長崎県の多頭飼育問題、苦情52件の9割超が猫 動物行政と福祉が連携して対応
長崎県で、犬や猫を飼いきれないほど増やしてしまう「多頭飼育」が、動物愛護だけでは解決できない地域課題となっている。
長崎県の令和6年度(2024年度)の統計では、多頭飼育に関する苦情は52件。このうち猫に関するものが48件を占め、全体の約92%に上った。
ただし、52件は「多頭飼育崩壊」の発生件数ではない。県議会では、多頭飼育の背景には福祉的な問題が潜んでいることが多いとの認識も示されており、県や長崎市では動物行政と福祉関係者との連携が進められている。
多頭飼育の苦情52件、猫が48件
長崎県がまとめた令和6年度の「動物による苦情・相談受付件数」によると、県立保健所と長崎市、佐世保市を合わせた多頭飼育に関する苦情は52件だった。
動物別では猫が48件、犬3件、その他1件。猫だけで全体の約92%を占める。
| 動物 | 2024年度 |
|---|---|
| 猫 | 48件(約92%) |
| 犬 | 3件 |
| その他 | 1件 |
| 合計 | 52件 |
同じ県統計では、2022年度の多頭飼育に関する苦情は83件だった。2024年度はそれより31件少ない。
ただし、苦情件数は実際に存在する多頭飼育世帯の総数ではなく、住民などから行政へ寄せられた件数だ。2023年度を含めた連続した推移も今回確認できていないため、この数字だけで多頭飼育問題そのものが減少傾向にあるとは判断できない。
また、猫に関する苦情が約92%を占めた理由についても、県統計からは特定できない。猫の方が多頭飼育になりやすい、あるいは苦情になりやすいと、この数字だけから断定することはできない。
「多頭飼育」と「崩壊」は別
犬や猫を複数飼っていること自体が問題なのではない。適切に管理できる範囲を超えて頭数が増え、十分な餌や医療、衛生的な飼育環境を維持できなくなった場合、多頭飼育崩壊につながることがある。
崩壊に至る背景は一つではない。不妊・去勢を行わないまま繁殖して頭数が増えるケースがある一方、飼い主自身に福祉的な支援が必要となるケースもある。
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適切に管理できる範囲を超える
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餌・医療・衛生管理などが難しくなる
↓
犬猫の飼育環境が悪化
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ふん尿・臭いなど周辺の生活環境にも影響
↓
動物と飼い主の双方への支援が必要に
背景に福祉の問題が潜むケース
長崎県議会では2023年、多頭飼育崩壊について「多頭飼育の背景には、福祉的な問題が潜んでいることが多い」と県側が答弁している。
県は、社会福祉協議会や民生委員の集まりなどで動物に関する相談窓口や保健所の役割を説明し、福祉関係者との連携を進める考えを示した。
多くの犬猫を別の場所へ移すだけでは、飼い主自身の生活上の課題が残る場合がある。飼育を続けられる状態なのか、生活面で支援が必要なのか、不妊・去勢や譲渡が必要なのかを関係機関が確認し、動物と人の双方を支援する視点が必要になる。
長崎市は福祉関係者と多頭飼育崩壊に対応
長崎市では、多頭飼育崩壊への対応に動物愛護管理センターや動物愛護ボランティアだけでなく、高齢者、障害者、生活困窮者に関わる相談支援事業者や介護事業者なども参加している。
市の協働事業では、犬猫の不妊・去勢や譲渡、適正飼養の指導・助言に加え、飼い主の生活環境改善や生活支援、周辺への生活環境被害の軽減にも取り組んでいる。
長崎市自身も、動物愛護団体と福祉関連事業者が協力することで、犬猫だけでなく飼い主の生活環境の改善や生活支援につながっていると評価している。
飼い主:生活環境改善、必要な生活支援へつなぐ
福祉:高齢者・障害者・生活困窮者の相談支援事業者や介護事業者と連携
地域:ふん尿や臭いなど周辺への生活環境被害を軽減
ただし、市の公表資料からは、こうした連携によって何件の多頭飼育崩壊を未然に防いだのかといった数値までは確認できない。
犬と猫が合計10頭以上なら届出
多頭飼育が深刻化する前に行政が状況を把握するため、長崎県では多頭飼養の届出制度を設けている。
2023年4月に施行された「長崎県動物の愛護及び管理に関する条例」では、原則として犬と猫を合計10頭以上飼っている場合に届出が必要となった。生後90日以内の犬猫は頭数から除かれる。
長崎市は独自条例による制度を設けており、犬と猫の合計が10頭以上となった場合、その日から30日以内に動物愛護管理センターへ届け出る必要がある。
| 地域 | 届出対象 | 主な窓口 |
|---|---|---|
| 県立保健所管内 | 犬・猫合計10頭以上 | 各県立保健所 |
| 佐世保市 | 犬・猫合計10頭以上 | 長崎県生活衛生課 |
| 長崎市 | 犬・猫合計10頭以上 | 長崎市動物愛護管理センター |
※犬や猫を10頭以上飼っていること自体が「多頭飼育崩壊」を意味するものではない。届出制度は、多頭飼養の状況を行政が把握するための仕組み。
県も2026年度、多頭飼育問題への対応を継続
長崎県は2026年6月の県議会で、動物愛護ボランティア団体などとの連携を強化するとともに、「多頭飼育問題への対応」に取り組む方針を示した。
届出を受けるだけで、すべての多頭飼育崩壊を防げるわけではない。本人や家族から相談がなくても、近隣住民や福祉関係者などが生活環境や飼育状況の変化に気づく場合がある。
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行政が飼育状況を把握
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適正飼養、不妊・去勢、譲渡などを検討
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必要に応じて福祉関係者とも連携
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動物と飼い主の双方を支援
「崩壊してから」だけでは解決しない
多頭飼育問題では、多数の犬や猫が保護される段階になって初めて表面化するケースだけを見ていては、対応が後手に回る。
長崎県が犬と猫の合計10頭以上を届出対象としたのは、多頭飼養の状況を行政が把握するための仕組みの一つだ。
さらに長崎市では、動物愛護部門だけでなく、高齢者や障害者、生活困窮者などを支える福祉関係者も多頭飼育崩壊への対応に加わっている。
動物の問題として始まった相談の背景に、人の生活上の課題がある場合もある。犬猫の頭数だけを見るのではなく、飼い主の生活状況も含めて早い段階で支援につなげられるかが、長崎県の多頭飼育問題を考える重要なポイントとなっている。
※主な資料:長崎県「動物による苦情・相談受付件数」、長崎県議会、長崎県動物の愛護及び管理に関する条例、長崎市「多頭飼育崩壊対応」協働事業資料、長崎県令和8年6月定例県議会知事説明。





