世界最大の自動車市場・中国で今年に入り、前例のない自動車の値下げ競争が行われている。
きっかけは1月初め、電気自動車(EV)大手のテスラが価格改定を発表。上海工場で造られ、中国で人気の「モデルY」を28万8900元(約564万円/19.5円)から25万9900元(約507万円)の10%値下げ、「モデル3」を26万5900元(約519万円)から22万9900元(約449万円)と13.6%値下げした。これを機に外資系、中国メーカーの値引き競争が始まった。
トヨタのEV「bZ4X」は昨年の19万9800元(約389万円)から16万9800元(約331万円)に15%値下げし、さらに13万9800元(約273万円)での30%引きの限定販売も行った。
中国では中央政府の補助金は今年からなくなったが、地域によって地元行政が自動車購入に補助金を出している。
湖北省では、21万1900元(約413万円)のシトロエンのC6が値下げと補助金が重なり12万1900元(約238万円)と購入価格が半額近くまで下がり、全国的に話題を呼んでいる。
このほかアウディ(Audi)やBMW、中国メーカーも次々と値下げに踏み切り、約50社が100種類近くの自動車で値引きをしている。
ディーラーによっては「買1送1(1台買えば、もう1台プレゼント)」というキャンペーンも。中国では「一つ買うと、もう一つおまけ」という売り方は、お菓子やジュースではよく見かけるが、高額の自動車では異例なこと。
前例のない値引き合戦が起きているのは、複数の要因がある。
1、中国政府の自動車取得税優遇措置が終わるのを見越して、昨年末までに駆け込み需要があり、今年に入って動きが冷え込んだ。1月は特に大きく落ち込んだ。
2、コロナ惨禍が収まり、市民が旅行や外食、ショッピングなど車以外にお金を使うようになった。
3、中国では今年7月から厳格な排ガス規制「国6B」が導入されるため、メーカーは在庫車両を一斉放出したい狙いがある。
4、EVに関しては、バッテリーの原料となる炭酸リチウムの国際価格が下落しており、値下げしやすい面もある。リチウム先物相場は19/12月49,500(CNY/T)、ピーク22/11月597,500、23年4月187,500。
中国自動車工業協会(CAAM)によると、中国の2022年の自動車販売台数は前年比2.1%増の2686万台。14年連続で世界最大市場を維持している。
このうち、EVなどの新エネ車(NEV)の販売台数は850万台で、乗用車全体の36%に達している。
EVシフトを進める欧米企業をはじめ、各メーカーにとって中国市場でシェアを維持・拡大することは生き残りに欠かせないため、「異次元」の値引きレースでアクセルを踏み続けている。
中国政府にとってNEVは国家の経済戦略の大きな柱であり、今年の国内総生産(GDP)の成長目標「5%前後」を達成するには、自動車産業の安定した伸長が欠かせない。
CAAMは3月下旬に「価格競争は長期的解決策にならない」と声明を発表している。値引き合戦にブレーキをかけるよう懸命となっている。
以上、AFP中国
スクロール→
中国自動車販売台数/工場出荷台数
|
/千台
|
23年
|
22年
|
21年
|
前年比
|
1月
|
1,649
|
2,531
|
2,503
|
-34.8%
|
2月
|
1,976
|
1,737
|
1,455
|
13.8%
|
3月
|
2,451
|
2,234
|
2,526
|
9.7%
|
4月
|
|
1,181
|
2,252
|
-47.6%
|
5月
|
|
1,862
|
2,128
|
-12.5%
|
6月
|
|
2,502
|
2,015
|
24.2%
|
7月
|
|
2,420
|
1,864
|
29.8%
|
8月
|
|
2,383
|
1,799
|
32.5%
|
9月
|
|
2,610
|
2,067
|
26.3%
|
10月
|
|
2,505
|
2,333
|
7.4%
|
11月
|
|
2,328
|
2,522
|
-7.7%
|
12月
|
|
2,556
|
2,786
|
-8.3%
|
22計
|
|
26,849
|
26,250
|
2.1%
|
23計
|
6,076
|
6,502
|
|
-6.6%
|