アイコン (3/5)世界最大のワクチンメーカー 世界が注目するインドSII社/どんな会社


<中世にインドへ大移動したゾロアスター教信者の末裔>
プーナワラ会長は、インドで「ワクチン王」と呼ばれ、一代で成功した企業家として尊敬されている。1941年にインド中部のマハーラーシュトラ州の大都市プネーで馬を飼育する「パールシー」の家で生まれた。
パールシーはペルシャ人という意味で、インドでは紀元7世紀のササン朝ペルシャ帝国(224~651年)がイスラム勢力に敗れてイラン高原のイスラム化が始まったことから、インド方面へ大移動したゾロアスター教徒とその子孫たちを指す。インドに定着したパールシーは言語・服装などはインドに同化したが、宗教的アイデンティティを守り、独自の共同体を運営してきた。
そのため、インド特有のカースト制度やヒンドゥー教・イスラム教・シーク教徒間の宗教対立、民族主義からは比較的自由な集団となっている。
西欧の文物を積極的に受け入れ、外国人とうまく協力してきたとされる。

首相を務めたインディラ・ガンディー(1917~84年)の夫でジャーナリスト・政治家のフィローズ・ガンディー(1942~60年)、タタ・グループの創業者・ジャムシェトジー・タタ(1839~1904)、世界的ロックスターのロックバンド「クイーン」のフレディ・マーキュリー(幼名・ファルーク・バルサラ、1946~1991年)、インドの独立運動団体で政党の国民会議の共同創設者であるペロゼシャ・メフタ(1845~1915年)などが著名なパールシー。

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<古代ペルシャ帝国のキュロス2世の名前が由来>
パールシーの一部は居住地域に「ワラ」を付けて姓とするが、プーナワラはプーナ出身という意味。実際、プーナワラ会長の本拠地プネーの昔の名前がプーナ。プーナワラ会長のファーストネームのサイラスは、紀元前6世紀アケメネス朝を創始し、ペルシャ(それ以前はメディア)という国の名前を最初に付けたキュロス2世の英語式表記。
旧約聖書のエズラ記やイザヤ書、ダニエル書などに新バビロニア王国を滅亡させ、当時のバビロンに連れてこられて住んでいたユダヤ人を解放し、故郷に帰し、ユダヤ人がエルサレム第2神殿を建てることができるように支援したと記録されている「バーサ(ペルシャ)王コレシュ」とはキュロス2世のこと。

<馬の飼育家の家に生まれ、馬の血清納品からワクチン事業へ>
インディアTVによると、プーナワラ会長の父親は競走馬を育てる飼育係で、馬の牧場を運営していた。プネー大学で商業を専攻したプーナワラ会長はインドのような社会主義国家において競馬には未来がないと判断し、他の仕事を探すことにした。
プーナワラ会長は少数のエリートより多数のための製品を作ることが、より賢明だと判断した。
それで、最初に血清からワクチンを作る製薬会社に馬を売り、間もなく自身がワクチン事業に参入した。
馬は1901年のノーベル生理学・医学賞受賞者のドイツの生理学者エミール・ベーリングが開発した抗血清(antiserum)生産のために多く活用された。
抗血清は、特定の抗原に対抗する特異抗体が血清(Serum:血液から白血球・赤血球・血小板などを除去した液体成分)として免疫療法に使用される。

プーナワラ会長は1966年にインド血清研究所(SII)という会社を設立し、2年間の研究・開発の末、破傷風を治療する血清を製造し、すぐに破傷風予防ワクチンを作った。
SIIは現在、容量基準で世界最大のワクチン製造会社へと発展している。
プーナワラ会長は2019年に英オックスフォード大学から名誉博士号を授与されており、以前から同大と関係も持っている。



 

[ 2021年2月26日 ]

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