奥村組は2日、平常時の微小な振動から大地震時の大きな揺れまで対応できる『オールラウンド免震(R)』を開発したと発表した。
本技術を適用した日進工具開発センターにおいて、平常時における微振動に対する高い抑制効果を確認できた。また、2021年2月13日の福島県沖地震発生時においては優れた免震効果を発揮して人的・物的被害を防ぐとともに、地震収束後、平常時の建物機能を速やかに回復できたことから、BCP(事業継続のために対策)対策としての有効性も確認できた。
【背景】
一般に、免震建物は地震時の安全性と事業継続性を飛躍的に向上させるが、交通振動などの微小な振動については、非免震建物よりも影響を受けやすい傾向がある。そのため、精密機械を用いた生産や研究を行う施設などにおいては、加工精度や生産性の低下を招くおそれがあり、免震構造を採用できないケースがあった。
そうした中で、切削工具のリーディングカンパニーである日進工具から、同社の精密・微細加工拠点となる「開発センター新築工事」を受注した。
日進工具は、東日本大震災により保有施設に大きな被害を受けた経験から、免震構造の採用を切望、そのニーズに応えるべく、平常時の微振動にも抑制効果を発揮する免震システムを開発した。
【概要】
当社は、免震装置と微振動対策ダンパーを組み合わせた免震システム『オールラウンド免震(R)』を開発し、日進工具開発センターに導入した。
オールラウンド免震は、平常時の微振動に対しては微振動対策ダンパーの高い抵抗力により振動を抑制する。また、震度5弱以上の地震時には、微振動対策ダンパーが免震性能を損ねないように、微振動対策ダンパーと建物を繋ぐせん断ピンが破断して建物から分離される機構を備え、通常の免震建物として機能する。
開発センターは2019年11月に完成し、以降、常時微振動計測および地震観測を行っており、その結果から、オールラウンド免震は通常の免震に比べて平常時の微振動を大幅に低減し、微振動対策として有効であることを確認した。
また、2021年2月13日に発生した福島県沖地震(M7.3、最大震度6強)では、開発センターは震度5弱の揺れに襲われたが、優れた免震効果を発揮し、1階床の最大加速度が地下ピット床の最大加速度の1/3程度に緩和され、建物および建物内の精密工作機械などは無被害だった。
その際、想定どおりに建物から分離された微振動対策ダンパーは、地震の収束後、工場職員がマニュアルの手順に従ってすぐに復旧し、平常時の機能を速やかに回復した。
このことから、オールラウンド免震がBCP対策に有効であることが確認できたとしている。
以上、
地震で必ず問題になる生産停止、早期に立ち上げるためには、研究施設や半導体・電子産業も含め低層の工場にもこうした免震構造の建屋と機械の免震設置が必要となっている。
今では微振動対策ダンパーは竹中など多くの大手ゼネコンが開発している。