸した金を返すために中国に助けを求めざるを得ない状況となっている。そうした国はアルゼンチン、ベラルーシ、エジプトなど22ヶ国に達している。
問題は、中国が借款支援の名目で追加で行う借款の金利が5%に達すること。IMFによる借款金利(2%)の2.5倍。
米国は2012年、ウルグアイに15億ドルを供与したのが最後の借款支援。
国際開発協力に携わる関係者によると、中国は1990年代半ばから2000年代半ばまで海外から有償援助を受けたが、金利が高くても年3%台前半だった。中国は現在、援助を大義にして多額の利子を受け取り、『利ざや商売』をしているようだとしている。
こうした高金利の借款を誰にでも供与するわけでもない。
中国の借款支援先は、天然資源が豊富にありながら、外貨準備高が足りない低信用国が中心、それに軍事的に要衝の国に対して行っている。
コンゴ民主国の世界最大のコバルト鉱山も中国企業がほとんどの利権を有し、高山を開発し、その鉱物を中国へ輸出させ、借金や利子の返済財源にさせている。
担保があってこそ高金利の借款を受けることが可能。
しかし、一部の国には償還猶予や債務調整要求に消極的な姿を見せた。そのため、スリランカは2017年、インド洋の軍事的要衝の港湾建設に借りた14億ドルの借款を返済できず、港湾運営権を中国の港湾企業である「招商局港口」に99年間貸し出し、中国が手に入れた。
中国と蜜月時代だった労働政権下のオーストラリアは、同国北西端のダーウィン市の港湾を99年間貸与している。当然、中国は、米軍の監視とインド洋戦略の下に動いている。すぐ近くには米空軍の駐屯地もある場所だ。
労働党政権は中国の賄賂漬けになり、その後、何人も逮捕者も出て選挙で敗退、しかし、今回、新コロナ経済悪化により、再び労働党政権となっており、現政権は、再度、中国へニジリ寄ろうとしているが、労働党政権は国民の目を気にして前回のようなあからさまの動きはしていない。(これが英連邦国家兼米国同盟国の実態である。)
パキスタンは、対外債務(1,263億ドル/22年12月)の30%に達する対中債務を返済できず、債務不履行の危機に瀕している。
前回もそうした機器に瀕し、IMFに救済を求めたところ、対外債務をカットするように要求、パキスタンは中国に債権カット要求する金の玉はなく、中国はしかたなく支援借款を行い救済した。しかし、借金が膨らんだだけだった。スリランカもまったく同じ状況だ。
パキスタンとスリランカは、貿易収支も経常収支も万年赤字国家でもある。
そして再び窮地に陥り、IMFに要求しているが、IMFの基金は西側諸国が拠出しており、昔と異なり、米国はじめ西側も煩くなっており、IMF特別融資には多くの制約を設けている。
大規模な海外借款は人民元の影響力を高めるためだという分析も出ている。
中国は21年に借款支援を実行する際、90%をドルではなく人民元で貸し付けた。保有するドルで既存の借金を返済し、外貨準備高に人民元を組み込むよう誘導する戦略を通じ、人民元の地位を高める狙いがある。ドルとは異なり、人民元は中国の原材料とサービスしか買えないだけに、中国の輸出にも役立つ。
ドイツのシンクタンク、キール世界経済研究所の研究員は、「国際金融システムに巨大プレーヤーとなった中国。一帯一路覇権戦略の目的がより露骨に明らかになるだろう」と述べている。すでに資源・特にレアメタルでは米国、オーストラリアからニューカレドニア・コンゴ民主・チリにいたるまで中国の隷属下にある(米国のレアメタルは中国が含有鉱石を購入し、レアメタルを抽出・生産し、米国へ輸出している。米国の製品化依存率は9割がやっと7割まで下がった状態である。米・豪は中国の石炭発電の電力価格の安さでレアメタルを抽出生産させている。中国が含有鉱石を購入しており、中国は輸出禁止にすることはいつでもできる)
中国による借金の漬物国の不安要素は政変。
政権が交代したエチオピアも昔ほどしっくり行かなくなっている。
<再び内戦状態に、スーダン>
スーダンも北部へ高速道路建設要求に経済的メリットかなしとして中国がこれ以上のインフラ融資を断ったところ、経済不振を問題視され、中国派のバシル大統領がクーデターで失脚、前大統領派の北部と中央新政府の抗争が内戦にまで発展した。
北部との内戦が終結したと見られたが、今度は別の事案で内戦状態に突入している。
4月15日に政府が準軍事組織「迅速支援部隊(RSF)」(民族浄化のダルフール大虐殺事件を引き起こした組織)を民政移管=武装解除しようとしたところ、RSFが猛反発、国軍と衝突、首都ハルツームを中心に17日までの3日間戦闘状態にある。
陸軍は17日、RSAに対して解散を命じた。戦闘は激しく首都だけでもすでに民間人100人あまりが犠牲になっている。戦火は各地に拡大、9ヶ所の都市で確認されている。
今回の衝突は、陸軍長官の「バーハン将軍」とRSFグループの長である「ダガロ将軍」の間の権力闘争ともみなされている。 クーデターは両将軍が同盟して実現していた。
なお、ロシアのワグネルは「ダガロ将軍」との関係を強化しており、RSFをワグネルが支援している可能性も指摘されている。前バシル独裁政権下で関係を持ち、武器の供与、見返りの金鉱山開発と金のロシアへの移送を担っていたという。
エジプトの南に位置するスーダンは原油が採れ、中国企業が利権=権益を有し、借金返済の財源にさせている。中国は懇意にしていたバシル政権が倒されてから、表立った動きはしていない。
スーダンの例では、独裁政権を支えた中国のインフラ融資、経済発展に国民の支持を得るが、中国からのインフラ融資が止まった途端、経済不振に陥り、国民は独裁政権に反旗を翻し、政情不安に。国の経済を支える原油は中国がインフラ投資代として持ち出し、新政権になろうが経済は新コロナもあり悪化している。
スリランカもそうであるように。
パキスタンも政情は不安定化してきている。借金返済を新たな融資で返済させても借金は雪だるま式に膨れるばかり、経済が成長しなければ国民は政権に不満を持つ。中国はパキスタンを手駒状態にし続けるにはインフラ融資をし続けるしかない。
そうした融資も断り、身動きできなくなってIMFに泣きついても、中国は民間銀行の融資だとして債権カットには基本応じない。
しかし、ここまでくれば、中国が面倒を見るしかないが、そんな国に対して日本を始め西側が助け船を出したりしている。自業自得の考えはないようだ。
新幹線で裏切られた中国寄りのジョコ政権のインドネシアへ、首相を初外交させる日本国でもある。
借金大国の日本も(国と地方の)インフラ投資を半額にさせたら政権は変わるかもしれない。
スクロール→
中国の借款支援国/世界銀行版
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中国からの借款を返せずさらに中国から借金した国
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借金漬物国一覧
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ブルガリア
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ほかにもいっぱいありそうだ。
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↓スーダンの内戦(17日/AFP)