世界大手海運会社の造船、入港料に大きな影響なし 関税爆弾、造船発注半減
今年4月、米国は中国製や中国船籍の船舶に対してトランプ入港料を徴収するとして10月14日すら実施。これに対して中国も米船籍の船舶に対して入港料を10月14日から徴収すると対抗している。
米入港料は億単位だが年々増加する計画、こうしたことから、新造船の発注は韓国へ大きく傾注していると思いきやそうでもないようだ。
世界3大海運会社はスイス(世界シェア20%)・デンマーク・フランスに籍を置いているものの、米国の措置に大慌て。しかし、他国製船舶を利用し入港料支払いの回避をはかるという。
ただ、米国は世界貿易戦争と米中貿易戦争という現代版戦争を同時に勃発させており、世界経済回復が遅れる可能性が示唆されている。
米国のように経済成長が雇用を伴わないデータセンター投資偏重では何れ成長は息切れする。サプライチェーンの半導体産業でも産業規模の割には雇用は少なく、トランプ関税爆弾に人海戦術のパッケージング会社もロボットに置き換えるスピードを速めている。それも米国での生産は僅かで、今後、半強制誘致外資工場による生産が米国でも始まりつつあるのが実態。
そうしたことを反映してか、世界の上半期の造船発注は▲57.6%減と大きく減少している。
世界経済の成長は50%以上が消費に依存し、米国にあっては70%に達する。景気が雇用に悪影響を及ぼせば世界経済は低迷する。
現在の中国が典型的な例だろうが米国以外への輸出を拡大させ、経済成長そのものは減速ながら4~5%を維持している。しかし、工場稼働最優先策により輸出は増加しても利益は出ず、賃金増加・雇用拡大に結び付かず、消費は低迷したままとなっている。8月は大学などの卒業により求職者が溢れ、例年若年失業率は高くなるが、今年も18.9%(昨年18.8%)まで急上昇している。
中国政府は昨年8月から今年初めまで経済回復の総合政策を講じての結果であり、利益の出ない輸出だけでは厳しい
韓国の造船業界によると、同じ仕様の船舶でも中国造船所の提示価格は韓国より最大20%安いという。鉄鋼価格=厚板価格や労務費の中韓の違いがそのまま価格に反映しているが、発注の船主側に対して中国国営銀行の貸付支援、政府レベルの納期保障など「パッケージ型金融支援」を行っており、船主の立場では中国が提示する条件がはるかに魅力的だという。
英クラークソンによると、上半期基準で世界のコンテナ船受注残高は、中国が694万TEUで全体の74%を占め、韓国は198万TEUで21.1%にとどまったという。
韓国勢は上半期に一部高付加価値船種を受注したが、市場の主導権は依然として中国が大きく握っている。
世界1位のスイスの海運会社MSCは7月に中国内5造船所に対して超大型コンテナ船20隻を、3位のデンマークのCMA-CGMは8月に大連造船所に21億ドル規模で10隻を発注している。
これら超大手海運会社は、トランプによる第2関税とされる中国製船舶の米入港料税の影響をさほど受けていないようだ。
ただ、造船大国の韓国の大手3社の造船所の船台は2029年まで満杯であり、納品はそれ以降になる。当然、そこにはトランプ大統領(任期2029,年1月まで)はいない。
ましてや米国で造船業が将来に向け復活するには、ヒト・モノ・ソフトが異常に高く、コスト面から不可能に近い。
最近は、中国の鉄鋼過剰生産問題もありコンテナ船も中国と韓国では価格差が生じ、韓国の受注は限られ、韓国勢は技術を要する高付加価値のLNG船の受注に集中している(ただ、箱型は仏社パテントで受注額の0.5%あまりが特許使用料支払い)。すでにカタールからも大量に受注している。
韓国のハンファは米造船所を買収しているが、現行年間1.5隻を今後20隻まで増加させるという、しかし、ヒト・モノ・カネ・技術投入でも実現は2027年以降になると見られる。それも米政府は国産鋼材を使用せよなど多くの圧力をかけるものと見られる。韓国の造船所では、溶接の多くを担っているのはベトナム人労働者である現実もある。
スクロール→
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造船受注 中韓 |
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中国 |
韓国 |
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24年 |
25年 |
24年 |
25年 |
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第1四半期 |
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977 |
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532 |
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第2四半期 |
3,800 |
1,496 |
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526 |
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第3四半期 |
2,693 |
1,047 |
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493 |
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第4四半期 |
2,077 |
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413 |
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1~3世界シェア |
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世界合計 |
14,127 |
5,990 |
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前期比 |
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-57.6% |
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中国 |
韓国 |
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1~3四半期 |
74.5% |
58.8% |
13.3% |
25.9% |
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中国25 |
韓24 |
韓国25 |
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↓25/1~6上半期 |
落札 |
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コンテナ船 |
TEU⇒ |
694 |
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198 |
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74.0% |
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21.1% |
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HD現代⇒ |
いろいろ |
6隻 |
21隻 |
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ハンファ⇒ |
陽明エバ |
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13隻 |
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25/7.(コンテナ船) |
ス・MSC⇒ |
20隻 |
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仏CMA-CGM⇒ |
10隻 |
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現在~年末までに |
デ・マースク⇒ |
LNG船12隻発注へ |
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2015年まで韓国勢が圧倒、3社が競争して赤字受注が経営不振、銀行管理下に置かれ、選別受注を強化、文政権の意向で2018年から再び安値受注を開始したが、その間、中国が台頭し、新コロナ事態で港湾滞留により船腹量が大幅不足、造船発注が急拡大した。新コロナ後は世界経済の回復期で造船発注は低迷、余剰生産鉄鋼材を武器に中国の造船業が取りまくり、価格競争についていけない韓国勢はコンテナ船も中国から大きな差を付けられ2番手となってしまっていた。韓国勢は唯一、露制裁で急拡大したLNG船では№1を堅持している。
海運会社はいくつかのグループに分かれ、海運(船舶)を相互利用しており、入港料の米国対応ではそうしたグループ内で空いている船舶を共用する可能性もある。
↓米国勢の海運会社は今や上位10社にも入っていない。海運会社は衰退、連れて造船会社も衰退が米国の現実。トランプがどげんかしようとしているが、任期4年、取り巻きで強力なカリスマ性を持った後継人物もおらず、どげんもならぬ。






