アイコン インドネシア新幹線 中国融資せず工事進まず 運輸大臣更迭の認可も水の泡状態

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1110_02.jpgインドネシア新幹線については、新任のジョコ大統領に騙された日本であるが、その後は、順調にいっているどころか、遅々として工事が進んでいない。

インドネシア新幹線の区間は、ジャカルタ―バンドン間の142キロで、中国主導の企業連合に対し、認められた権利の期間は2019年5月31日から50年間。建設許可証の発行から3年以内に工事を終えることが定められている。これまで約55億ドル(約6160億円)とされていた総工費は、今年3月に引き下げられ51億3500万ドル(約5750億円)で確定している。
インドネシア政府の予算を使わず、政府保証もしない民間だけの投資金で工事費を充当することも明記されている。2019年5月末の営業運転開始を予定している。

インドネシア運輸省は、事業主体のインドネシア中国高速鉄道(KCIC、中国企業5社+インドネシア企業4社)から、今年2月までには建設申請書が提出されたが、中身が中国語で書かれチンプンカンプン、対応できないとして再申請させていたが、ジョコ大統領は運輸大臣を更迭し、新大臣により(2016年)8月18日、やっと高速鉄道全線の建設許可を発行させた。

<中国側から今の段階での融資断られる>
これを受け、8月末にKCICの社長(インドネシア側)が、総事業費51億35百万ドルの75%を融資予定の中国国家開発銀行と融資契約を締結するため北京へ飛んだ。しかし、締結を拒否され帰国している。(広報担当は、理由はコメントできないとしたが、9月までに融資は受けられると表明していた。しかし、10月も過ぎ11月になってもまだ融資を受けたとの声は聞こえてこない。)  
社長も、当然、事前に訪問日時と内容は伝えていたものと見られるが、中国側の異常な対応が気になるところだ。(比ドウテルテ並みに受注した時は冗談だった。やはり政府保証を・・・)
中国の受注のセールスポイントであった中国資金とインドネシアの民間資金での新幹線事業だったはずだが、肝心の中国側が資金を出し渋っている。

<工事遅延・資金繰り多忙に>
KCICは、中国国家開発銀行から融資を受け、遅れている民有地の買収や工事を急ぐ方針であったが、頭から暗礁に乗り上げている。それまでは、25%の費用を拠出することになっているインドネシアの4国営企業、特に国営建設会社のウィジャヤ・カルヤ(呼称:ウィカ)が、必要に応じて資金を出し、買収や工事を進めている。当然、進むわけがない。
インドネシア側の25%の拠出金1億28百万ドルにしても、国営企業であり内部留保から拠出できるものではなく、金利が10%ともされる市中銀行から借り入れに依存する。営業運転が遅れれば遅れるほど、早く借り入れれば早く借り入れるほど金利が嵩み、本来の事業運営すら困難になる。ストップすれば、これまでに費やした借金だけが国営企業に残ることになる。
現在のところ、インドネシア側の資金だけで運営されており、資金繰りからか元々許可されていた区間でさえ工事は遅々として進んでいない(2016年10月21日段階、現在も一緒だと思われる)。
終着駅バンドンは山間部に位置し、海抜700m、周囲を山に囲まれている。いくら工事が早い中国の建設会社であっても時間的にもたやすい工事ではない。

<最大のネックは用地買収>
インドネシア新幹線で最大の問題となるのが民有地の買収、中国のように土地は国有地ではなく、また、中国のように住民に僅かな金を一方的に払い、警察や暴力団を使って強引に追い出すことはできない。
中国はエチオピアでは鉄道含めインフラ投資に成功しているが、エチオピアは独裁国家であり、似た者同士の成功事例、インドネシアは言論の自由国で選挙もある民主主義国家である。

インドネシア政府は事業に関与しないとしている。工事末期に未買収地があったとしても立ち退きの強制執行も原則できないだろう。

中国案では、高速道路沿いの土地や国営農園(プランテーション)など入手が比較的容易な公有地に路線を通す計画であり、駅前などを再開発して周辺地価をつり上げ、民有地の買収や建設費用の一部をまかなう計画だという。そうした国有地中心の開発であってもまだ全体の6割しか買収は進んでいないという。民有地はほとんど手付かず状態だ。

現実には民有地の所有者の買い取り希望価格は、KCICが提示する価格より数倍高く、交渉にこぎ着けた場所はまだほんの僅かだという(山間部の田畑では10倍以上の開きがあるという)。
そうした中、ジャカルタ市内のターミナル駅予定地は、空軍用地と重なっており、軍は国防上の理由から明け渡しを拒否している(国会でも問題になっている。軍に許可なく駅舎を計画立案するという如何わしさ)。
先般は、そのハリム空軍用地内で、KCIC関係者が無断でボーリングしていたところを発見され、5人が逮捕される事件も発生している。

<ジョコ政権が運輸大臣を更迭>
2019年5月開業は次回大統領選に合わせたもの
運輸省は当初、KCICが約140キロの全線路の用地買収を完了させるまで建設許可を出さない方針だった。ところが、次期大統領選がある19年までの完成を目指すジョコ大統領が、担当省庁に働きかけ、1月の起工式直前にワリニ周辺の5キロ分だけ許可を出した。
さらに、7月27日には残りの認可を渋っていたジョナン運輸相(実業家出身、まだ就任して8ヶ月)を更迭し、ブディ・カルヤ・スマディ氏(空港運営会社の社長)を就任させた。スマディ運輸大臣は就任してから1ヶ月も経たない8月18日に建設を認可した。
ジョコ大統領は「高い技術力を誇る高速鉄道の建設は私の夢だ」と関係者に語り、実現に強い意欲を示しているという。

<中国側も不安視>
結果は、習政権により解決されようが、融資する中国国家開発銀行にしてもインドネシア側の対応に途惑っているともいう。
中国側もインドネシアの高速鉄道工事に関しては、中国の高速鉄道開発事業のように、いとも簡単に住民を追い出し、超大型重機を何台も導入して、簡単に線路を敷設しまくることができる体制にはないことぐらい理解する必要があろう。
民間資金で完成させるとしているが、予算が超過すれば、インドネシア国営企業の負担も増し、実質倒産することさえあろう。そうなればさらに工事は遅延することになる。

<ジョコ大統領の計算>
就任して1年、まだ人気が高いジョコ大統領であるが、中国寄りのメガワティ(元大統領)が党首の政党の人物でもある。メガワティは娘を政権に入閣(一番若い大臣)させるなど、力を行使している。

ジョコ大統領は、次回大統領選に向け、新幹線工事がストップもしくは遅延すれば、国の資金は使わなくとも国営企業4社が参画している事業であり、批判が集中することになる。
そのためには幾分の批判があろうと買収に応じない地主に対しては、強制執行に入ることもありうる。しかし、大きな問題になれば次期選挙は危うい。そうしたリスクを避けるためにも、中国側と裏取引してでも新幹線を2019年5月に営業運転させるため習詣でが必要となる。

中国関係では、院政を敷くメガワティが、手下のリニ国営企業相を使いまた何か画策するものと見られる。(リニは、中国のどんでん返しの受注決定前に中国へ訪問していた。日本が長年かけて作ったインドネシア新幹線計画実施図面を中国側に渡した張本人ともいわれている)

高速鉄道インドネシア・中国(KCIC)には、中国企業5社とインドネシア側で最大の出資者である国営建設会社の「ウィジャヤ・カルヤ(呼称:ウィカ)」、それに高速道路管理・運営会社の「ジャサ・マルガ」、国営農園開発の「ペルクブナン・ヌサントラ8」、インドネシア国営鉄道の「KAI」の4社が出資している。ウィカは当高速鉄道から16兆7,000億ルピア受注する予定となっている。
1ルピアは0.0080円、1ドルは102~105円(大変動中)
以上。

 

[ 2016年11月10日 ]
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