アイコン 丸和/上場廃止へ その軌跡と今後を一挙公開

丸和は、親会社ユアーズとともに現在ADRを申請して金融機関の同意をえているが、債権者である金融団に対し依頼しているDES=借入額を株式へ転換などが認められることを前提に、来年5月親会社のユアーズを存続会社として合併すると発表した。
その際、上場している丸和の株はユアーズの株式に交換されるとしており、同社へ取材では、上場も廃止されるとのことであった。
(DES=債務の株式化=金融機関からの借入金を一部、自社が新たに発行する株に転換してもらうこと。負債が減り、自己資本が増加するという財務効果がある)

丸和は1946年創業、79年には24時間営業店舗を設けるなど成長を遂げ、1990年には福証に上場も果たした。しかし、2000年代に入り、同社が市場とする北部九州・山口県にはイオン・イズミ(ゆめタウン)など県外組や地元サンリブがGMSの超大型店を相次ぎオープンさせ、比較的都心型の同社の店舗は、こうした郊外型GMS店に顧客を奪われ、経営状態が窮地に陥っていった。
2005年1月には広島のユアーズ傘下となり再建されることになる。小が大を飲み込んだ。ユアーズから社長含む経営陣が送り込まれ、丸和はそれまで再建中であったが、08年4月には何を間違ったのか、こともあろうに詐欺会社として破綻した石原商事を買収するなど流通の邪道に走り、再生中の同社はその後の消費不況にさいなまれ、ジリ貧状態に陥った。
2010年1月期には▲27億43百万円(売上高377億50百万円、自己資本率9.3%⇒4.7%)の赤字を露呈、成り行きが注目された。
一方ユアーズも、下記表の通り不況から採算が悪化しており、借入金の返済に窮していた実情もある。ユアーズの財務内容は一見して丸和より良好に見えるが、丸和を含む投資有価証券が、49億円も計上されておりその限りではない。

本年6月14日、第四半期の決算について、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象が記載され、窮地に至っていることが表面化。
6月30日、丸和とユアーズは経営再建のADRを申請。両社はADRにおいて、金融機関に対して、借入金の返済猶予、借入金の一部株式化を依頼して再建に当るとしている。 

<丸和とユアーズの決算内容>
ユアーズの2009年9月期決算 主要科目 単位/百万円
流動資産
3,964
流動負債
10,212
  (現預金)
1,382
 (短期借入金)
2,360
 
 
 (1年内長期借入金)
2,322
固定資産
18,254
 (社債)
312
  (有形固定資産)
9,600
固定負債
9,100
  (投資有価証券)
4,900
 (長期借入金)
7,150
  (子会社株式)
621
 (社債)
1,485
 
 
純資産
2,966
総資産
22,278
負債+純資産計
22,278
有利子負債:136億29百万円。
 

決算/百万円
06/9
07/9
08/9
09/9
売上高
39,310
41,090
41,701
40,003
営業利益
1,028
910
678
308
経常利益
1,122
1,050
810
466
当期純利益
160
309
169
35
純資産額
2,780
2,761
2,930
2,966
09年9月期の支払金利3億55百万円

 
<丸和の決算推移>①
丸 和連結/百万円
2008年1月期
2009年1月期
2010年1月期
売上高
39,724
40,282
37,780
営業利益
667
-43
-110
経常利益
363
-313
-457
当期利益
140
15
-2,743
総資産
21,511
27,169
25,008
自己資本
2,520
2,532
1,167
資本金
2,909
2,909
3,605
有利子負債
12,333
13,114
12,851
自己資本率
11.70%
9.30%
4.70%
 
<丸和の決算推移>②
連結/百万円
2002/1
03/1
04/1
05/1
売上高
50,343
48,449
45,871
43,695
経常利益
93
112
49
25
当期純利益
-313
107
-335
-71
純資産額
5,964
5,926
5,793
8,778
 

連結/百万円
06/1
07/1
08/1
09/1
2010/1
売上高
39,518
36,428
39,724
40,282
37,780
経常利益
-1,294
426
363
-313
-457
当期純利益
-6,190
20
140
15
-2,743
純資産額
2,360
2,380
2,520
2,532
1,167

 
<丸和の店舗状況>
丸和の地区別店舗名 2010.1.31現在
福岡県(27 店舗)
小倉店、飯塚店、曽根店、井堀店、黄金店、東門司店、
門司店、折尾店、朽網店、海老津店、恒見店、陣山店、
本城店、湯川店、三萩野店、長行店、吉田店、苅田店、
折尾浅川店、新田原店、伊加利店、香春店
ラ・パレット穂波店、行橋サンパル店、
ラ・パレット直方店、ラ・パレット神岳店、
ラ・パレット桜坂店
山口(24 店舗)
徳山店、長府店、滝部店、特牛店、綾羅木店、
川棚サンパル店、東長府店、仙崎店、板持店、古市店
生野店、長府才川店、人丸店、美祢店、秋芳店、菊川店、
豊田店、通店、阿川店、小串店、新下関店、南仙崎店、
東萩店、有帆店
長崎県(4 店舗)
桟原店、久田店、美津島店、仁位店
外食事業部(5 地区)
山口第1地区、山口第2地区、山口第3地区、
山口第4地区、北九州第1地区
その他事業(1 店舗)
TSUTAYA田川店
◎古市、阿川、小串、東長府、仁井店の閉鎖を6月発表済。
 
<丸和の借入先>
丸和の主要な借入先(平成22年1月31日現在)
金融機関名
借入額/千円
西日本シティ銀行(単位:千円)
6,362,950
みずほ銀行
1,968,225
商工組合中央金庫
1,775,495
三井住友銀行
1,201,567
日本政策投資銀行
104,000
熊本ファミリー銀行
56,250
伊予銀行
45,000

<両社の今後>
今後については、来年5月合併したとしても、これまでのADR申請企業の動向からして、両社は不採算店などを閉鎖した場合の事業再生計画を練り、その結果を見て金融機関は両社が債務超過にならない程度のDESを了解するものと思われる。 

両社は来年5月合併して800億円企業となるが、採算の取れている店舗での事業再生であり、当初は計画通りに行くものと思われる。
しかしながら、その後既存店での収益が計画通り図れなかった場合はその限りではなく、ADR終結後を見た場合不安もよぎる。
今回のADR申請では、その後の運転資金の借入に支障をきたす可能性が高い債務免除は求めないとしているものの、財務体質が両社ともDESにより自己資本が改善されて少しは良くなるものの、決して良好までには至らず、抜本的な債務免除を含むADRでの再建計画が良かったのかもしれない。
 

[ 2010年9月16日 ]
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