アイコン ポスコに米64.7%の反ダンピング課税  韓国鉄鋼業界の裏事情

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トランプ旋風により米国で広まる保護貿易主義。過剰生産で世界の鉄鋼市場を席巻する中国はじめ、日韓の鉄鋼製品もダンピングで槍玉に挙がっている。

6 月22日には米国際貿易委員会(ITC)が、日本製品のJEFスチールや新日鉄住金などに対して冷延鋼板に対してダンピング認定、その反ダンピング課税の 税率は71.35%。中国製品に対しても認定し、反ダンピング課税の税率は265.79%、補助金に関する相殺関税の税率は256.44%としている。

今回は、韓国勢が狙われた。元々国内消費量が限定されているものの、生産量は国内需要より多く、各国で中国製品と価格競争に至り、米国では、相次いで反ダンピング・相殺関税判定を受けている。

反ダンピング関税とは、輸出国の自国内市場価格と輸出品の価格の差額分だけ関税を賦課すること、
相殺関税とは、輸出国政府の不当な補助金支援に対して、それを相殺するための割り増し関税を賦課すること。

7月22日米商務省は、韓国製冷延鋼板に対して反ダンピング関税・相殺関税を賦課することを決定した。
ポスコに対し64.7%、現代製鉄に対しては38.2%の関税を課すことにしたもの。
その前日の21日にも、米国際貿易委員会(ITC)が、韓国製の耐腐食性鉄鋼製品に対して最大48%の反ダンピング関税を課すことを決定している。

これにより、ポスコは31.7%、現代製鉄は47.8%、東国製鋼は8.75%の関税をさらに課せられることになる。

米商務省は今年3月にも、韓国製角管(主に建築用に使われる四角パイプ)についても最高3.8%の反ダンピング関税を課している。

今回、反ダンピング判定を受けた冷延鋼板の場合、ポスコと現代製鉄が昨年、米国に輸出した量は16万トン(約1億3000万ドル=約138億円)程度。しかし、熱延鋼板などほかの主力輸出品に反ダンピング関税が広まることが懸念されている。
熱延鋼板についても米商務省の調査が行われている。
韓国が米国に昨年輸出した鉄鋼製品は合計395万5000トン(約31億ドル=約3300億円)に達する。
鉄鋼だけではない。米商務省は20日、サムスン電子とLG電子が中国で作り、米国に輸出した家庭用洗濯機でも、それぞれ111.09%と49.88%の反ダンピング予備関税を課している。

韓国貿易協会関係者は、「中国に進出した外国企業も原価など製品情報と関連して米政府から信頼されておらず、結局高い反ダンピング関税を課せられる」と語っている。

ポスコは、ベトナム・インドネシアに製鉄所を新たに設け、ブラジルでも東国製鋼のブラジル製鉄所に出資(鉄鉱石のヴァーレも資本参加)6月に生産稼動させている。
特に、ベトナムポスコの鉄鋼製品は、東南アジア経済の低迷、中国鉄鋼業界の過剰生産問題、安価な中国鉄鋼製品の韓国への輸出大幅増という環境の中、販売先に苦慮している。 
韓国のポスコ本体も同業者との価格競争に陥っており、競争力を持つ鋼材は別として、汎用品は国内勢・輸入外国勢との競争は激化している。

因みに、韓国鉄鋼協会によると2014年の韓国の鉄鋼需要は5,100万トンとされ、韓国での生産量は6,967万トン(WSAでは7,154万トン)、鉄鋼輸入量は前年比17.3%増の2,274万トン、うち中国産鉄鋼材が同比34.9%増の1,431万トンと過半数を占めている。それも中国からの輸入量は2015年にはさらに増加し、2016年は年初から中韓FTA締結でさらに増加しているものと見られる。
2014年を整理すると韓国の鉄鋼生産量と輸入量の合計量は9,241万トン、需要は5,100万トンであり、その差の4,141万トンが輸出に回されている勘定になる。安価な中国製品の輸入が増えれば増えるほど韓国産は輸出されることになり、さらにポスコはベトナム・インドネシアでの生産の販売先にも苦慮する事態に陥っている。
(2005年と2015年の比較における韓国の増産は、ポスコがほぼ独占していたものの2010年に現代自動車傘下の現代製鉄が、主に自動車用鋼板製造用の高炉2基(計2千万トン)を新設稼動させたことによる)

中国では、高度成長神話により生産設備が急拡大、不動産バブルの崩壊を受け、一機に需要低迷、そのギャップが安価な鉄鋼製品として輸出に回され、世界の鉄鋼市場を大混乱に陥れている。そのため、中国の鉄鋼生産は、政府主導で構造調整が施行され、調整局面にあった。しかし、昨年11月から相場が上昇に転じ、生産量も急回復させている。
それは、政府の梃入れにより主要都市の不動産価格が上昇に転じたことにある。しかし、一斉に増産したことにより、構造調整はないに等しくなっている(中国では多くの鉄鋼生産企業があり、構造調整の実態は当局との化かし合いとされる)。当然、価格を値下がりしている。

こうしたことから、2008年10月のリーマンショック後エネルギー革命により一早く景気回復させた米国に、中・日・韓国製の鉄鋼製品が集中し、特に中国鉄鋼製品は世界中で市場を荒らしまわっている。
こうしたことも、米国や英国が保護貿易主義に走る原因の一つとなっている。

 
世界の鉄鋼生産量 国別ランキング/千トン
 
 
2005
2015
増減率
15年シェア
1
中国
355,790
803,830
125.9%
49.5%
2
日本
112,471
105,152
-6.5%
6.5%
3
インド
45,780
89,582
95.7%
5.5%
4
米国
94,897
78,916
-16.8%
4.9%
5
ロシア
66,146
71,114
7.5%
4.4%
6
韓国
47,820
69,673
45.7%
4.3%
7
ドイツ
44,524
42,678
-4.1%
2.6%
8
ブラジル
31,610
33,245
5.2%
2.0%
9
トルコ
20,965
31,517
50.3%
1.9%
10
ウクライナ
38,641
22,933
-40.7%
1.4%
11
イタリア
29,350
22,022
-25.0%
1.4%
12
台湾
18,942
21,482
13.4%
1.3%
13
メキシコ
16,195
18,261
12.8%
1.1%
14
イラン
9,404
16,110
71.3%
1.0%
15
フランス
19,481
14,984
-23.1%
0.9%
16
スペイン
17,826
14,875
-16.6%
0.9%
17
カナダ
15,327
12,453
-18.8%
0.8%
18
イギリス
10,860
10,860
0.0%
0.7%
 
小計
996,029
1,479,687
48.6%
91.2%
 
その他
151,946
143,113
-5.8%
8.8%
 
世界総計
1,147,975
1,622,800
41.4%
100.0%
・出典:世界鉄鋼協会(WSA)
 


 

[ 2016年7月25日 ]
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