住製紙が清算へ 107年企業の資産・人材はどこへ 四国中央市で進む製紙再編
愛媛県四国中央市を代表する製紙会社、丸住製紙が107年に及ぶ歴史に幕を下ろす方向となった。ただ、その意味は単純な「製紙会社の消滅」だけではない。同社が保有してきた設備や人材の一部は地元企業へ引き継がれ、原料事業の資産も別の製紙大手へ移りつつある。日本一の「紙のまち」では、丸住製紙の清算と並行して製紙産業そのものの再編が進んでいる。
民事再生手続き中の丸住製紙は7月31日付で東京地裁に再生計画案を提出した。東京商工リサーチが入手した計画案によると、同社は今後解散し、債権者への最終的な弁済を終えた後に清算を結了、法人として消滅する方針としている。今後は計画案について説明会が開催される予定で、現段階では再生計画案に基づく方針である点には留意が必要となる。
丸住製紙は1919年創業。新聞用紙などを主力に成長し、2008年11月期には売上高約743億3500万円を計上した。しかし、新聞や出版物のデジタル化で主力市場が縮小。2023年11月期の売上高は約457億8500万円まで低下し、原料、燃料、物流費の上昇も重なった。2025年2月28日に民事再生法の適用を申請し、負債総額は約590億円に上った。
消える会社、残る製紙設備
今回の再生で注目されるのは、丸住製紙という法人が消滅する一方、生産設備や人材のすべてが地域から失われるわけではないことだ。
四国中央市に本社を置く紙製品大手のカミ商事は2025年10月31日、丸住製紙から「衛生用紙生産設備および関連資産等」を譲り受けた。カミ商事は同時に、丸住製紙の従業員の受け入れや関係者との引き継ぎを進めてきたことも明らかにしている。
丸住製紙は紙需要の変化に対応するため、2019年からペーパータオルなどの衛生用品事業を強化していた。2023年4月には大江工場で衛生用紙の抄紙機と加工設備を稼働させ、生産能力は年間約2万6000トン。設備投資額は約90億円に上ったとされる。
丸住製紙が生き残りをかけて進めた事業転換のための設備の一部が、結果として同じ四国中央市の製紙企業へ引き継がれる形になった。
新聞用紙は減少、衛生用紙は増加
この資産移転は、現在の紙市場の変化とも重なる。
日本製紙連合会によると、2026年1~6月の新聞用紙の国内出荷は前年同期比7.1%減、印刷・情報用紙も6.9%減となった。新聞用紙は6月単月で前年同月比5.6%減となり、61カ月連続で前年を下回っている。
一方、衛生用紙の2026年1~6月の国内出荷は前年同期比1.3%増。6月単月でも2.0%増となり、4カ月連続で前年を上回った。
丸住製紙が長年主力としてきた新聞・印刷用紙の需要が縮小する一方、同社が経営再建の過程で進出した衛生用紙は比較的堅調に推移している。
製紙会社の淘汰というより、紙の「使われ方」が変わるなかで生産設備の行き先も変化していると見ることができる。
日本一の「紙のまち」は今も全国首位
そして、丸住製紙の清算を四国中央市の製紙産業そのものの衰退と同一視することもできない。
四国中央市によると、2023年の「パルプ・紙・紙加工品製造業」の製造品出荷額等は6082億4940万円。静岡県富士市の5478億4513万円を上回り、市町村合併以降20年連続で全国1位となった。
丸住製紙だけでなく、大王製紙、カミ商事をはじめ多数の紙関連企業が集積する国内最大級の製紙産地であることに変わりはない。
むしろ今回見えてくるのは、巨大な製紙集積地だからこそ可能となる「地域内での設備と人材の引き継ぎ」である。
海外原料事業も別の製紙大手へ
丸住製紙を取り巻く再編は国内設備だけではない。
日本製紙は2026年2月、豪州子会社などを通じ、丸住製紙と丸紅が共同出資していたニュージーランドの針葉樹チップ生産・輸出会社「Marusumi Whangarei Company Limited」の全株式を取得することで合意したと発表した。
同社は1995年、丸住製紙向けの製紙原料を供給する目的で設立され、丸住製紙が51%、丸紅が49%を保有していた。日本製紙側は取得後、新会社として事業を継続する計画を示している。
丸住製紙という一つの企業体を構成してきた生産設備、人材、海外原料事業が、それぞれ別の企業へ移っていく構図が鮮明になっている。
「企業の消滅」と「産業の消滅」は違う
四国中央市も紙産業を取り巻く環境の厳しさを認識している。
市は2026年度の施政方針で、紙関連の製造品出荷額が20年連続全国1位である一方、円安、原燃料費高騰、深刻な人手不足などで企業経営を取り巻く情勢は厳しいと指摘。さらに紙需要の減少を含む環境変化を踏まえ、「従来の産業構造からの脱却」に向けた取り組みを掲げている。
丸住製紙の再生計画案が実行されれば、1919年創業の名門企業そのものは姿を消すことになる。
しかし、その設備や技術、人材の一部は別の企業へ移り、製紙産業の中で使われ続ける。新聞・印刷用紙から衛生用紙や包装分野などへ需要が移るなか、企業単位ではなく「産地全体」で生産資源を組み替える動きとも捉えられる。
丸住製紙の107年の歴史が終わろうとしている一方、日本最大の「紙のまち」では、その資産を次の企業へ渡しながら、新たな産業構造を模索する再編が始まっている。
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