空き家相続問題

アイコン 数字でみる空き家・相続問題 全国900万戸、取得の57.9%は相続 実家を放置すると何が起きる?


全国で増え続ける空き家。その背景を数字で追うと、人口減少や住宅の老朽化だけではなく、「親の家を相続した後、どうするか」という多くの家庭に共通する問題が浮かび上がる。

総務省の2023年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は900万戸に達し、空き家率は13.8%と過去最高になった。

さらに国土交通省の「令和6年空き家所有者実態調査」では、空き家を取得した方法の57.9%が相続だった。親が亡くなったり、介護施設などへ入所したりした後に残された住宅を、子ども世代が引き継ぐケースが空き家問題の大きな一角を占めている。

全国の空き家数
900万戸
2023年・過去最多
全国の空き家率
13.8%
総住宅数に占める割合
賃貸・売却用などを除く空き家
385万戸
総住宅数の5.9%
空き家の取得方法
57.9%
「相続」で取得
相続空き家の発生契機
58.3%
所有者の死亡
相続前の対策
23.0%
何らかの対策を実施

※空き家数・空き家率は総務省「令和5年住宅・土地統計調査」、相続関連は国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」。

スポンサーリンク
 
 

全国の空き家は900万戸 30年間でほぼ倍増

2023年10月1日時点の全国の空き家数は900万戸。2018年の849万戸から5年間で51万戸増えた。

総住宅数に占める空き家の割合は13.8%で、こちらも過去最高となった。1993年の空き家数は448万戸であり、30年間でほぼ2倍になった計算になる。

空き家数 空き家率
1993年 448万戸 9.8%
2013年 820万戸 13.5%
2018年 849万戸 13.6%
2023年 900万戸 13.8%

ただし、「空き家900万戸」のすべてが管理されず放置された住宅というわけではない。賃貸住宅の空室や売却中の住宅、別荘なども統計上の空き家に含まれている。

このうち、賃貸用、売却用、別荘などの二次的住宅を除いた空き家は385万戸。2018年の349万戸から37万戸増え、総住宅数の5.9%を占める。

空き家の57.9%は「相続」で取得

空き家問題と切り離せないのが相続だ。

国土交通省が2025年8月に公表した「令和6年空き家所有者実態調査」では、現在所有している空き家をどのように取得したか尋ねたところ、相続が57.9%で最多だった。

相続 57.9%
新築・建て替え 17.1%
既存住宅を購入 14.2%
新築住宅を購入 4.6%
贈与 2.3%
その他 3.8%

相続した空き家のうち、1980年以前に建てられた住宅は7割を超える。古い住宅を親から引き継ぎ、住む予定もなく、売却や解体も決まらないまま所有を続ける――こうした「実家の相続」が空き家問題の重要な部分になっている。

死亡だけではない 施設入所をきっかけに空き家になるケースも

相続空き家が発生した契機を見ると、所有者の死亡が58.3%と最も多く、転居が26.9%、老人ホームなどの施設への入居が11.3%だった。

つまり、空き家問題は所有者が亡くなった後に突然始まるとは限らない。高齢になった親が介護施設へ入り、それまで暮らしていた家に誰も住まなくなるところから始まる場合もある。

国税庁の「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」でも、一定の要介護・要支援認定を受けた人が老人ホームなどに入所していた場合、条件を満たせば従前の住宅を特例の対象とする仕組みが設けられている。

介護、施設入所、空き家、相続は、別々の問題ではなく、一つの家庭の中で連続して起きる可能性がある。

相続前に対策していたのは23%

国土交通省の調査では、相続によって取得した空き家について、相続前に何らかの対策をしていた割合は23.0%だった。一方、77.0%は特段の対策をしていなかった

対策の内容で最も多かったのは「被相続人との話し合い」で16.7%。遺言の作成支援1.8%、後見制度や家族信託の活用1.3%などを大きく上回った。

また、相続前に対策をしていなかった空き家では、活用や解体の予定を持たず、そのまま空き家として所有し続けている割合が、対策をしていた場合の約1.5倍となっている。

難しい制度を使う以前に、「親の家を誰が引き継ぐのか」「住むのか、売るのか、貸すのか、解体するのか」を家族で話しておくこと自体が空き家対策になることを示す数字といえる。

相続登記は義務化 昔の相続も対象

不動産の相続をめぐっては、2024年4月1日から相続登記の申請が義務化された。

相続によって不動産を取得したことを知った相続人は、原則としてそのことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要がある。

注意したいのは、2024年4月1日より前に発生した相続も対象になる点だ。それ以前に相続したことを知っていた不動産で相続登記が済んでいない場合は、原則として2027年3月31日までに登記する必要がある。

正当な理由がないまま申請義務を怠った場合は、10万円以下の過料の対象になる可能性がある。

相続人申告登記という方法も
遺産分割がまとまらず期限内に相続登記をすることが難しい場合などには、「相続人申告登記」により申請義務を履行する方法がある。ただし、相続した不動産を売却する際などには別途、相続登記が必要になる。

さらに2026年2月には、亡くなった人が登記簿上の所有者となっている不動産を一覧的に確認できる「所有不動産記録証明制度」も始まった。遠方の土地や家族が把握していなかった不動産を確認する際の新たな仕組みとなっている。

空き家を放置すると「管理不全空家」になることも

2023年12月施行の改正空家法では、倒壊など著しい危険がある「特定空家」になる前の段階として、「管理不全空家」に対する制度が設けられた。

放置すれば特定空家になるおそれがある住宅について、市区町村は所有者に指導や勧告を行うことができる。

国土交通省によると、2025年3月31日時点で、管理不全空家等に対する指導は3211件、勧告は378件行われている。

勧告を受けると、その土地について固定資産税などの住宅用地特例が適用されなくなる場合がある。

住宅用地特例では、200平方メートル以下の小規模住宅用地について固定資産税の課税標準を6分の1とする仕組みなどがある。したがって「空き家を放置すると固定資産税が一律6倍になる」と単純に表現するのは正確ではない。実際の税額は土地の評価額や面積などによって異なる。

相続した空き家を売る「3000万円特別控除」

相続した実家を売却する場合には、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最高3000万円を控除できる「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」がある。

制度は2027年12月31日までの譲渡が対象で、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること、売却代金が1億円以下であることなど複数の要件がある。

また、2024年1月以降の譲渡で、対象となる家屋や敷地を取得した相続人が3人以上の場合、控除の上限は1人あたり2000万円となる。

建築時期や耐震性、家屋の利用状況などにも条件があるため、「相続した空き家なら必ず3000万円控除できる」という制度ではない。売却を検討する場合は、税務署や税理士などへの確認が必要になる。

相続した土地を国に返す制度 帰属は3119件

相続した土地をどうしても利用できず、売却や譲渡も難しい場合の選択肢として、2023年に始まった相続土地国庫帰属制度がある。

法務省によると、2026年8月31日までの申請は5997件。このうち国庫への帰属が認められた土地は3119件となっている。

ただし、すべての土地を国が引き取る制度ではない。建物がある土地や、一定の崖、管理・処分を妨げる工作物などがある土地は対象にならない場合があり、承認後には原則として管理費用に相当する負担金も必要になる。

「不要な実家をそのまま国へ返す」制度ではなく、対象は土地であり、一定の条件を満たす必要がある点には注意が必要だ。

「実家をどうするか」は相続前から始まっている

全国900万戸という空き家問題を、一つの家庭から見ると姿はかなり違ってくる。

親が高齢になる。施設へ入る。家に住む人がいなくなる。その後、親が亡くなり、子どもが住宅と土地を相続する。しかし子どもは別の地域ですでに生活しており、実家に戻る予定はない――。

国土交通省の調査で空き家取得の57.9%を相続が占めるという数字は、空き家問題が行政や不動産業界だけの問題ではなく、多くの家庭が直面し得る「実家をどうするか」という暮らしの問題であることを示している。

売るのか、貸すのか、家族が住むのか、解体するのか、それとも管理しながら持ち続けるのか。選択肢は住宅の状態や土地の価値、家族関係、地域によって変わる。

ただ、相続が発生してから初めて考えるよりも、親が元気な段階から「この家を将来どうするか」を家族で確認しておくことには意味がある。

JC-NETでは今後、全国の数字だけでなく、長崎県や九州各県の空き家率、自治体の解体補助、空き家バンク、相続登記、売却できない実家など、地域ごとの空き家・相続問題を公的資料から追っていく。

主な出典:
総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」
国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」
国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法」関連資料
法務省「相続登記の申請義務化について」
法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」
国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

[ 2026年9月22日 ]
スポンサーリンク
  

 

 

スポンサーリンク
 

 

関連記事

 

 



PICK UP


破産・小口倒産一覧