東アジアの安全保障環境が大きく揺れ動いている。今回のレーダー照射問題、中露共同飛行、そして中国による“音声データ”公開は、偶発的な摩擦ではなく戦略的圧力の一部として理解すべきだという見方が広がっている。
米国務省は「中国の行動は地域安定に寄与しない」と批判し、これを単なる日中間の問題ではなく安全保障上の懸念として扱い始めた。台湾海峡や南シナ海での強硬姿勢に続き、日本周辺での照射事件もその延長線上にあると認識されている。「米日同盟はかつてないほど強固」という表現は、対中抑止を意識した政治的メッセージだ。
中国の動きは異例の密度を示している。空母「遼寧」の艦載機がわずか4日間で140回発着し、ロシア爆撃機との広域共同飛行も行われた。日本周辺では中露計8機が編隊飛行を実施し、これは通常訓練を超えた示威行動とみられる。特にロシアと中国が“セットで動いた”ことは重要で、ウクライナ戦争で孤立するロシアと中国の利害が一致し始めている構図が浮かぶ。両国は日本の防空体制や米日同盟の反応を探る圧力テストを行っている可能性が高い。
レーダー照射はミサイルロックオンの前段階にあたり、偶発的な誤認では片付けられない。大規模訓練や共同飛行と並行して発生していることから、軍事行動の一部として組み込まれた可能性がある。
さらに中国がSNS「X」で公開した音声データには疑義が集中している。声質やイントネーションの不自然さ、論点のずれ、真偽を証明できない点などが指摘されている。これは典型的な情報戦であり、国際世論の主導権確保、日本の主張を疑わしいものに見せる狙い、さらにはASEANや欧州への印象操作が含まれているとみられる。
日本側は防衛相の言葉通り「示威行動」と評価するのが妥当だ。注目すべきは行動の量だけでなく質の変化であり、発着訓練の頻度増加や共同飛行の範囲拡大、日本の防空識別圏を探るような飛行が増えている。
今回の一連の動きは、中国の示威行動の強度増加、ロシアとの軍事連携深化、米国の日本防衛関与の明確化、日本周辺が多極軍事圧力の実験場になりつつあるという構図を示している。東アジアは米中露三者が直接関与する新たなフェーズに入り、過去の尖閣緊張や南シナ海問題とは質的に異なる局面に突入した。
結論として、今回の事案は偶発事故ではなく戦略的圧力の一部である。大規模訓練、中露共同飛行、レーダー照射、音声公開は一連のメッセージであり、日本と米国の結束を試し、地域の軍事ルールを揺さぶる戦略とみるのが自然だ。
東アジアは今後、力の示威が常態化する新たな安全保障局面に入ったといえる。