【群馬】2040年に介護職員9341人不足へ 特養は高整備率でも「人手不足で空床」
群馬県の介護問題が、「施設をどれだけ整備するか」から「介護を担う人をどう確保するか」という段階に移りつつある。
群馬県の第9期高齢者保健福祉計画によると、県内の介護職員は2022年度時点で3万8,481人。2026年度には介護サービスを支えるため4万428人が必要になるのに対し、供給見込みは3万9,271人で、1,157人が不足する。
さらに2040年度には需要が4万6,326人まで増える一方、供給は3万6,985人まで減少し、需給ギャップは9,341人に拡大する見込みだ。
一方、特別養護老人ホームは全国でも整備率が高く、県内の入居申込者は減少傾向にある。それでも県は、介護人材の不足などから必要な職員を配置できず、空床が生じている施設があることを明らかにしている。
数字でみる群馬県の介護問題
| 指標 | 2026年度 | 2040年度 |
|---|---|---|
| 介護職員需要 | 40,428人 | 46,326人 |
| 介護職員供給 | 39,271人 | 36,985人 |
| 需給ギャップ | 1,157人不足 | 9,341人不足 |
| 要介護・要支援認定者 | 109,375人 | 130,239人 |
| 認定率 | 18.7% | 21.4% |
2040年、介護職員は9341人不足
群馬県が示した介護人材の需給推計では、2026年度から2040年度にかけて介護職員の需要は4万428人から4万6,326人へ14.6%増える。
これに対して供給見込みは3万9,271人から3万6,985人へ5.8%減少する。需要が増える方向と供給が減る方向が同時に進むため、需給ギャップは1,157人から9,341人へ約8.1倍に拡大する計算だ。
ただし、9,341人という数字は「2040年に必ず不足する人数」ではない。県の推計では、供給見込みについて今後実施する施策の効果を織り込まず、近年の入職・離職動向と将来の生産年齢人口減少などを反映した「現状推移シナリオ」を使用している。
逆に言えば、現在の傾向が続いた場合に生じる介護人材の不足規模を示した数字となる。
高齢者3.6%増に対し、要介護認定者は19.1%増
介護需要側の増え方にも特徴がある。
県計画による第1号被保険者数は2026年度の58万6,022人から2040年度には60万7,181人となり、増加率は3.6%にとどまる。
これに対し、第2号被保険者を含む要介護・要支援認定者は10万9,375人から13万239人へ19.1%増加する。認定率も18.7%から21.4%へ上昇する見込みだ。
高齢者人口そのものの増加以上の速さで介護を必要とする人が増える構図で、認定者数の増加率は第1号被保険者数の増加率の約5.3倍となる。
2025年国勢調査でも群馬県の人口は186万5,934人と2020年から3.8%減少した一方、65歳以上人口の割合は31.4%と過去最高となった。75歳以上人口は5年間で15.2%増え、県人口の18.3%を占めている。
特養は全国でも高い整備率、それでも空床
群馬県の介護問題を考えるうえで注目されるのが、特別養護老人ホームの状況だ。
県は第9期計画で、圏域による差はあるものの、群馬県は全国でも特別養護老人ホームの整備率が高いとしている。要介護3以上の認定者は増加している一方、有料老人ホームなど他の居住系サービスの整備も進み、特養の入居申込者数は減少傾向にある。
さらに県は「介護人材の不足などから運用上必要な介護職員の配置ができず、空床が生じている施設もある」としている。
このため、広域型特養について県所管分の新たな整備を原則控え、既存施設の空床活用を進める方針を採っている。2026年度末の特養整備目標は、広域型と地域密着型を合わせて1万3,410人となっている。
つまり群馬県では、介護施設の「ベッド数」だけを増やせばサービス供給力が増えるとは限らなくなっている。施設があっても、必要な職員を配置できなければ、そのベッドを十分に動かすことができない。
訪問介護需要は2040年までに20.5%増
在宅介護でも人材確保は大きな課題となる。
県計画では、訪問介護のサービス量を2026年度の年間315万8,011回から2040年度には380万3,992回へ増えると見込んでいる。増加率は20.5%となる。
群馬県は2026年度のホームヘルパー人材確保対策で、訪問介護などについて「人材不足が喫緊の課題」と明記した。経験の長いホームヘルパーが経験の浅いヘルパーへ同行して指導する事業に対し、1人につき最大15万円を補助している。
施設介護だけでなく、住み慣れた地域で生活を続けるための在宅介護でも、サービス需要の増加と担い手確保を同時に進める必要がある。
南牧村の高齢化率は68.9%、地域差も大きい
県内の人口構造には大きな地域差もある。
2025年国勢調査では、65歳以上人口の割合は県平均31.4%に対し、南牧村68.9%、神流町64.9%、下仁田町56.6%となった。山間部では人口の半数以上を65歳以上が占める自治体もある。
介護保険料にも差があり、第9期の第1号介護保険料基準額は35市町村の加重平均で月6,203円。最高は川場村の7,600円、最低は草津町の3,600円で、2.11倍の差がある。
高齢化率、介護需要、サービス提供体制、保険料の状況は市町村ごとに異なるため、「群馬県平均」だけでは地域の介護問題を捉えにくくなっている。
外国人材と介護テクノロジーも人材不足対策へ
県は人材不足への対応として、外国人介護人材の確保・定着や介護テクノロジーの導入も進めている。
2026年度には外国人介護人材を受け入れる事業所の生活支援、日本語学習、翻訳機、多言語対応の介護記録ソフトなどを対象とする補助制度を実施。海外での人材獲得活動についても支援している。
2026年5月には「群馬県介護生産性向上取組方針」を策定し、介護テクノロジーを導入する事業所の割合について、国が定めた2029年度90%という目標の達成を目指す方針を示した。
介護職員を増やすだけでなく、ICTや介護ロボットなどによって限られた人員でサービスを維持することも、人材不足対策の一部になっている。
第10期計画へ、介護インフラの焦点は「人」
現行の第9期群馬県高齢者保健福祉計画は2026年度で終了する。県はすでに2027年度から始まる第10期計画の策定に向け、2025年12月から2026年1月に県民意識調査を実施している。
群馬県では人口が減少する一方、要介護・要支援認定者は増え、訪問介護の利用量も増加する見通しとなっている。その反対側で、現在の傾向が続けば介護職員の供給は減少する。
特養の整備率が高くても人材不足で空床が生じるという県計画の記述は、この問題を象徴している。今後の群馬県の介護政策では、施設数や定員だけではなく、「既存の介護インフラを実際に動かせる人材を何人確保できるか」が一段と重要になりそうだ。





