アイコン マイナス金利で実需なき投資急増、不動産に供給過多懸念

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直近の不動産市場で、住宅や老人ホームなどの供給過剰に対する懸念が浮上している。日銀のマイナス金利導入後、潤沢な資金が、唯一建設の原資として流れ込んでいるが、需要が相対的に弱く、空室率が急上昇してバブル崩壊のリスクが出ている。

政府内には、マイナス金利政策による利回り曲線フラット化が投資の様子見を招いているとの分析があり、日銀の「総括検証」とその後の対応策に注目している。

<不動産業者からの警告も>
「過度な金融緩和は、投機に使われるだけ」──。ここにきて不動産業界の中で、こうした見方が目立ってきた。
円高になる少し前までは、中国系外資の不動産投機が話題となっていたが、今は、国内でのマイナス金利が実需なき不動産投資を引き起こしているとの声が広がっている。

オフィスビルや高級マンションなどの建設に投機的な動きも見られ、「不動産市場は異様な状況」(不動産業者)といった声もある。
その動きが、経済データ上にも出てきた。
2016年4~6月期国内総生産(GDP)は、成長率全体が横ばいにとどまった中で、住宅投資は前期比5.0%増と高い伸びとなった。東日本大震災後の11年7~9月期の住宅復興時の5.5%増に近い増加率となり、2000年代に入ってこれほどの伸びはほとんど見られなかった。

多くの不動産業界関係者は、マイナス金利による住宅ローン金利の低下が原動力となっていると述べる。
日銀のマイナス金利導入後、今年2月から新設住宅着工が急速に伸びを高め、ここ3年間、年率換算で、80万戸台で推移してきた着工戸数は、6月には100万戸を超えた。

ただ、増加の主体はアパート・賃貸マンションなどの賃貸住宅物件。4~6月期の持ち家は前年比2.1%増だが、貸し家は11.0%増。分譲住宅は▲0.5%減となっている。

金融機関関係者は「住宅ローン金利の低下で、個人が家を建てるという需要より、相続税対策でアパートを建てるといった不動産業者と変わらない動きの方が強い」と指摘する。

8月ロイター企業調査でも、不動産業者から「住宅金利も史上最低レベルにあり、住宅取得環境としては悪くないが、消費者の動きは鈍く、なかなか受注が伸びない」との声が出ている。その半面で「相続対策の賃貸住宅建設で供給ばかり増えている」と、貸し家市場におけるバブル的な供給過多現象を嘆く声が聞かれる。

<老人ホームにも供給過剰の兆候>
また、政府が掲げる「一億総活躍社会」の実現に向けて老人介護施設の受け皿を50万人分以上に拡大する方針が打ち出され、金利低下の下で老人ホーム建設に拍車がかかった。
だが、実需の弱さを懸念する声が、ここでも広がりつつある。自由参入となっている高齢者向け住宅の建設で「一時入居金3千万円以上の高級老人ホームを11棟運営しているが、近年競争が激しくなっており、稼働率が落ちている。
サービス付き高齢者住宅も造り過ぎで競争が激しい」(不動産業者)と、供給過多の状況を懸念する見方が聞かれる。
「供給一本やりの国の政策は、完全に曲がり角に来ている」(別の不動産業者)との指摘もある。

第一生命経済研究所・副主任エコノミストは「実需に基づかない貸し家着工の増加が生む市場の歪みは、中長期的なリスク要因でもある」と述べている。

<政府内に金利曲線スティープ化求める声>
こうした状況について、政府内でも問題視する見方が出てきた。ある政府高官は「マイナス金利政策の悲劇は、イールドカーブが平たん化したことにある」と指摘。「将来にわたり金利も物価も上がらないことを感じて、企業の設備投資も個人の耐久財消費も急ぐ必要がないという状況を生み出してしまった」と述べている。

アベノミクスは、供給と需要の好循環を目指しているが、実需が出てこない中で供給ばかり増えれば、かつてのバブル崩壊の二の舞になりかねない。
足元の金利曲線は、10年ゾーンがマイナスに沈み、フラット化が進んでいる。日銀がこの先のどこかで追加緩和を決断し、マイナス金利を深掘りし、金利曲線の左側を押し下げても、右側が持ち上がってスティープ化するかどうかが不透明だ。
先の政府関係者は「9月の日銀の総括検証もあるし、日銀にもまだ工夫の余地があるのではないか」と述べ、検証後の金利曲線スティープ化に期待をつないでいる。

イールドカーブ=利回り曲線
残存期間が長いほど現金として返ってくるのに時間が掛かるというプレミアムがついたり、金利変動リスクが高まることなどから、通常は、利回りは残存期間が長くなるほど高くなり、イールドカーブは右上がりの曲線となる。しかし、現行は長期低金利下におけるマイナス金利導入によりイールドカーブが平たん化している。
スティープ化
短期債券と長期債券の金利差が大きくなると、イールドカーブの傾斜が急になること。

金融庁はすでに昨年暮れから、不動産向け融資を足元で急拡大させたり、不動産融資比率が高い一部の金融機関を対象に、リスク管理について聞き取り調査を始めている。

リーマンショック前にも同じ現象が生じ、アパートや賃貸マンション(1戸売りの投資用マンション含む)投資が花盛りだった。しかし、そうしたアパートやマンションも、新築の建物が次から次に建設されることから、集客競争から一部では入居率の悪化、家賃低下、資金ゼロや更新料ゼロの物件も出始めているという。
家賃補償会社をセットしていても最近では契約期間が短く、更新の見直し時期が短期間に訪れ、資産家や投資家の利回りも悪化しているという。
こうした事態が続けば、資産家や投資家は回収期間が長くなるばかりか、家賃収入では毎月の元利金の支払いをまかなえず、手出しする必要に迫られ、中には破綻する人や法人が出る可能性も高くなってくる。こうした融資金が、俗に言うサブプライムローンに類するものになっていく。
 

 
賃貸マンション・アパート・貸家の着工戸数3ヶ年四半期推移
 
13年
2014年
2015年
2016年
 
戸数
戸数
戸数
前比
戸数
前比
1~3月
72,892
86,622
82,771
-4.4%
87,731
6.0%
4~6月
84,960
89,668
94,411
5.3%
104,841
11.0%
7~9月
92,452
87,140
101,539
16.5%
0
 
10~12月
105,959
90,008
99,997
11.1%
0
 
年計
356,263
353,438
378,718
7.2%
192,572
8.6%
 
アパートや賃貸マンションの建築着工戸数は、マイナス金利に関係なく低金利下、昨年6月から再び増加が続いている。利益を内部留保し続ける企業に対して金融機関は貸出先がなく、不動産業者による相続税対策の資産家や投資家向けのアパートや賃貸マンションに対して、開発資金の融資から取得者に対するアパマンローンの貸付金が急拡大しているもの。
 
参考、世帯数及び住宅戸数の推移/国交省
区 分
平成25年
総世帯数(A)
52,453
普通世帯数(B)
52,298
住宅総数(C)
60,629
1世帯当たりの戸数(C/A)
1.16
人の居住する住宅(C-E)
52,102
持家比率
61.8%
空き家等
空き家(D)
8,196
D/C(狭義の空き家率)
13.5%
一時現在者のみの住宅
243
建築中の住宅
88
居住世帯なしの住宅(E)
8,526
E/C(広義の空き家率)
14.1%
(資料)「住宅・土地統計調査」(総務省) /単位:千戸
 
アパート経営の提案販売・賃貸マンションの一棟販売や戸別販売を行っている会社例
シノケングループ
連結/百万円
売上高
営業利益
経常利益
当期利益
13/12期実績
25,970
2,912
2,667
2,026
14/12期実績
39,724
4,740
4,302
2,886
15/12期実績
55,070
6,806
6,448
4,447
15年2Q
28,839
3,900
3,868
2,627
16年2Q
36,427
5,171
4,627
3,029
15年2Q/16年2Q
26.3%
32.6%
19.6%
15.3%
16/12期予想
72,000
7,500
7,100
4,800
16予/15比
30.7%
10.2%
10.1%
7.9%
・頭金ゼロで可能なアパート、マンション経営を提案営業している会社。
以上、報道、国交省等の資料参照
 
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[ 2016年8月20日 ]
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