アイコン ≪第14回≫大林組、またしても問われる「安全」と「説明責任」


大村市新庁舎

単なる労災ではない。問題は、その後の『説明』である。
鹿島建設と並び、日本を代表するスーパーゼネコンの一角とされる大林組。
その名を聞けば、多くの人は「技術力」「施工能力」「大規模工事の実績」を思い浮かべるだろう。
しかし、いま問われているのは、建物を造る力だけではない。
事故が起きたとき、企業として正直に向き合えるのか。
現場の安全を最優先にできるのか。

 

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そして、行政機関に対して事実を正しく説明できるのか。
この当たり前の部分が、いま大林組に突きつけられている。
問題となったのは、東海旅客鉄道株式会社、つまりJR東海が発注した「中央新幹線第四南巨摩トンネル新設・東工区ほか」の工事である。
令和6年10月4日、この工事現場で労働災害が発生した。
労災そのものも重大である。だが、今回の問題の核心は、そこだけではない。
大林組と同社社員が、所轄の労働基準監督署に対し、事実と異なる説明を行っていたとされる点である。
その結果、大林組及び社員2名は、令和8年3月24日、鰍沢簡易裁判所から労働安全衛生法違反により罰金刑の略式命令を受けた。
つまり、これは「現場で事故が起きました」というだけの話ではない。
事故後の説明、報告、対応のあり方が問われているのである。
労災は、どれだけ注意していても、絶対にゼロにできるとは限らない。
建設現場は危険と隣り合わせであり、トンネル工事ともなれば、なおさらである。
しかし、だからこそ、事故が起きた後の報告は命綱である。
何が起きたのか。なぜ起きたのか。どこに危険があったのか。
同じ事故を二度と起こさないために、何を改めるのか。
この一つひとつを正確に積み上げるからこそ、次の安全対策が成り立つ。
そこに事実と異なる説明が入り込めば、再発防止の土台そのものが歪む。
現場の安全は、書類の上で守られるものではない。
しかし、虚偽の報告があれば、その書類すら信用できなくなる。
岐阜県はこの事案を受け、「岐阜県建設工事請負契約に係る入札参加資格停止等措置要領」に基づき、大林組に対する入札参加資格停止措置を講じた。
ここで大事なのは、行政処分の重さだけではない。
公共工事を受注する企業に求められるのは、技術力だけではないということである。
法令遵守。
安全管理。
説明責任。
そして、発注者や行政に対する誠実さ。
これらが揃って初めて、公共工事を任せるに足る企業といえる。

大林組

また、大林組をめぐっては、東京・八重洲のビル建設現場で発生した鉄骨落下事故も記憶に新しい。
昨年9月、東京駅前の大規模再開発現場で、鉄骨が落下し、作業員5人が死傷し、
そのうち2人が死亡、3人が重傷という、極めて重大な事故である。
報道によれば、ビル7階部分で鉄骨を吊り上げ、仮留めした後にクレーンのワイヤを外したところ、鉄骨5本、総重量約48トンが約20メートル下まで落下したという。
捜査関係者への取材では、大林組が警視庁に対し、鉄骨を支える支保工と呼ばれる仮設の土台について、強度計算を誤ったとの説明をしていると報じられている。
もちろん、捜査中の事案であり、最終的な刑事責任や事故原因の確定は慎重に見る必要がある。
しかし、少なくとも大林組自身も、工事再開にあたり、支保工等の強度計算や落下対策、施工計画、社内チェック体制を見直すと公表している。
ここでも問われているのは、現場の安全管理である。
巨大ゼネコンは、巨大な現場を動かす。
そこには、多くの下請け、協力会社、職人が入る。
一つの判断ミス、一つの確認漏れ、一つの無理な工程が、人の命に直結する。
だからこそ、スーパーゼネコンには、普通の企業以上の厳しさが求められる。
「大林組だから大丈夫」「大手だから安心」「実績があるから問題ない」
そんな看板だけで、公共工事の安全性や信頼性を語ってよい時代ではない。
公共工事は、税金で行われる。
そして、その現場では人が働いている。
看板の大きさではなく、事故後の姿勢を見る。
実績の数ではなく、説明の誠実さを見る。
価格の安さではなく、安全への覚悟を見る。
いま、大林組に問われているのは、まさにそこなのである。

JC-net・日刊セイケイ編集長・中山洋次

[ 2026年6月29日 ]
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