アイコン 東大 搾取の発生解明 囚人のジレンマゲーム

 

 

東大の藤本悠雅(大学院総合文化研究科広域科学専攻 博士課程3年)と金子邦彦(大学院総合文化研究科広域科学専攻教授/生物普遍性連携研究機構長/複雑系生命システム研究センター長)は、囚人のジレンマゲームにおける搾取の発生を解明した。

 
◆二人の個人が互いを認知し合い行動する状況で、自分がより利益を得るように学習を行う過程を定式化した。
◆互いに利己ないし利他行動を選択する囚人のジレンマゲームにおいて、学習により搾取関係が双方にとって安定に発生することを証明した。
◆二人の能力・ゲームは対称でも、両者の初期行動の微小な差が増幅され、搾取する側とされる側に次第に分化し大きな搾取関係が定着し得る。
3.発表概要:
搾取は社会において頻繁に見られる現象である。搾取する側はされる側の利益を犠牲にし、不等な利益を得ている。一方で、搾取される側も、たとえ自力で搾取関係を解消できるのだとしても、その関係を受け入れている。果たして搾取は、環境や個人の能力の差によって生まれるものなのか、それとも対等な個人間においても避けられないものなのか。
 
囚人のジレンマゲームは、社会における行動選択を表現する数理モデルの一つ。
相手を裏切ることで自分の利益を追求することができるが、相手に協力することは自分が裏切ることで得る利益よりも多くを相手に与えることができる。
この場合、個人間に協力を行う確率に差が存在すると、そこに搾取関係が存在することになる。
 

長年の囚人のジレンマにおける研究は、個人が利他行動として対称的な協力関係を築く機構が注目され、非対称な搾取関係の発生する機構は解明されていなかった。

今回、東大大学院総合文化研究科の藤本悠雅 大学院生と金子邦彦教授は、個人が相手を学習し、より自分の利益を高めようとする中で、その学習が対称的であるにも関わらず搾取関係が発生しうることを理論的に示した。
 
その過程において、初めは似通っていた両者が、相互学習によって搾取者と被搾取者の役割に分化する、対称性の破れを発見した。
 
本研究成果は、両者が自身の利益を追求するだけで搾取が生じうることを示し、社会における搾取の発生起源ついての新たな視点を提供したもので、今後の発展が強く期待される。
 

 

相手の初期戦略
相手が搾取
相互裏切り
相互協力
自分が搾取
 
自分の初期戦略
 
囚人のジレンマゲームとは、
 
社会で頻繁に見られるような、個人が利己か利他行動かの選択を迫られる状況を数理的に表したものである。
例として、共犯を行ったと疑わしい囚人二人を捉えたが、証拠が不十分であった。
 
検察官は証拠を十分にするために、相手の罪を告白するか黙秘するか二人に別々に取引をもちかける。
「両方とも罪を黙秘するなら証拠不十分で2年の刑で済む。でももし片方のみが相手の罪を告白したなら、告白した方は釈放、された方は5年の刑になる。両方とも罪を告白したなら証拠十分で4年の刑を受ける。」
囚人らは相手の罪を告白する方が得だが、両者告白するよりは両者黙秘した方が得であるという、利己か利他かのジレンマを抱える。
 
以上、リリースより

[ 2019年11月 6日 ]

 

 

 


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