アイコン 韓国経済 造船 安値受注の祟り今発現 問題の海洋プラント受注残まだ51基

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韓国の造船業界は昨年、身を削る大リストラに「これ以上の海洋プラントのリスクはない」と壮語した。
だが再び問題が広がる兆しが存在する。

大 宇造船海洋は当初、ソナンゴルプロジェクトを今週中に引き渡す予定だった。2013年に契約したアンゴラの国営石油会社ソナンゴル向けにドリルシップ2隻 を建造するプロジェクトだが、もともと昨年12月に引き渡す予定だった。しかし、発注元が今月末に引き渡しを延期した。だが、今回も引き渡しは厳しい見通 しだという。
大宇造船海洋は最近、鄭聖立社長自ら「(ソナンゴルプロジェクトの残金)1兆ウォン(約1千億円)が年内に支払われるか不確実に見え る。資金を確保できなければSTX造船海洋のように法定管理に入ることになりかねない。引き渡し失敗に備えた案を用意しなければならない」と明らかにして いる。

造船業界は、海洋プラントのような安値受注の祟りのほか、発注元がすでに倒産したり、資金難に陥っているところもあり、船舶を完成させても 資金不足から引き取れない先も多くなっている。海運市況から引き取り延期案件もある。また、引き取っても仕事がないため、高額のキャンセル料を支払い引き 取らない先もある。最悪は完成した船舶に難癖を付け引き取らない先もあるという。いずれにしろ、造船各社の資金を圧迫する原因となっている。

大宇造船海洋は4000億ウォン相当の社債満期が9月9日に到来する。ソナンゴルプロジェクトなどから入る代金でこれを償還しようとしている。
だが、この代金が入らず社債償還金を手当てできなければ法定管理は避けられない。これ以上銀行から資金を借りることはできない状況である。
切 迫した大宇造船海洋は、流動性を全力で確保するいわゆる「1兆ウォンプロジェクト」を稼動させた。ソナンゴルプロジェクトがパンクする可能性に備え、流動 性資金1兆ウォンを確保しようというもの。大宇造船海洋関係者は「万一の事態に備え他の発注元と代金先払い案を議論するなど特段の措置を進めている」と話 しているという。

もし、こうした状況が続くならば造船業に対する資金支援はそれこそ底の抜けた瓶に水を注ぐようなものとなる。

<安値受注の海洋プラント51基もまだあり>
過去の安値受注の造船業不良の「元凶」に挙げられる海洋プラントプロジェクトはどれだけ残っているのだろうか。
造船会社のドック別に発注・引き渡し現況を整理した「シップヤードオーダーブック」6月号と造船業界によると、6月27日現在で造船大手3社がまだ引き渡していない海洋プラント数は合計51基と確認されている。
大宇造船海洋が15基、
現代重工業が16基、
サムスン重工業が19基。

大宇造船海洋は、うちドリルシップが9基で最も多い。米国のボーリング会社バンテージドリリングが発注して昨年キャンセルした6000億ウォン台のドリルシップ1基は除いている。
ドリルシップは海底の原油・ガスを抽出するドリリング装備を搭載した船舶形の設備。今回問題になったソナンゴルの2基をはじめ米国の原油ボーリング会社トランスオーシャンが発注したドリルシップ1基が6~7月ごろに引き渡される予定となっている。

問題はドリルシップの場合、引き渡し直前まで安心できないという点。最後の引き渡し時点で船舶建造代金の半分以上を受け取る「ヘビーテール契約」が多い。
発注元の資金が、逼迫していれば受け取り時期を延期する可能性がある。ソナンゴルの2基も試運転まで完了しているが、代金の80%に当たる1兆637億ウォンを引き渡し時点で受け取る契約をしている。
こうなると造船会社の立場では金融費用が増えるなど流動性に影響を受けることになる。

日本資源探査最大手の国際石油開発帝石(INPEX)が発注した浮体式石油生産・貯蔵・積出設備(FPSO)も今後問題になる恐れのあるプロジェクトだ。契約規模が20億ドルに達する今年最大のプロジェクトで9月末に引き渡し予定だ。頻繁な設計変更などにより引き渡し時期の延期が続き、INPEX側は5月に大宇造船に対し「工事現場の非効率が深刻に懸念される」という意見を伝えたりもしている。
これに対し大宇造船海洋は「造船所で進行中の設備作業は終わった。2017年7月にオーストラリア現地に設置予定」と説明している。元は16年4月が工期だった。

大宇造船海洋は2018年まで相次いで納期が予定されている。「他の海洋プラントプロジェクトは2017年から2019年まで作業が分かれて進められるため工程に負荷がかかる状況ではない」というのが大宇造船海洋の説明となっている。

残余受注件数だけ見ればサムスン重工業も海洋プラントの割合が高い。ただ今年から来年初めに引き渡すプロジェクトが多数。

<サムスン重工業の海洋プラント>
サムスン重工業が「来年さえ過ぎれば海洋プラントリスクから自由になる」と話す背景がここにある。
サムスン重工業が2017年までに引き渡し予定の海洋プラントは9基で、契約金額は100億ドル規模と膨大だ。
(海底油田の新規プロジェクトでの生産はコストが高く、現在の原油やLNGの価格では採算が取れないという)
サムスン重工業はリスクが大きいプロジェクトの場合にはすでに財務諸表に反映したという。
昨年、シェルが発注しオーストラリアのブラウズ地域に設置される予定だった5兆ウォン台のFLNG3基は3月に契約がキャンセル。
ペトロナスチャリガリが発注したマレーシア・ロタン地域FLNG2号機も引き渡しが延期されている。

サムスン重工業は「ペトロナスプロジェクトの場合、工程率により設備代金を受け取る契約を締結しておりサムスン重工業の立場ではリスクは大きくない。
契約が解約される場合には発注元の損害も大きく、スケジュールが多少延期されても契約取り消しにつながる確率は低い」と説明している。1~3月期の事業報告書によると、このプロジェクトの現在の工程率は26%となっている。

こうした事態に、サムスン重工業社外理事も報酬返上。
サムスン重工業は6月27日理事会を開き、社外理事全員が自発的に報酬の一部返上を決議した。返上金額は報酬の30%ほどになる予定。サムスン重工業はすでに社長100%、役員30%、部長20%の報酬返上を決めている。この日の理事会では8月19日の臨時株主総会招集も議決した。臨時株主総会では株式数限度を増やす案件を上程する予定。
資金を調達するため有償増資をするには先に株式数を増やさなければならないため、有償増資の事前準備作業と分析される。有償増資規模や時期は決定されていない。

<現代重工業の海洋プラント>
現代重工業も海洋プラントは比較的リスクから自由。現在の状況では引き渡し遅延や契約取り消しの可能性が高いプロジェクトはないという。
現代重工業は「下半期引き渡し予定の海洋プラントプロジェクトも100%引き渡し遅延や契約取り消し問題はなく納期を合わせられるだろう」と自信を見せている。

現代重工業、現代尾浦造船、現代三湖重工業の現代重工業グループの造船3社の場合、船舶の受注残高271件に比べ海洋プラントは多くない。
現代尾浦造船の場合、修理造船所から出発したので海洋プラントを建造しない。現代重工業と共同営業をする現代三湖重工業はドックに海洋プラントが割り当てられておらず建造中の海洋プラントプロジェクトはない。

<海洋プラントの引き取り問題>
大宇造船海洋出身のイ・ミョンホ韓国海洋大学海洋プラント運営学科教授は「原油安が続き海洋プラント発注会社が契約を破棄しようときっかけをつかもうとしている。
一部プロジェクトの場合、発注元が無理な要求を出し原油価格が反騰するのを待つ状況。この過程で韓国の造船会社にまた大規模な不良債権が発生する可能性も排除することはできない」と話しているという。
以上、韓国紙など参照

日本の商社も資源やエネルギー関連投資につき、決算で膨大な減損処理を行っている。資源エネルギー安は中国経済の低迷に由来するものであるが、原油に至っては価格低迷下でもイランやイラクで増産が続けられており、大きく価格反転する要素は見つからない。 
それどころか英EU離脱で、EUと英国経済は低迷下、底割れする危険性も指摘されている。需要先がこうした状況に、資源エネルギー価格が大幅に上昇回復する根拠に乏しく、最近の50ドル台の攻防(WTI)から下押ししている。世界の総供給では、イラン・イラクの増産のほか、価格上昇(40ドルが境)で、アメリカのシェールオイルリグの再稼動における大増産、カナダのオイルサンドによる大増産が待ち構えている。コストの高い海底油田開発を現在進行させるのは問題ばかり。
そうしたことから、海洋プラントの受注残をまだ多く抱えている韓国造船業界の問題は、まだまだ続く。
 

[ 2016年6月29日 ]
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