分譲マンションは買いか 2016年の分譲マンション販売推移 首都圏は詳細
不動産経済研究所が発表した2016年の分譲マンションの販売状況は、全国では2014年4月からの消費税増税の駆け込み需要が発生した2013年をピークに3ヶ年減少し続けている。
その原因は、販売価格の高騰にある。増税前の2012年と2016年とを比較した場合19.2%高となっている。消費税増税の負担増からすればさらに高額購入となる。勤労者の所得が伸びない中、これだけの高騰は、高額所得者に需要が傾注してしまったともいえる。
特に首都圏では同期間比20.9%上昇し5,490万円となっている。しかし、前年比では販売が進まず平均価格は▲0.6%安くなってしまった。2014年から5千万円台に至り、購入層は富裕層頼りになった感が強いが、それも息切れしたと見られる。
また、マンション開発業者は、販売価格を抑えるため、戸当たりのマンション面積を少なくしており、1戸当りの平均販売価格は、前年▲1.3%減、▲58万円安の4,560万円と減少したものの、1m2当たりの平均単価は、前年比0.2%上昇、0.1万円上昇の65.5万円とまだ上昇している。
価格高騰の原因は、東日本大震災復興投資に続く全国での公共投資増・20東京五輪向けての再開発ラッシュに首都圏や主要都市では、特に地価が上昇、建設技術者の需給バランスが大きく崩れて建設労務費が高騰、資材まで高騰し、マンションの建設コストが大幅に上昇したことによるもの。建築コストの上昇局面で利益が低迷したゼネコンが、コストが若干下がっているにもかかわらず、異常に利益(空前の利益を計上)を取っていることも販売価格を押し上げる原因となっている。
バブル時代にも同じ現象が生じたが、勤労者の所得が大幅に上昇したことにより、高騰したマンションでもそれなりにニーズがあった。しかし、こん日では、アベノミクス政策により企業は、空前の利益を上げているにもかかわらず、賃金は上がらず、かつて賃上げをリードした組合は今では死滅し、政府や経団連が直々に企業に対して、賃金を上げて下さいと頭を下げ、お願いするという異常事態となっている。
これでは、富裕層が少々増えても分譲マンションの販売は限られたものになってしまうが、現在はまさにその状況下にある。
2016年は首都圏でも全国でも、ここ10年間で見ても最低の販売戸数となっており、首都圏の人口からして基礎的な需要数には達しているものと推定されるが、販売価格が販売戸数の頭を抑えつけているといえる。
表題に基づけば、分譲マンションは首都圏でも埼玉など地域によってはまだ購入価格レベルにあるものも多いが、条件面などクリアできるかは別。
2007~08年にかけてサブプライムローン問題・リーマン・ショックによる外資引き上げ、世界経済低迷での景気後退局面では、多くのマンション業者が整理淘汰され、分譲マンションは投げ売りされた。
しかし、当時は不動産ミニバブルが生じており、分譲マンションの供給戸数も06年155,866戸、07年133,670戸、08年にも98,037戸が全国で供給され供給過多状態にあった。
今回は現在のところ、供給も抑えられており、地価高騰+建築コスト高を及ぼしている20東京五輪景気・都心の再開発も含めその後収束しても、投売りは生じないものと見られる。
ただ、この景気を全国の隅々までとする政権の公共投資はいつまでも続けことはできず、景気後退から、建設労働者の需給バランスが崩れ、労務費コストは下がり、価格は下がることだけは間違いない。
それでも安倍政権が続けば、少しはプライマリーバランスを意識して、これまで借金増を牽制してきた麻生財務大臣も次の選挙には年齢からも出馬できず、牽制者もいなくなり、借金も財産との考え方から、景気の底支えのため、五輪後はさらに公共投資を大増させる可能性もある。
全国の分譲マンション販売戸数推移/不動産経済研究所
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首都圏
|
近畿圏
|
その他
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全国計
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2016年
|
戸数
|
35,772
|
18,676
|
22,545
|
76,993
|
前年比
|
-11.6%
|
-1.3%
|
20.5%
|
-1.4%
|
|
価格
|
5,490
|
3,919
|
|
4,560
|
|
2015年
|
戸数
|
40,449
|
18,930
|
18,710
|
78,089
|
前年比
|
-9.9%
|
0.6%
|
-3.9%
|
-6.1%
|
|
価格
|
5,518
|
3,788
|
|
4,618
|
|
2014年
|
戸数
|
44,913
|
18,814
|
19,478
|
83,205
|
前年比
|
-20.5%
|
-23.8%
|
-19.2%
|
-21.0%
|
|
価格
|
5,060
|
3,647
|
|
4,306
|
|
2013年
|
戸数
|
56,478
|
24,691
|
24,113
|
105,282
|
前年比
|
23.8%
|
6.1%
|
-3.5%
|
12.2%
|
|
価格
|
4,929
|
3,496
|
|
4,174
|
|
2012年
|
戸数
|
45,602
|
23,266
|
24,993
|
93,861
|
前年比
|
2.5%
|
15.1%
|
14.3%
|
8.4%
|
|
価格
|
4,540
|
3,438
|
|
3,824
|
|
2011年
|
戸数
|
44,499
|
20,219
|
21,864
|
86,582
|
前年比
|
-0.1%
|
-6.9%
|
18.5%
|
2.2%
|
|
価格
|
4,578
|
3,490
|
|
3,896
|
|
2010年
|
戸数
|
44,535
|
21,716
|
18,450
|
84,701
|
前年比
|
22.4%
|
9.8%
|
-21.3%
|
6.4%
|
|
価格
|
4,716
|
3,452
|
|
4,022
|
|
・前年比は販売戸数、価格は単位:万円、
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首都圏の分譲マンション販売戸数推移/不動産経済研究所
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|
都区部
|
都下
|
その他
|
首都圏
|
2016年
|
戸数
|
14,764
|
4,069
|
16,939
|
35,772
|
前年比
|
-20.1%
|
-25.0%
|
2.4%
|
-11.6%
|
|
価格
|
6,629
|
4,985
|
|
5,490
|
|
2015年
|
戸数
|
18,472
|
5,427
|
16,550
|
40,449
|
前年比
|
-11.1%
|
22.6%
|
-16.0%
|
-9.9%
|
|
価格
|
6,732
|
4,564
|
|
5,518
|
|
2014年
|
戸数
|
20,774
|
4,425
|
19,714
|
44,913
|
前年比
|
-26.7%
|
-0.2%
|
-16.8%
|
-20.5%
|
|
価格
|
5,994
|
4,726
|
|
5,060
|
|
2013年
|
戸数
|
28,340
|
4,436
|
23,702
|
56,478
|
前年比
|
46.1%
|
-8.8%
|
11.1%
|
23.8%
|
|
価格
|
5,853
|
4,238
|
|
4,929
|
|
2012年
|
戸数
|
19,398
|
4,863
|
21,341
|
45,602
|
前年比
|
-0.1%
|
14.1%
|
2.5%
|
2.5%
|
|
価格
|
5,283
|
4,318
|
|
4,540
|
|
2011年
|
戸数
|
19,410
|
4,262
|
20,827
|
44,499
|
前年比
|
-4.8%
|
23.6%
|
0.6%
|
-0.1%
|
|
価格
|
5,339
|
4,152
|
|
4,578
|
|
2010年
|
戸数
|
20,393
|
3,447
|
20,695
|
44,535
|
前年比
|
24.4%
|
4.1%
|
24.1%
|
22.4%
|
|
価格
|
5,497
|
4,152
|
|
4,716
|
|
・前年比は販売戸数、価格の単位は万円、首都圏は東京都・神奈川・千葉・埼玉県
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