【長崎】災害時のペット同行避難を追う 佐世保4・諫早3・大村2か所、長崎市では台風時に利用実績
台風や大雨、地震などの災害時、犬や猫を飼っている人にとって「ペットを連れてどこへ逃げるか」は、人自身の避難行動にも関わる問題だ。
長崎県内では、ペットとの同行避難を受け入れる避難所の整備が進んでいる。佐世保市では4か所、諫早市では3か所、大村市では2026年度に2か所、島原市では1か所をペット同行避難に対応する施設として案内している。
長崎市でも実際の利用実績がある。2024年8月の台風10号では、旧江平中学校と中央公民館にペット避難の受入場所を設け、4世帯8人、小型犬5匹が避難した。
ただし、「ペットと同行避難できる」ことは、避難所で飼い主とペットが同じ部屋で生活できることを意味しない。自治体や避難所によって、ペットの管理場所、事前連絡の必要性、ケージや餌、水の持参など条件は異なる。
同行避難対応
同行避難所
2026年度
2024年台風10号
「同行避難」は同じ部屋で暮らす意味ではない
まず注意したいのが「同行避難」という言葉だ。
環境省は、同行避難を、災害が発生した際に飼い主がペットと一緒に安全な場所まで避難する「避難行動」としている。
つまり、ペットを連れて避難所へ行けることと、避難後に飼い主とペットが同じ部屋で生活できることは別の問題になる。
実際に長崎県内でも、人の居住スペースとペットの管理場所を分ける自治体が多い。鳴き声や臭いだけでなく、動物が苦手な人やアレルギーを持つ人への配慮も必要になるためだ。
「ペット可の避難所だから一緒の部屋に入れる」と考えて避難すると、現地で想定と異なる可能性がある。平時から自治体ごとのルールを確認しておく必要がある。
長崎市、台風10号で4世帯8人・小型犬5匹が避難
長崎市では、ペットを連れた避難について実際の運用実績が確認できる。
2024年8月に接近した台風10号では、市内の旧江平中学校と中央公民館でペット避難を受け入れた。
長崎市の防災対策特別委員会資料によると、この2施設を利用したのは4世帯8人で、小型犬5匹が避難した。
同じ台風では市内の避難者がピーク時1,265人に達し、最大118か所の避難所が開設された。ペット避難はその中の一部施設で行われた形となる。
長崎市は現在も、災害時にはペットとともに危険な場所から同行避難するよう呼びかけている。一方、一般の指定避難所では、避難者とペットが同じ居住スペースで過ごすことは認めていないとしている。
自宅が安全な場合の在宅避難や、親戚・知人宅、地域避難所、ホテルなども避難先の選択肢として挙げている。
佐世保市は4か所 人とペットの動線も分離
佐世保市では、避難所を開設する際、市内4か所の地区コミュニティセンターで一般避難者に加えてペットとの同行避難を受け入れている。
| 自治体 | 確認できた受入場所 | 主な条件・特徴 |
|---|---|---|
| 佐世保市 | 4か所 | 人とペットのスペース・動線を分離。ケージ持参 |
| 諫早市 | 3か所 | 事前連絡制。人とペットは別スペース |
| 大村市 | 2か所 | 2026年度。気象状況に応じ臨時開設 |
| 島原市 | 1か所 | 避難前に市へ電話連絡。ケージ等を持参 |
佐世保市の対象施設は、世知原、清水、三川内、山澄の各地区コミュニティセンター。
人の避難スペースとペットの管理スペースを分け、人と動物の動線が交わらないよう運用する。小型犬や猫はケージ内で管理し、ケージに入れられない犬については屋外の指定場所につなぐこととしている。
餌や飲み水、排せつ物の処理などは飼い主自身が行い、感染症が疑われる動物については利用できない場合がある。
諫早市は3か所 避難前の連絡が必要
諫早市は、市民センター、多良見支所、高来会館の3施設をペット同行避難所として案内している。
同行避難の場合も、人とペットは避難所内の別々のスペースで過ごす。
特徴的なのは、避難前に施設への事前連絡を求めていることだ。ケージやキャリーバッグがなければ受け入れできず、餌、水、首輪、トイレ用品、ケージの目隠し用タオルなども飼い主が持参する。
市はペット用の避難セットを準備しないとしており、避難所が開けば必要な物資が用意されているという前提では利用できない。
大村市は2026年度2か所 ペット用品の備蓄なし
大村市は2026年度、緑のふれあい館とボートレース大村の旧外向け前売り発売所の2施設をペット同行避難所としている。
常時開設されるわけではなく、気象情報などを考慮して臨時的に開設し、防災ラジオやSNSなどで知らせる。
受け入れ対象は、犬や猫、げっ歯類、鳥類など比較的小型で、ケージで管理できる動物。特定動物や特定外来生物、大型動物、多数の動物など管理が難しい場合は対象外となる。
ケージ、餌、水を飼い主が準備し、ふん尿処理を含め世話は飼い主自身が行う。市はペット用の備蓄品を準備しておらず、最低5日分以上のフードや水などを平時から準備するよう呼びかけている。
島原市は専用1か所 まず市へ連絡
島原市は、有明農業者トレーニングセンターをペット同行に対応する避難所として指定している。
利用する場合は、まず市民安全課へ電話連絡したうえで、現地で受付を行う。
ペットだけを預けることはできず、飼い主と一緒の避難が前提となる。ケージやキャリーバッグ、数日分のフード、水、薬、トイレ用品などを持参し、世話は飼い主が責任を持つ。
同じ「ペット同行避難」であっても、自治体によって事前連絡が必要か、受入施設が何か所あるか、どの動物まで受け入れるかなど条件が異なっている。
県は獣医師会と災害時の動物救護協定
避難所での受け入れは市町が中心となる一方、大規模災害時の動物救護については県レベルの仕組みも整えられている。
長崎県は2016年11月、長崎県獣医師会と「災害時における愛護動物の救護に関する協定」を締結した。
大規模災害時には、獣医師会が負傷した被災動物への応急手当、被災動物の保護や健康相談、情報提供などを支援する。
県は「避難所等におけるペット受入れ対応マニュアル」も作成。避難所や仮設住宅へのペット受け入れについて市町と調整し、ペットの飼育支援について県の保健所などがフォローする体制としている。
県獣医師会や地域の動物愛護団体も、県動物救護本部を構成する関係団体として位置付けられている。
課題は「避難所がある」だけでは足りない
長崎県は2026年6月、県内市町のペット同行避難状況を改めて整理し、平時から自分が住む地域の避難先を確認するよう呼びかけている。
実際には、すべての避難所がペットを受け入れるわけではない。専用施設だけを指定する自治体もあれば、気象状況に応じて臨時開設する自治体、利用前の電話連絡を求める自治体もある。
さらに多くの避難所では、フードや水、ケージ、薬、トイレ用品といったペット用品を飼い主自身が準備することが前提となっている。
災害発生後に初めて「どこへ行けばいいのか」と調べ始めても、停電や通信障害、自治体サイトへのアクセス集中で情報を得られない可能性もある。
ペットを飼っている家庭では、避難所の場所だけでなく、そこがペット同行に対応しているのか、開設条件は何か、ケージが必要か、ペットの管理場所は屋内か屋外か、何日分の餌や水が必要かまで確認しておくことが重要になる。
ペットがいるから避難しない、を防ぐために
佐世保市は、ペットの飼い主が避難をためらったことによる被災を防ぐことを、同行避難を受け入れる目的の一つとしている。
ペットを自宅に残せないため危険な場所に人も残る、あるいは避難所へ行ったもののペットを受け入れられず車中泊を選ぶ――。こうした状況を減らすには、避難所を設けるだけでなく、どこで、どのような条件なら受け入れられるのかを平時から分かる形にしておく必要がある。
長崎市では台風時に実際の利用実績が生まれ、佐世保、諫早、大村、島原でも具体的な受入場所が設定されている。
次の課題は、災害時に飼い主が迷わずその制度を利用できるかだ。人の避難計画の中に、ペットの避難計画もあらかじめ組み込んでおくことが求められる。





