韓国で、青少年や大学生向けの海外教育旅行を手がけていた旅行会社「アンデルセン旅行」が突然営業を停止し、大規模な返金トラブルに発展している。被害者が開設したグループチャットの参加者は1600人を超え、関連事業者を含めた被害額は210億ウォン(約23億円)を上回ると被害者側は推計している。ただし、この金額は当局が確定した債務額ではない。
アンデルセン旅行は、子どもや大学生、家族などを対象に欧州を中心とした教育・文化体験型の旅行商品を販売していた。特徴的だったのが、旅行の出発より1~3年も前から代金を受け取る前払い方式だ。2027年出発の商品も販売されており、営業停止をまだ知らない予約客がいる可能性も指摘されている。
問題は以前から表面化していた。韓国の1372消費者相談センターには、旅行をキャンセルしても数カ月にわたって返金されない、返金予定日を何度も延期されるといった相談が寄せられていた。8月に入ると、出発直前になって会社と連絡が取れなくなるケースも発生。アンデルセン旅行は警察の捜索後に旅行業務の停止を発表した。
経営状態にも警戒材料があった。韓国メディアによると、2024年末時点の企業信用格付けは「CCC+」で、債務不履行の可能性を抱える水準と評価されていた。この格付け情報は2025年4月に算出され、外部から確認可能だったという。
さらに波紋を広げているのが関連事業者の存在だ。アンデルセン旅行と同じ住所で事業を行っていた旅行ブランドでは、アンデルセンが営業停止を発表した後にも新たな旅行商品の募集が確認された。別の利用者からは、1年以上返金されていないとの訴えも出ている。
一方、アンデルセン旅行は正式な旅行業登録を行い、企画旅行保証保険2億ウォン、営業保証保険4000万ウォンに加入していると自社サイトで表示していた。保証額は合計2億4000万ウォンだが、被害者側が推計する210億ウォン規模の被害には到底及ばない。旅行会社が制度上必要な保証を備えていても、多額の前受金を抱えたまま営業不能になれば、消費者の全額救済が難しい実態が浮き彫りになった。
韓国では同様のトラブルが続いている。今年4月には新婚旅行専門の旅行会社が突然営業を停止し、約170組のカップルが被害を受けた。出発数日前に営業停止を知らされたケースもあり、破綻直前まで新規予約を受け付けていたことから、顧客から集めた資金を別の顧客の旅行代金や返金に回していたのではないかとの疑いも持たれている。
今回の問題は、旅行会社の規模や知名度だけで安全性を判断できないことを示した。特に出発が1年以上先となる高額な教育旅行や新婚旅行では、消費者が長期間にわたって旅行会社に資金を預ける形になる。会社が途中で経営難に陥れば、その前払い金が大きなリスクとなる。
日本の消費者にとっても他人事ではない。高額な旅行を早期予約する場合は、旅行業登録や保証制度だけでなく、旅行代金をいつまでに、どの程度支払う契約なのかを確認することが重要だ。今回の韓国の事例は、「登録業者だから安心」というだけでは十分ではなく、長期・高額の前払いそのものが旅行契約のリスクになり得ることを示している。