今や中国の政策に興味が沸かなくなった感があるが、それは習近平国家主席が禁忌の3期目に突入、独裁色を強め、どっぷり漬かった資本主義の原理に逆走して不動産バブルを崩壊させ、結果、収拾が付けられなくなっている。
昨年1月から新コロナから開放し、22年3月からはロシア制裁特需もありながら、経済回復の伸びは大幅に遅れている。
そうしたプラス要因もあるものの、マイナス要因は、金利高でも景気好調の米国との貿易戦争激化、欧州のインフレ退治の金利高=経済悪化に輸出が伸ばず、連れて、鉱工業生産の伸び率も鈍化している。
2008年10月のリーマンショック時では、中国は高速道や新幹線網を急拡大させる大規模インフラ投資により乗り切った。今回は新コロナ事態下で、香港-アモイ間の海上交通橋など大規模公共投資を行い経済の落ち込みを下支えてきた。しかし、現在は、2010年よりGDPは3倍(2022年)も増加しており、従前の公共投資を少々増加させたくらいでは、経済を牽引できる規模ではなくなっている。
確かに中国の政府支出は当時の3倍増になっているが、国営企業の事業拡大、新コロナ対策、地方政府の財政立て直し等に多額を擁し、肝心の不動産開発が習政策によりバブルを崩壊させられており、二次的経済波及効果に乏しく、経済に与えるインパクトは弱くなっている。
また、日本のように公共投資を全土津々浦々に行じても一次的にも二次的にも経済波及効果は乏しくなる。主要路線の道路や新幹線開発はその後の経済的効果が大きいが、なかでも住宅開発は鉄鋼・木材加工・各種建材から家電、家具、インテリア、ペット用食材に至るまで波及効果が非常に大きく、2021年から開始した習近平政権の不動産政策の失敗は今に続き、なかなか浮上しそうにない。
<三中全会>
中国の中長期的な政策を審議する中央委員会第3回全体会議(三中全会)が18日に閉幕した。
会議では「改革の全面的深化をさらに進め、中国式現代化を推進することに関する党中央の決定」を議決し、コミュニケとして公表された。盛り込まれた改革案を中華人民共和国建国80年となる2029年までに完成させる。
コミュニケでは、2035年までに「高水準の社会主義市場経済体制」を建設するとの目標を設定。AI(人工知能)、EV(電気自動車)、省エネ技術など最先端技術・産業の振興を強化し、イノベーション(技術革新)を通じて成長の底上げを目指す。
米国が半導体などハイテク分野で対中抑止策を進める中、「供給網(サプライチェーン)の安全」を確保すると強調した。
<国内需要拡大を積極化方針>
「民生を改善することが中国式現代化の重大任務」とし、収入分配制度や就職対策、社会保障制度、人口対策を改善する方針も示した。『不動産』や『地方政府債務問題』を今後の経済リスクとして明示し対策を講じる。
また、対外開放が基本的な国策であることを確認した上で、貿易などで「改革をより突出した位置に置き、さらに深化させなければならない」と主張。「改革」に50回以上言及し、鄧小平氏が進めた「改革」の継承を強調した。
(鄧小平氏の胸像を取り払ったのも習近平氏である/白黒猫論を超えたとした習氏、しかし、眼下、経済低迷が続き、再び鄧氏を持ち上げたようだ)。
欧米が指摘している政府支援による過剰生産設備が欧米や世界市場を侵食し、商品の適正な価格競争原理を逸脱させているとの主張も、中国経済低迷では製品の行き先もなく、ダンピング・政府支援輸出が横行する原因ともなっている。また、そのためにも中国経済の早期の回復が望まれている。
三中全会では、金融や財政、国防などの改革も進めると表明。建国80年の2029年までに「改革の任務を完成させる」ことも打ち出してもいる。
現在、中国海軍では3隻目の空母が完成を控えている。カタパルト仕様となっている。
<外開放へ、米欧との関係改善へ>
こうした中、米中首脳は電話会談を含めて複数回にわたって対話している。
ブリンケン国務長官、イエレン財務長官など米閣僚が訪中しているほか、
4月には独ショルツ首相が企業幹部の経済交流ミッションを率いて中国訪問。
5月にはフランスが習国家主席をパリで国賓として出迎えた。
関係が悪化していたオーストラリアも、保守政権から労働党政権になり、豪中関係改善が進み、6月には中国から関係改善のパンダが送られることが決まっている。
ニュージーランド、イタリアなど各国で外交や経済面で対中関係を強化している。
欧州各国の対中関係改善の背景には、ウクライナ戦争によるエネルギー価格の高騰を受けた経済疲弊、各種物価高騰=テンフレ退治の金利高による経済疲弊、インフレ率の沈静化で経済立て直し期に入り、中国関係強化が近々の課題となっている。米国は自国一国主義に傾倒しており、欧州は開放経済の中国に期待せざるを得ない状況となっている。
トランプ2は減税意向であり、その原資に関税も主要財源にする動きであり、中国以外からの輸入品一律10%関税主張も現実化帯びてきている。
ただ、中国の米国への輸出企業が東南アジアへ大量進出しており、中国製が東南アジア製に変身して輸出される可能性も大きくなっている。当然、そうした材や財は中国から東南アジアへ輸出され、米国への輸出が減少しても中国製は変身して東南アジアから輸出されることになる。
中国もロシア・北朝鮮の接近から距離を置くなど西側諸国との関係に配慮している。
中国は約14億人の人口を抱える巨大市場で、自動運転技術など新サービスの普及も早い。日米欧をはじめ外国企業の多くは業績拡大に向けて中国市場を無視できない。
米有力企業の訪中団が近く訪中予定。
金融大手ゴールドマン・サックスや半導体大手クアルコム、スポーツ用品大手ナイキ、飲食大手スターバックスなどの有力企業が参加する。
中国進出企業で構成する米中ビジネス協議会(USCBC)が組織し、習指導部の要人との面談が予定されている。
3中全会直後の外資企業の訪中団は異例。
欧州の有力企業トップの訪中も相次ぐ。中国景気や外資への扱いを含めた経済方針などについて聴取して意見交換するとみられる。
半導体分野のイベントでも、米アプライドマテリアルズ(AMAT)など、多くの米国企業が参加している。
<日本政府は経済まで米国ばかり見ず、実利重視で対中外交推進すべし>
在中国の日本企業幹部は「中国を重要な市場の一つとする企業が5割を超え、中国市場の重要性は高まっている」と強調している。
半導体やエネルギー安全保障などで必要以上の規制や排除は避けるべきだろう。国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)における米中の協力は引き続き合意事項である。
カーボンニュートラル(温暖化ガスの排出実質ゼロ)を達成するためには、中国の再生エネルギー分野の技術力をうまく利用し、したたかに日本の経済成長に取り込んでいく必要がある。
(足下ではトランプリスクが台頭、米国はカーボンニュートラル各種規制を撤廃する可能性が高い。)
日本にとって中国は貿易総額の2割以上を占める最大の貿易相手国。中国との独自のパイプを持つ本来の日本のポジションを取り戻し、したたかな経済・外交関係を推進し実利をとれるよう官民が努力すべき。
中国は、依然発展途上であり成長余地が大きい。絵画からの千人計画が定着し研究者の絶対数が膨大、研究開発(R&D)への投資増や自由なデータ活用により、AIやEVなど明るい分野が拡大している。
シリコンバレーで起業して帰国する中国人も多く、2017年までに政府直営のAI専門学校を各地に開設しており、電子産業を牽引する深センや中関村の潜在的伸びしろは大きいと予想されている。
経済も金融も日米欧は中国との相互依存が高いものの、新コロナ・ウクライナ戦争において、世界の分断は進むも、欧州では愛国主義・自国主義の右派や右翼政党が議席を伸ばし、米国では貿易保護主義=米至上主義者のトランプ氏の再現我、来る11月5日の選挙で明らかになる。
11月5日の米大統領選挙、対中政策では欧州日を巻き込んだトランプリスクが潜んでいる。
バイデン政権も週末になりかけ、2023年10月9日のCHIPS法+をさらに強化し、半導体製造装置などを広範囲に中国への輸出を規制する動きもある。
好調は民族系の自動車製造販売業界だけか
2024年北京モーターショー、気になるスリット。
中国経済で唯一堅調なのが自動車産業、しかし、ここでも低価格競争時代に入っており、欧米に地の外資企業はまともに闘えない価格設定での戦いとなっている。
中国市場で、新コロナ前は中国勢は43%前後だったが、2023年には60%までシェアを拡大させている。なかでもEVの低価格競争に持ち込みテスラを追い落としたBYDの一人勝ちとなっている。BYDは電池でも中国大手。
以上、報道も参考
スクロール→
中国
|
自動車販売台数
|
乗用車販売シェア
|
/千台
|
乗用
|
商用
|
合計
|
民族系
|
独系
|
日系
|
19年
|
21,444
|
4,324
|
25,769
|
39.2%
|
24.2%
|
21.3%
|
20年
|
20,178
|
5,133
|
25,311
|
38.8%
|
24.0%
|
23.6%
|
21年
|
21,482
|
4,793
|
26,275
|
45.3%
|
20.1%
|
21.1%
|
22年
|
23,563
|
3,300
|
26,864
|
50.7%
|
18.9%
|
18.3%
|
23年
|
26,063
|
4,031
|
30,094
|
56.2%
|
17.8%
|
14.7%
|
前年比
|
10.6%
|
22.1%
|
12.0%
|
22.5%
|
3.8%
|
-11.3%
|
24年上
|
11,979
|
2,068
|
14,047
|
62.0%
|
16.4%
|
12.2%
|
前年比
|
6.3%
|
4.9%
|
6.1%
|
22.4%
|
-6.8%
|
-14.7%
|
・バイデン政権の更なる半導体製造装置等の規制強化策(案)、駆け込み需要で日本からの対中輸出が急増している。自動車用半導体などは小ロットで日本の得意芸であるが、中国は「中国製造2025」の目標の下、そうした半導体の製造にも注力しており、米国の対中輸出規制拡大前にと、まだ規制がかかっていない半導体製造装置分野の製品の日本からの輸入が急増しているもの。
対中輸出品 前年比
|
|
半導体製装置
|
半導体等電子部品
|
自動車
|
重機
|
非鉄金属
|
24上半期
|
36.2%
|
0.2%
|
26.2%
|
3.7%
|
33.6%
|
23年
|
19.7%
|
-7.1%
|
-5.6%
|
35.4%
|
-6.0%
|
22年
|
-1.7%
|
10.9%
|
5.9%
|
-46.1%
|
5.4%
|
21年
|
35.8%
|
15.4%
|
3.6%
|
-14.5%
|
27.6%
|