≪金子原二郎 伝≫老兵は死なず、ただ電話は鳴りやまず。

自民県連、長崎。
秋晴れの空の下、風は冷たいが、権力闘争の温度だけは年中灼熱である。
10月26日。
来年2月の県知事選をめぐり、自民党長崎県連は意向投票を実施。
平田研:17票
大石賢吾:16票
――この数字が意味するのは「勝敗」ではない。
“真っ二つ”という美しいまでの内部分裂である。

そんな中、静かに燃え上がったのは、長崎政界の永遠の主役・金子原二郎御大。
齢を重ね、影も霞むか……と思いきや、いやはや、
レジェンドはレジェンドらしく、受話器片手に蘇る。
夜討ち朝駆けの電話攻勢。
平田派の議員、選考委員、誰彼かまわず、着信画面には「金子原二郎」。
この表示、心臓に悪い。
圧がすごい。Wi-Fiより強い。
「大石でいけんか」
この低い声が飛べば、スマホの電池も震えるという噂だ。

とりわけ象徴的なのが、大村の松本洋介県議。
地元には平田支持を公言していた彼も、前日25日に原二郎事務所に“召喚”。
“ご高説”を賜ったとか、圧を浴びたとか、空気が震えたとか……
詳細不明のまま、噂だけが肥大化する長崎政界名物“霧の中ルール”。
ただ一つ確かなのは、
彼が寝返ったのか、踏みとどまったのかすら分からぬほど、
長崎の派閥均衡は紙一重のワルツだということである。
今日11月1日、総務会で正式決定――
さあ、大石派の逆襲はあるのか?
それとも……
「老兵は死なず」と言った将軍は、実は“電話で戦う時代”を予言していたのかもしれない。
老兵は死なず。
ただ、着信履歴に残るのみである。

JC-net・日刊セイケイ編集長・中山洋次





