アイコン ユーロ圏 世界初のマイナス金利導入 トラギ采配/日本の現状

欧州中央銀行(ECB)は5日、ユーロ圏18カ国の金融政策を決める理事会をドイツ・フランクフルトで開き、銀行に融資する際の主要政策金利を過去最低の0.25%から0.15%に引き下げた。利下げは昨年11月以来、7ヶ月ぶり。
 また市中銀行から資金を預かる際の金利を現在の0%からマイナス0.1%に引き下げた。マイナス金利はデンマークやスウェーデンで導入されたが、主要中央銀行では例がない。
この「マイナス金利」と呼ばれる政策は、当然、金融機関の収益を圧迫し、逆に貸し出しが減るおそれが指摘されるなど、効果を疑問視する声も出ている。

ユーロ圏では、長引く景気の低迷でデフレに陥るのではないかという懸念が続いていて、ヨーロッパ中央銀行のゴリ押しのスーパー・マリオと呼ばれるドラギ総裁は5日、理事会のあとの記者会見で、「物価の低迷が長期化するリスクに対応するため、あらゆる政策をとる」と述べ、今後、量的緩和など一段の金融緩和に踏み切る可能性を示唆した。
ただ、今回の利下げで政策金利は、限りなくゼロに近づき利下げの余地が狭まることに加え、金融機関に負担を強いる「マイナス金利」の幅を拡大することには反対も予想され、政策手段が限られるなかで、景気を下支えしユーロ圏がデフレに陥るのを防ぐことができるかが注目される。

ここで虎視眈々に構えているのが英国、英国では逆に過熱気味の景気、特に不動産価格の上昇に金利を上げる動きがあり、EU加盟の英国系や独自路線のスイス系はじめ、ユーロ圏には多くのユーロ圏外外資系銀行が進出しており、ユーロ圏金融機関から、こうした圏外の外資系金融機関へ資金が流れるおそれもある。

<日本の現在のケースとの違い>
日本は、アベノミクス経済効果が進展している。円安という政策手段で輸出企業が多くの利益をもたらすようになり、平行して株価が高騰し個人消費に火が付きはじめ、時間の経過とともに内需の投資も増加してきている。このように、企業利益と個人消費(=個人投資)の2つの拡大により、企業の内需投資が増加に転じデフレを克服しようとしている。
こうした方策なく、マイナス金利政策だけで金融機関に貸し出しを促しても、内需が沈滞した経済下の企業の借り入れニーズは弱く、その効果は限りなく限定的になることが予想される。期待される金融機関の企業向け貸し出しの拡大、国債や債権投資への動きにしてもリスクとの兼ね合いから、限定的と思われる。
日本では、日銀の市場への資金供給はシャブ漬け状態にあるが、70兆円とも80兆円とも増加した市場資金は、ほとんど金融機関に留まったままとなっており、一部の不動産投資やM&Aなどの資金以外ほとんど企業へは渡っていない。リーマン・ショック前までの企業景気による利益は、金融機関からの借り入れを減らし、内部留保に努めてきた結果、企業の設備投資に対する資金ニーズは、それ以前より大幅に減じている。
不動産分野を除けば、企業に借り入れニーズが生じたとしても、今や大型投資は海外工場投資であり、内需の活性化にほとんど役立っていないのが実情だ。ただ、内需を牽引する個人消費が拡大してやっと内需向けの企業投資に火が付き始めたこの頃である。
ユーロ圏の中央銀行が金利をマイナスにしたところで、ユーロ圏の内需不振から企業の借り入れニーズは低く、無理に貸し出しさせれば、リスクは高まり、金融機関を弱体化させる恐れも否定できない。
ユーロ圏は、各国の市場も異なり、政治に関してはバラバラだが、金融に関しては、トラギ総裁が強力なリーダーシップを発揮している。ただ、金融と政治の現実は一体化しており、ユーロ圏離脱など大きな問題が浮上する可能性もある。
 

[ 2014年6月 6日 ]
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