【長崎】石木ダム420億円の行方 反対住民との最終会合終了、平田知事が年内判断へ
長崎県と佐世保市が東彼杵郡川棚町で進める石木ダム建設事業について、平田研知事は2026年10月24日、建設予定地の住民から意見を聞く最終会合を開いた。7月から計8回にわたって行われた意見聴取を終え、知事は年内をめどに川棚川水系河川整備計画の変更が必要かどうか判断する方針を示している。
石木ダムは治水と佐世保市の水源確保を目的とする事業で、2024年の計画見直しによって総事業費は285億円から420億円に増額され、完成予定は2032年度末まで延長された。
一方、佐世保市では10月26日、降雨によってダムの貯水率が回復したとして、9月から続いていた南部水系の減圧給水制限を解除することを決定した。水源確保の必要性や公共事業の費用負担、建設予定地で暮らす住民の生活をめぐり、県の今後の判断が注目される。
反対住民9世帯16人が最終会合に参加、事業見直し求める
10月24日に長崎県庁で開かれた「第8回石木ダムに係る有識者の意見を聞く場」には、建設予定地の川原(こうばる)地区に暮らす反対住民13世帯のうち9世帯16人が参加した。
住民側は、先祖代々暮らしてきた土地で生活を続けたいという思いを伝えるとともに、ダムに頼らない治水対策、代替水源の活用、佐世保市の水道管の漏水対策などを検討するよう求めた。
石木ダム事業は1975年度の国の事業採択から50年以上が経過している。2019年には土地収用法に基づく手続きによって反対住民の宅地などの所有権が県に移ったが、現在も住民が現地で生活を続けている。
平田知事は、これまでの意見聴取について、技術的な問題だけでなく、住民の生活や社会的な側面も踏まえて論点を整理する考えを表明。川棚川水系の河川整備計画を変更する必要があるかどうか、年内をめどに判断する方針を示した。
総事業費285億円から420億円へ、完成は2032年度末に延長
石木ダムの総事業費は、2024年の事業再評価で従来の285億円から420億円へと135億円増額された。増加率は約47.4%となる。
完成予定も2025年度末から2032年度末へ7年間延長された。
県は事業費の増額について、測量・設計費の増加や基礎処理範囲の追加、工事現場の安全対策、資材価格や人件費の上昇、建設業の働き方改革に伴う工期延長などを要因として挙げている。
この420億円は変更後の計画総事業費であり、2026年10月時点で実際に支出した金額を示すものではない。
420億円のうち利水事業147億円、佐世保市負担は約82億円
事業費の内訳については、2025年6月3日の参議院国土交通委員会で政府が説明している。
それによると、総事業費420億円のうち、洪水被害の軽減などを目的とする治水事業の負担分は273億円、佐世保市の水源確保に関係する利水事業の負担分は147億円となる。
利水事業147億円の内訳は、国からの補助金が約65億円、佐世保市の負担が約82億円と説明されている。
| 区分 | 事業費・負担額 | 内容 |
|---|---|---|
| 治水事業 | 273億円 | 洪水調節など |
| 利水事業 | 147億円 | 水道用水の確保など |
| うち佐世保市負担 | 約82億円 | 利水事業147億円の内数 |
| うち利水事業への国補助 | 約65億円 | 利水事業147億円の内数 |
| 総事業費 | 420億円 | 2024年変更後の計画額 |
佐世保市の約82億円は、420億円とは別に追加される費用ではなく、利水事業147億円に含まれる負担額である。
ただし、この負担額が水道料金などにどのように反映されるかについては、財源構成や水道事業の経営状況によって異なる。2025年の国会答弁でも、具体的な水道利用者の負担については佐世保市が判断する事項とされていた。
佐世保市は日量4万立方メートルの新規水源確保を計画
石木ダムは川棚川流域の治水対策に加え、佐世保市の水道用水を確保する目的を持つ。
佐世保市は、安定した水源の不足を補うため、石木ダムによって日量4万立方メートルの新規水源を開発する計画を掲げている。
2026年9月30日に開かれた平田知事による意見聴取では、佐世保市の宮島大典市長が、安定した水源を十分に確保できない状況が企業誘致などの産業振興にも影響していると説明し、事業の早期完成を求めた。
佐世保商工会議所や石木ダム建設促進佐世保市民の会も、知事に早期完成を求める要望書を提出している。
一方、建設に反対する住民側は、佐世保市の将来の水需要予測や水道施設の漏水対策、ダム以外の水源確保策を改めて検証するよう求めている。
新規水源の必要性を検討する際には、将来の一日最大給水量だけでなく、既存水源の安定性、水道管の更新や漏水削減、人口・産業動向なども論点となる。
佐世保市が10月26日に減圧給水制限を解除、ダム貯水率が回復
こうしたなか、佐世保市は2026年10月26日、南部水系で実施していた第一次減圧給水制限の解除を決定した。
市では7月の梅雨明け以降、少雨によってダムの貯水率が低下。9月1日に渇水対策本部を設置し、同月3日から下の原ダムを水源とする南部地域で、水道管の水圧を下げる減圧給水制限を続けていた。
しかし、10月23日から25日にかけて台風30号の接近に伴うまとまった降雨があり、下の原ダム周辺で129ミリ、中部水系の山の田ダム周辺で129.5ミリの降水量を記録した。
10月26日午前0時時点の貯水率は、下の原ダムが92.0%、中部水系の5ダム合計が97.4%まで回復した。
これを受け、佐世保市は市内すべての水系の渇水レベルを通常時に引き下げ、渇水対策本部を解散。水道管の水圧を通常に戻す作業は10月27日に実施する予定としている。
ただし、今回のまとまった降雨による貯水率の回復と、将来にわたる安定水源の確保は別の問題である。直近の給水制限解除だけで石木ダムの必要性の有無が決まるものではなく、長期的な水需要と渇水への備えについて引き続き検証が必要となる。
県は河川整備計画の変更要否を年内判断へ
石木ダム事業をめぐっては、治水と利水の必要性、長期化による事業費の増加、事業の代替案、建設予定地の住民の生活など、複数の課題が残っている。
長崎県は2026年7月から、有識者や県議会議員、川棚町長、佐世保市長、地元住民などの意見を聞く場を順次開催してきた。
10月24日の最終会合を終え、平田知事はこれまでに示された意見を整理し、石木ダム事業の前提となる川棚川水系河川整備計画を変更する必要があるかどうか、年内をめどに判断する方針だ。
2024年の計画変更で示された総事業費420億円と2032年度末の完成目標をどう扱うのか、治水・利水の根拠や住民の意見が今後の判断にどのように反映されるのかが焦点となる。
なお、現時点で知事による最終判断が示されたわけではない。





