【大阪】サバ養殖ベンチャー「フィッシュ・バイオテック」が破産 NTTドコモとスマート養殖、前澤ファンド採択
サバの陸上養殖や人工種苗、養殖用飼料などを研究開発していたフィッシュ・バイオテック(株)(大阪府豊中市庄内東町、法人番号:6120901038716)が、2026年9月7日、大阪地裁から破産手続きの開始決定を受けた。
同社は2017年設立の水産養殖ベンチャー。マサバに特化し、人工種苗の生産・開発、陸上養殖設備、養殖管理システム、次世代飼料などを研究し、「サバ養殖のプラットフォーム」構築を目指していた。
NTTドコモとのICTを活用したスマート養殖実証や、前澤ファンドへの採択、経済産業省近畿経済産業局の「J-Startup KANSAI」選定など、スタートアップとして注目を集めていた。
一方、今回の破産について負債総額や具体的な事業停止時期、破綻に至った直接的な原因は、現時点で確認できる公表情報では明らかになっていない。
マサバの「種苗・エサ・システム」を研究開発
フィッシュ・バイオテックは2017年7月に設立された研究開発型の水産ベンチャー。
近畿経済産業局は同社について、養殖用マサバに特化し、「種苗」「エサ」「システム」の研究開発を行うR&D企業として紹介している。
天然魚を捕獲して育てるだけではなく、卵から稚魚を生産する人工種苗技術や、サバに適した飼料、ICTを利用した養殖管理などを組み合わせ、養殖事業者に一体的な技術を提供するビジネスモデルを目指していた。
2023年の同社資料では、事業内容として人工種苗、飼料開発、陸上養殖水槽設備、養殖管理システムの4分野を掲げている。
サバの陸上養殖、アニサキスなど海面養殖の課題に対応
同社が力を入れていたのが、サバの陸上養殖だった。
陸上の管理された水槽内で人工種苗からサバを育てることで、水温や水質などの飼育環境を管理しやすくし、海面養殖で課題となる自然環境の変化や寄生虫などのリスク低減を目指していた。
豊中市が公開した同社へのインタビューでは、種苗、餌、水槽設計、育成システムなどを一体的にパッケージ化し、将来的にはサバ以外の魚種にも技術を展開する構想が紹介されている。
近畿経済産業局の企業紹介では、選抜育種による種苗生産や、天然の輸入魚粉への依存を抑えたサバ専用飼料の研究などにも取り組んでいた。
NTTドコモとスマート養殖を共同実証
フィッシュ・バイオテックの技術開発で注目されたのが、NTTドコモとのスマート養殖の共同実証だった。
2020年、NTTドコモと鯖やグループは、ICTを活用した新たなサバ養殖モデルの確立を目的として業務提携。フィッシュ・バイオテックの養殖漁場を実証フィールドとして、水温、塩分濃度、溶存酸素量、給餌量、サバの成長状況などをデジタルデータとして収集した。
集めたデータを養殖管理クラウドで一元管理し、生存率や成長率、飼料転換効率などを分析。給餌量の最適化や養殖コスト削減につなげる仕組みの開発を進めていた。
従来、養殖業者の経験や勘に頼る部分が大きかった養殖管理をデータ化し、新規参入者でも利用できる養殖モデルとして全国展開することを目標としていた。
超音波で泳ぐサバの魚体長測定にも成功
2021年には、NTTドコモなどとの実証で、超音波式水中可視化技術を利用し、泳いでいる養殖サバの平均魚体長を非接触で測定することにも成功した。
従来はサバを生簀から取り出し、一匹ずつ測定する必要があったが、超音波を利用すれば魚に触れずに成長状態を把握できる。
魚体長のデータと水質情報などを組み合わせることで、給餌量の調整や出荷時期の予測など、より効率的な養殖管理につなげる狙いがあった。
養殖サバ「うめぇとろサバ」を出荷
共同実証で育てたサバは、2021年3月から「うめぇとろサバ」のブランド名で期間限定出荷された。
NTTドコモの発表では、このサバをフィッシュ・バイオテックが同ブランド名で出荷し、サバ料理専門店SABARの各店舗や関西を中心とする飲食店などで提供されたとしている。
この「うめぇとろサバ」は、フィッシュ・バイオテック自身による出荷が一次情報で確認できるブランド商品である。
一方で、同社が関わったサバブランドには「お嬢サバ」「よっぱらいサバ」などもあるが、これらは自治体や鉄道会社、生産者などとの共同プロジェクトであり、フィッシュ・バイオテック単独の自社ブランドとするのは適切ではない。
前澤ファンド、約4300件から一次産業で唯一採択
資金調達面でも注目を集めた。
近畿財務局の事例資料によると、2020年の新型コロナウイルス感染拡大時に資金繰りが厳しくなるなか、同社は「前澤ファンド」へ応募した。
約4300件の応募から選ばれた14社のうち、第一次産業分野では唯一の採択企業となり、2021年から資金拠出を受けたとされる。
大阪府の新事業支援事例でも、応募4331件のなかから第一次産業で唯一採択された企業として紹介されている。
「J-Startup KANSAI」選定、水産スタートアップとして注目
同社は近畿経済産業局のスタートアップ支援プログラム「J-Startup KANSAI」にも選定されていた。
2022年度の選定では応募枠5社の一つに入り、投資家などによる評価で仮想出資額1億4000万円相当を獲得した。
その後もJ-Startup KANSAIの選定企業として掲載され、2026年に公表された企業一覧にもフィッシュ・バイオテックの名称が確認できる。
サバ養殖という一次産業にICTや研究開発を組み合わせたフードテック・水産ベンチャーとして、行政やスタートアップ支援機関からも注目されていた企業だった。
2023年資料では10人、資本金等3億6450万円
同社が2023年に作成した会社資料では、メンバーは10人(パート・アルバイトを含む)と記載されている。
同資料では資本金について3億6450万円(準備金を含む)としており、人工種苗、飼料開発、陸上養殖水槽設備、養殖管理システムの研究開発体制を整えていた。
ただし、これらは2023年時点の会社公表値であり、破産開始決定直前の従業員数や資本金等の状況を示すものではない。
2022年6月期は約1億3080万円の最終赤字
過去の決算公告では、2022年6月期に約1億3080万円の純損失を計上していた。
同時点の利益剰余金は約2億4630万円のマイナス、総資産は約1億9755万円だった。
研究開発型のスタートアップでは先行投資によって赤字となるケースもあり、この2022年6月期の決算だけをもって、2026年の破産原因と判断することはできない。
その後の売上高、損益推移、直前期の財務状況については、今回確認できる公開情報では明らかになっていない。
「鯖や」「SABAR」は別法人 今回の破産対象ではない
ブランドやグループ企業との関係には注意が必要だ。
NTTドコモの2020年発表では、鯖やグループを構成する法人として、株式会社鯖や、株式会社SABAR、フィッシュ・バイオテック株式会社の3社をそれぞれ別法人として記載している。
株式会社鯖やはサバ製品の製造・卸売など、株式会社SABARは「とろさば料理専門店SABAR」の飲食店運営、フィッシュ・バイオテックはサバ養殖・種苗・飼料などを担当していた。
したがって、今回破産手続きの開始決定を受けたのはフィッシュ・バイオテック株式会社であり、株式会社鯖やや株式会社SABARが破産したことを意味するものではない。
フィッシュ・バイオテックの会社概要
| 法人名 | フィッシュ・バイオテック株式会社 |
|---|---|
| 法人番号 | 6120901038716 |
| 設立 | 2017年7月7日(会社公表) |
| 主要事業 | 人工種苗、飼料開発、陸上養殖水槽設備、養殖管理システムの研究開発 |
| 主な分野 | サバ陸上養殖、スマート養殖、FoodTech、水産R&D |
| 従業員規模 | 10人(パート・アルバイト含む、2023年会社資料) |
| 資本金等 | 3億6450万円(準備金含む、2023年会社資料) |
| 主な実績 | NTTドコモとのスマート養殖実証、前澤ファンド採択、J-Startup KANSAI選定 |
| 破産開始決定 | 2026年9月7日・大阪地裁 |
| 負債総額 | 確認できず |
| 破綻原因 | 確認できず |
同社公式サイトは現在、準備中・メンテナンス状態となっている。ただし、サイトの表示状態だけから事業停止日や破産原因を特定することはできない。
負債総額や直前期の業績、今回の破産に至った具体的な経緯については、今後判明した場合に追記する。
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