アイコン 買収価格11兆円でもノー  英アストラゼネカが米ファイザーに対し 世界の医薬品業界M&Aの嵐

<米ファイザーの英アストラゼネカの買収 1070億ドル・・敵対的買収>
5月2日、英製薬大手アストラゼネカに買収を提案している米製薬大手のファイザーは2日、買収額を当初の約1000億ドルから約1070億ドル(約10兆9700億円)に引き上げると発表した。
当初は1株46.61ポンドで買い取るとしていたが、50ポンドに引き上げた。
これに対しアストラゼネカは同日の2日、ファイザーからの新提案を拒否するとの声明を出した。
ファイザーによるアストラゼネカへの買収提案に対しては、雇用や技術力維持の観点から英政界を中心に慎重論も根強い。ファイザーは提示額の引き上げでアストラゼネカの株主を味方に付け、買収実現を目指す。
ところが同日、アストラゼネカのパスカル・ソリオCEOは、「ファイザーは、パイプライン(新薬候補)の価値を過小評価している」との認識を示し、約11兆円の買収額では評価不足として拒否する構えを示した。(完全なマネーゲーム化している)

アストラゼネカ社:
1999年英国のゼネカ社がスウェーデンのアストラ社を吸収合併した会社。
バイオ・医薬品メーカー。
薬品は問題があった抗がん剤イレッサなどのがん、循環器、消化器、呼吸器、糖尿病など製造販売。
2012年度の売上高は280億ドル。
地域別の売上比率は、米国38%、西ヨーロッパ23%、新興市場21%、その他地域18%。

<独バイエルのメルク市販薬部門買収額140億ドル>
5月2日、独製薬大手バイエル は米製薬大手メルクの市販薬部門の買収で合意に近づいている。関係筋が1日明らかにした。取得価格は140億ドル程度になる可能性がある。
最終的な買収候補に残っていた英日用品レキット・ベンキーザー は前日、メルクと活発な協議はしていないことを明らかにしており、バイエルが最有力となっている。
同筋によると、バイエルとメルクは最終合意の条件を詰めており、数日中に発表する可能性がある。
両社の関係者はコメントを控えている。
関係筋によれば、メルクの市販薬部門をめぐっては米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G) 、独ベーリンガーインゲルハイム、スイスのノバルティス、仏サノフィ なども関心を示していた。

<加バリアント敵対的買収米アラガンを×アラガンはシャイアーに買収提案>
4月28日、米製薬会社のアラガンは、アイルランドの製薬会社シャイアーに再度、買収を提案する準備を進めている。買収価格は320億ドルを提示する予定。
アラガンはしわ取り注射剤「ボトックス」などを製造すね医薬品会社で、時価総額は約500億ドル。
アラガンに対して、カナダの製薬会社バリアント・ファーマシューティカルズ・インターナショナル が470億ドルでの敵対的買収案を提示している。
傘下入りを回避するために、アラガンはシャイアーに対し買収を前回提案したが、シャイアーは拒否していた。前回の提示価格は不明。

<ノバルティスとグラクソ>
4月25日、スイスの製薬大手ノバルティスは英製薬大手グラクソ・スミスクライン(GSK)の抗がん剤事業の買収は、約200億ドルの資産交換で合意。ノバルティスはまた、インフルエンザを除くワクチン事業を71億ドルにロイヤルティーを加えた額でGSKに売却する。

<そのほかの買収の嵐>
1月8日、アイルランドの医薬品のマリンクロットは、クエストコア・ファーマシーティカルズを56億ドルで買収。
1月8日、米特殊医薬品フォレストラボタリーズは、同業のアブタリスを29億ドルで買収。
1月23日、米医薬品卸最大手のマッケソンが同業の独セレシオの経営権(75%)を40億ユーロで取得。
2月3日、英医療機器大手スミス&ネフィーは、同業の米アースロケアを17億ドルで買収。
2月18日、米ジェネリックのアクタビスは米フォレストラボタリーズを250億ドルで買収。
2月24日、独バイエルは、ノルウェーのアルジェタを29億ドルで買収
2月、アイルランドのマリンクロットは、米カデンス・ファーマシーティカルズを13億ドルで買収。
4月22日、加バリアント・・ファーマシーティカルズ・インターナショナルは、アラガンに470億ドルで買
収提案。
4月25日、米ジェネリックのマイランは、スウェーデンの同業ネダを1株145クローネで買収提案。
4月28日、米特殊医薬品フォレストラボタリーズは、同業のフリエックス・ファーマシューティカルズを14億6千万ドルで買収と発表。

<動物医療分野もターゲット>
4月25日、米製薬大手イーライ・リリー も、スイスのノバルティスのアニマルヘルス事業を54億ドルで買収すると発表している。

<医療機器業界も>
4月25日、米国の整形外科向け医療機器大手ジンマー・ホールディングス は24日、米同業バイオメットを130億ドル強で買収することを明らかにした。ジンマーは当業界で現在4位だが、買収の暁にはJ&Jに次ぐ2位に浮上する。
1月8日、米J&Jは臨床診断事業をファンドに41億5千万ドルで売却。

<日本は>
日本の製薬各社は厚労省の歪な護送船団方式の政策により守られてきた過去がある。しかし、グローバル化により一機にそうした構造が崩れ、また、今では特許切れ問題も大きな課題となっている。
前門の虎(巨大外資)・後門のオオカミ(特許切れ)の様相だ。
特許切れの大型医薬品では、武田薬品の血糖値を下げる超大型糖尿病治療薬「アクトス」や前立腺がん治療薬「リュープリン」などなど・・・

<第一三共の失敗>
第一三共は、カントリーリスクも考慮せず、2008年にランバクシーを約5000億円で買収したが事実上撤退した。米国でのランバクシー虚偽申請に対するFDAの制裁金負担もあり、2012年期には4500億円の撤退損を計上した。

<武田薬品>
国内№1の武田薬品は、米国のバイオ技術企業ミレニアム・ファーマシューティカルズを88億ドル(現在の為替レートで約9100億円)で、2011年にはスイスのニコメド社を96億ユーロ(同1兆3700億円)で買収し、海外売上高比率を5割超にまで高めるなどしているが、世界のトップ10にも入っていない。

2014年4月には、武田薬品が、糖尿病治療薬「アクトス」に発がんリスクがあることを隠していたとして、訴えられた裁判で、米ルイジアナ州の連邦裁判所の陪審は、武田薬品に60億ドルの懲罰的賠償金支払いを命じる評決を下した。「アクトス」に関し武田薬品と提携する米イーライ・リリーには30億ドルの懲罰的賠償金支払いと、補償的賠償として147万5000ドルの支払いを命じた。
イーライリリー社は、「研究開発こそ企業の魂である」という理念の下、研究開発費はグローバル製薬企業の中でもトップレベルとされているが・・・。

<その他>
最近の医薬品の研究開発体制は、大学・公的研究所含む開発会社と販売会社が別々に機能してきている。製販分離の様相であるが、核心的な医薬品は自社製品が多い。
しかし、大学ベンチャーなどの開発者の医薬品に対して、開発段階から支援して、最終的に特許買取などにより販売権を取得する方が手っ取り早いと見ているようだ。

世界では、法外な価格で、製薬会社の大型開発医薬品もろともM&Aにより買収が盛んに行われている。手段は、通常のM&Aによる買収から、敵対的買収までいろいろだが、今や製薬会社もファンドが所持しているケースも増加しており、そのためファンドから購入するケースも増加している。

日本の製薬会社は、黒船到来で、合併を繰り返し、規模は大規模化しているが、世界から見れば、まだ中堅どころの域を出ていない。M&Aの世界ノウハウも乏しく第一三共の事例もあり、打って出る勇気もなく、このままだと埋没するおそれもある。
そうしたことから、武田薬品は社長に、元英グラクソの上級副社長を招聘して生き残りをかける。日本の医薬品業界は、少子高齢化人口減少の日本の現実から、再び、国内の大型合併も視野にあり、市場戦略も問う南アジア・太平洋域への進出が急がれるところとなっている。
日本という信用がまだ世界に存在するうちに。

人間の薬漬け治療は、日本だけではなく、先進国共通のもののようだ。
富裕層だけでも1億人を超えてきた中国が世界の医薬品マフィアのターゲットになっているが、既に500億円とも言われる英グラクソによる賄賂攻勢などで、世界大手医薬品マフィアによる一定のシェアは既に確立している。
中国は、反日だけに中国内に医薬品の製造工場でも作らない限り、日本の医薬品会社の営業進出は見込まれず、このままだと中国を除く東南アジアへシフトすることになる。
この地域の富裕層は欧米で治療しているものの、経済成長に伴い中流層の底上げ拡大から、日本の進出余地は大きい。ただ、大票田のインドネシアなどでは高官への賄賂だけではなく、宗教的な問題も潜むため、営業進出拡大には細心の注意が必要である。
 参考、ロイターなど多数。
 

[ 2014年5月 7日 ]
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