海砂は誰のものだ?――静かに進む"見えない合意"と県庁の沈黙
(海砂採取事務取扱要領をめぐるお話)
海の底に眠る砂はコンクリートや造成等に欠かせない、建設業界の生命線である。
その海砂が、いま県庁の一室でひそかにざわつきを生んでいる。
というのも、「海砂採取事務取扱要領」なるルールが、どうやら**“競争を制限する装置”として機能しているのではないか?**という指摘が絶えないからだ。
…とはいえ、県庁の答えはいつも淡々としている。
淡々としすぎて、逆に意味深い。
① カルテル疑惑という海流が、県庁の足元を揺らす
建設業界からは「複数の採取業者が価格や生産量、さらには市場の担当区域まで“話し合ってる”らしい」という噂が流れてくる。
もちろん、そんなことが事実なら独占禁止法まっしぐら。
公正取引委員会の出番である。
しかし県庁に聞けばこうだ。
「把握しておりません」「そのような通報は特に…」
いやいや、本当に?
海砂は“公有産物”で、県が許可権者。
その市場で不穏な動きがあれば、本来まっ先に気づくべきは県の側だ。
ところが現実は、“気づいていない”のか、“気づかないことにしている”のか分からない沈黙が続く。
② 公取委案件かもしれないのに、要領はなぜ手つかず?
さらに不思議なのは、要領改定が長年放置されてきた点だ。
カルテルの温床とまで言われる仕組みがあるのに、県は動かない。
動かないどころか、なぜ動かないのかも説明しない。
そして誰もが気になるのは、ひとつの素朴な疑問。
「この案件、知事や土木部長に報告行ったんですか?」
当然行っていそうなものだが、どうも怪しい。
もし報告していなければ、これは行政組織としてはかなりの“重大な不作為”。
県民の資産に関わる案件なのだから、上層部が知らずに済む話ではない。
報告していたのなら、なぜ改善されなかったのか。
報告していなかったのなら、なぜ握りつぶされたのか。
どちらにしても、そこには 「説明されていない空白」 が広がっている。
③ 漁協の同意で海砂が動く奇妙な仕組み
そして極めつけはこれだ。
海砂採取の許可を出す際、県はなぜか 「漁協の同意があればOK」 という不可思議な運用を続けている。
待て待て、と読者は思うだろう。
海砂は県民の財産。
漁協は漁業者の組織。
もちろん漁業被害の調整は大切だが、
なぜ漁協だけが“実質の決裁権”を握る構造になっているのか。
迷惑料の受け皿も特定関係者に固定され、透明性は決して高くない。
これでは「公的資源の私物化では?」と疑われても仕方ない。
本来なら、関係事業者・専門家・県民代表などが参加する
第三者的な審査の仕組みがあって然るべきだ。
だが現状は、漁協の同意書ひとつで話が進む“閉ざされた海域”。
この構造こそ、県民が知るべき本質ではないか。
④ 説明されない仕組みは、やがて信頼を失う
海砂採取のルールは、一般県民には見えない場所で動く。
だからこそ、透明性と説明責任が不可欠だ。
それなのに──
• カルテル疑惑への無反応
• 要領改定の放置
• 上層部への報告の有無が曖昧
• 漁協同意だけで進む奇妙な決裁
こうした問題が積み重なれば、県政は信頼という砂を指の間からこぼし続ける。
海の砂は有限だ。
そして県政の信頼もまた有限である。
“海の底”より深い闇を掘り起こすとき
海砂採取事務取扱要領は、ただの内部ルールではない。
そこには、県民の共有財産をどう扱うかという“行政の哲学”が露わになる。
いま必要なのは、
見ないふりをしてきた仕組みを一度ひらいて、県民の前に置き直すことである。
海底の砂よりも、
この「見えないルール」を掘り返す作業のほうが、
よほど社会にとって大切なのだ。
JC-net・日刊セイケイ編集長・中山洋次





