アイコン 「光格子時計」開発 宇宙年齢160億年1秒も狂わない 東大理研の香取秀俊教授ら

●発表のポイント
 ・光格子時計を低温環境で動作させることで、世界最高精度の時計の再現性を実現。
 ・高精度化により、次世代の時間標準として「秒の再定義」の議論加速に期待。
 ・従来の時計の概念を超える計測ツールとしての応用や基礎物理学の新たな知見獲得へ前進。

●発表概要
 JST戦略的創造研究推進事業において、東京大学大学院工学系研究科の香取秀俊教授(理化学研究所主任研究員)、理化学研究所香取量子計測研究室の高本将男研究員らは、低温環境で原子の高精度分光(注1)を行う光格子時計を開発し、2台の時計が2×10の-18乗の精度で一致することを実証した。


この精度は、2台の時計で1秒のずれが生じるのに160億年かかることに相当する。これらは、次世代の時間標準の基盤技術となる重要な成果。

 光格子時計は、現在の「秒」を定義するセシウム原子時計の精度を1,000倍近く向上させる次世代の時間標準として、世界中で盛んに研究されている。
光格子時計の精度の向上を阻む最大の困難は、原子を囲む室温の壁から放射される電磁波(黒体輻射)が、原子の固有の振り子の振動数を変化させてしまうことだった。

 本研究グループは、低温環境でストロンチウム原子を分光することによって、黒体輻射の影響を1/100に低減する低温動作・光格子時計を開発しました。2台の時計を約1ヶ月間にわたって比較することで、それらが2×10の-18乗の精度で一致することを確認した。

 このような高精度な原子時計の実現は、「秒の再定義」を迫るだけでなく、従来の時計の概念を超える新しい応用の可能性を秘めている。
離れた場所にある2台の原子時計の重力による相対論的な時間の遅れを検出することで、土地の高低差を測る「相対論的な測地技術」への展開のほか、物理定数の恒常性の検証など、新たな基盤技術の創出や新しい基礎物理学的な知見をもたらすことが期待されるという。

光格子時計
 2001年、香取秀俊東京大学大学院工学系研究科准教授(当時)が考案した次世代の原子時計。まず、「魔法波長」と呼ばれる特別な波長のレーザー光を干渉させて作った微小空間(光格子)に、レーザー冷却された原子を1つずつ捕獲し、原子同士の相互作用が起きないようにします。次に、これらの原子にレーザー光を当て、光を吸収する「原子の振り子」の振動数を精密に測定する。この光の振動を数えて、1秒の長さを決める。光格子全体には多数の原子を捕獲できるので、それらの「原子の振り子」の振動数を一度に測定して平均をとることで、短時間で時間を決めることができるというもの。

 


開発中の低温動作光格子時計
開発中の低温動作光格子時計

 

[ 2015年2月10日 ]
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