ブルームバーグによると、中国政府はさまざまな金融支援を受けられるデベロッパー50社のリストの草案を作成したと報じている。
リストには、ドル建て債デフォルトの碧桂園(カントリー・ガーデン)、中国債の期限延長、ドル建て債の返済一時停止した遠洋集団、債務支払いを怠った旭輝控股集団(CIFIホールディングス)などが掲載されているという。複数の関係筋の話として報じた。
規制当局は数日中にリストを最終決定し、銀行などの金融機関に配布する予定という。具体的にどのような支援策が適用されるかはまだ不明。
ANZバンク・チャイナのクレジットアナリスト、ティン・ミン氏は、中国政府が不動産業界について大きく軌道修正したことになり、業界にとってプラスと指摘。
ただ、すでにデフォルトした業者に対しては、新たな資金を債務返済ではなく住宅引き渡しに投入するとの見方を示し、債務問題の解決は再編交渉次第だとの見方を示した。
野村證券は21日付のリポートで、不動産回復の最大の障害は依然、小規模都市で停滞している大量の住宅プロジェクトだとし、中央政府がいずれ複数の大手を救済することになると予想していた。
以上、
政府のこれまでの不動産に対する規制緩和策は、不動産開発会社など供給側ではなく、購入する需要者側の緩和ばかりで、地方政府によっては規制を完全撤廃した都市もある。
今回はやっと不動産開発会社に対する規制緩和、今回の措置で不動産業の景気が回復しなければ、更なる規制緩和がもたらされるものと見られる。
50社リストに入れば、デフォルト懸念は払拭され、不動産会社の破綻は限られ、不動産業界の回復が急ピッチで進もうが、これまでの債務に対する債務返済財源の融資を受けられなければ、その効果はなくなってしまう。
不動産開発会社は開発に当たり、融資を受けるほか、プロジェクトファイナンスや私募債を発行し、多くの国民が投資ファンドを通して私募債を抱え込んでおり、海外債も含めその問題が解決しない限り、国民の不安は払拭されないだろう。
これまでも建設が中断しているマンションに対しては政治的に事業を政府系不動産会社などに引き継がせ、購入者にマンションを提供する動きはしてきた。しかし、資金不足に陥っている不動産会社は長期間放置され、実態が深刻な状況に拡大しており、今回、それを中央政府の政策で建設中断マンション工事を再開させるだけでは、解決策にはならない。
また、不動産開発会社が整理淘汰され、経済を回復させた場合、マンションの需給バランスが崩れ、再びマンション価格が高騰する懸念すらある。
中国では全土の数多の都市で不動産開発事業が行われている。
習近平主席の共同富裕論=3道紅線に基づく2020年8月の政府当局による不動産開発会社の融資に対する自己資本規制、これにより多くの民間の不動産会社が窮地に陥っているもの。
また、地方政府主導でも不動産開発が行われており、財務基盤の弱い地方政府系の開発事業も宙ぶらりんとなっている。
中国経済は、外需で成長を遂げてきたものの、米国とは貿易戦争状態、欧州経済は低迷して沈み込み、国内は昨年12月、新コロナロックダウン政策からウィズコロナ策に転じたものの、外需不振、内需も新コロナロックダウンで打撃を受け、若年労働者の高い失業率に見られるように経済回復には程遠いものとなっている。
リーマンショックでは中国新幹線や高速道路網の整備を代表する国内インフラ投資でショックを克服し成長を牽引したが、2010年と2022年とではGDPが3倍も増加しており、今回の香港-アモイ間の海上道路橋や大連海底トンネルなどの巨額インフラ投資でも経済を牽引するものではなく、すでにこうした案件は新コロナ期間に事業は終了もしている。
経済波及効果の高い住宅産業は、習主席の共同富裕論の不動産版、融資規制により今や民間の不動産開発会社は今や空中分解寸前、国内経済低迷の大きな原因ともなっている。
不動産業界に対する強力な融資規制を当局が解除せず、満期社債の償還金融資規制、借り換え社債発行の引き受け規制、新規社債発行の引き受け規制により、キュッュフローの問題から不動産開発会社の多くが行き詰ったままとなっている。
習主席は2012年に就任して以来、習政権は何回も不動産規制に動いたものの、そのたびに不景気になり、経済回復のために、規制を緩和してきたパターンを繰り返している。しかし、今回はこれまでのような購入側の規制ではなく、開発会社に対する規制であり、経済に大きく影響している。
しかも経済低迷に誰も動こうとはせず、今回、習主席が自ら中央銀行を訪問し、対策を伝授された模様。
今回の経済不振は独裁色を強めた習氏の3期突入の弊害でもある。
チャイナセブン全員が妄信的習派となり、批判する、意見する者などいないことが、ロックダウン策も含め長期にわたる経済不振に至らしめている。
スクロール→
2022年の不動産販売高順位と総負債額
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順位
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会社名
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官民
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負債額
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億元
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兆円
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1
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碧桂園
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民間
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14,349
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28.6
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2
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万科企業
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深セン市系
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13,521
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27.0
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3
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緑地控股
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上海市政府系
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12,010
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24.0
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4
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保利発展控股
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国務院系
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11,483
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22.9
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5
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華潤置地
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国務院系
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7,396
|
14.7
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6
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招商局蛇口控股
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国務院系
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6,020
|
12.0
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7
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龍湖集団
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女性・民間・BBB
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5,536
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11.0
|
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8
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中国海外発展
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国務院系
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5,402
|
10.8
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9
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金地集団
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民間
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3,031
|
6.0
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10
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越秀地産
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広州市政府系
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2,616
|
5.2
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番外
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中国恒大
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民間
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24,374
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48.7
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・2022年初にはすでに問題が発生、民間事業者は金融機関からほとんど資金調達できなくなり、多くの中小規模業者が破綻、大手へ波及している。
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碧桂園はマレーシアのシンガポール近郊の島嶼埋立地「フォレストシティ」に1000億ドル(15兆円)投下した大マンション開発が、インフラ整備もされず、幽霊超高層マンション群となっている。
中国・住宅不動産開発業者
ほかに窮地に陥っている万達のような主に商業用不動産開発会社も別途ある。
恒大は創業者が警察の監視下に置かれたが、総合不動産開発会社であり、EV開発事業など複合会社群を形成して窮地に陥っている。
地方政府系の第3セクターも多くが窮地に陥っており、実態がなかな見えないのも中国の秘密主義からきている。
スクロール→
中国・不動産業者 危険リスト
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2021年9月版
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恒大地産(不履行)
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碧桂園(不履行)
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華夏幸福基業(不履行)
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天津地産(不履行)
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泰禾地産
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花様年(不履行)
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鑫苑置業
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新力地産(不履行)
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四川藍光発展
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陽光100
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融創中国(2023年9月22日実質デフォルト)
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嘉凱城集団
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格力地産
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京投発展
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新華聯
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鴻坤地産
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恒泰地産
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実地地産
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藍光発展
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宝能集団
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栄盛発展
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天房集団
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建業集団
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三盛宏業
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協信遠創
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広州富力地産
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中南建設
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祥生地産
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新城集団
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金地集団
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華南城
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瑞安房地産
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融信中国
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政府系不動産会社
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万科集団(筆頭株主は深圳市地鉄集団)
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保利集団(中央政府の国務院系)
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中国海外発展(香港拠点、国務院系)
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華潤置地(国務院系)
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招商局集団(香港・深セン/国務院系)
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緑地控股集団(上海市政府系/不履行)
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遠洋控股集団(政府系/元安邦保険破綻で国有化/不履行⇒分割償還)
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越秀地産(広州市政府の投資会社傘下)
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★順不同/すでに破綻整理された企業もある
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スクロール→
中国の中央+地方政府の負債額 2022年
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政府債務
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93兆元
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GDP1,20.5兆元/77.1%
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地方政府債務
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35兆元
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IMF集計
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地方政府第3セクター
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65兆元
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隠れ債務/IMF集計
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合 計
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193兆元
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約3,956兆円
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・対元円は20.5円
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