「猫にまたたび」ネコは植物のマタタビを与えると、葉や実を好み体にこすりつけるなどの特有な反応を示すことが知られ、60年余り前の研究では「マタタビラクトン」という物質が関係しているとされてきたが、岩手大学などの研究グループは、ネコに作用する物質をマタタビから「ネペタラクトール」を同定したと発表した。この物質は蚊を寄せつけないこともわかり、マタタビをこすりつける反応は、ネコが蚊を避けるよう進化してきた結果なのではないかとしている。
岩手大学生化学研究室の宮崎雅雄教授と名古屋大学などの研究グループは、最新の技術で改めて分析したところ、マタタビに含まれる「ネペタラクトール」という物質が「マタタビラクトン」よりもネコに強い作用を引き起こしたほか、葉に含まれる量も10倍以上あり、ネコに作用する主な物質は「ネペタラクトール」であることがわかったという。
人工的に合成した「ネペタラクトール」をネコのほか、ネコの仲間であるヒョウの一種やジャガーに与えると、同じように体をこすりつける反応が見られたという。
さらに「ネペタラクトール」は蚊が嫌う傾向があったということで、マタタビを体にこすりつける行動は、蚊を寄せつけないようネコの祖先が進化の過程で獲得した性質なのではないかと推測した。
宮崎教授は「今回の物質は以前の手法では分離できなかったとみられる。ネコの祖先が茂みで狩りをする時に、蚊を避けるよう進化した結果かもしれない」と話している。