【長崎】高齢者とペット、福祉連携はどこまで 長崎市は飼育困難者を支援、佐世保は65歳以上世帯に準譲受人
高齢の飼い主が病気になった、入院することになった、犬の散歩や猫の世話を続けるのが難しくなった――。ペットをめぐる問題が、飼い主本人の高齢化や生活困窮、介護などの福祉課題と重なるケースが出ている。
長崎市の高齢化率は2026年3月末現在で35.3%。市の動物愛護管理センターには、高齢の人が病気などで犬猫を飼えなくなったり、近隣の高齢者が犬の散歩などの世話をできなくなったりしているという相談が寄せられており、市はこうした相談が増えているとしている。
長崎市では、動物行政だけで問題を処理するのではなく、動物愛護団体、高齢者や生活困窮者の相談支援事業者、介護事業者などをつなぐ取り組みも進めてきた。一方で、飼い主が入院した際などに行政がペットを一時的に預かる制度はない。
高齢化が進む長崎で、飼い主とペットの双方を「飼えなくなってから」ではなく、その前の段階で支えられるか。地域の動物問題は福祉の問題にも広がっている。
高齢化率
高齢世帯の譲渡条件
県の届出基準
行政の一時預かり
高齢化率35.3% 「世話を続けられない」の相談
長崎市では2026年3月末現在、高齢化率が35.3%となり、65歳以上が総人口のおよそ3分の1を占めている。
市の動物愛護管理センターは、高齢の人が病気などで犬猫を飼えなくなった、近所の高齢者が犬の散歩などの世話をできなくなっている、といった相談が増えていると説明している。
ペットも年齢を重ねれば医療や介護が必要になる。飼い主自身の健康状態が変わった場合には、それまで続けていた散歩、通院、餌やり、排せつ物の処理などが難しくなることもある。
市は、高齢者がペットを飼う際には動物の寿命と自身の将来を考え、飼えなくなった場合に家族や知人など誰が代わって飼育するのかをあらかじめ考えておくよう呼びかけている。
長崎市、「犬の引取り相談」から福祉機関へ
長崎市の2024年度(令和6年度)の協働事業実績を見ると、動物行政と福祉をつなぐ取り組みが具体的に示されている。
動物愛護管理センターは一般社団法人長崎ライフオブアニマルと「犬の引取り相談」で協働。飼い主の高齢や病気などによって犬の飼育継続が困難になった場合に、引取り相談だけでなく、飼い主への飼育支援や里親探しなどを行っている。
市はこの取り組みによって、動物愛護団体への引取りや里親探しが円滑になり、飼育放棄によるネグレクトなどの防止や、行政による犬の引取り数・殺処分数の減少に効果が出ているとしている。
さらに重要なのが、犬の問題だけで対応を終わらせていない点だ。必要に応じて高齢者や生活困窮者の相談支援事業者など福祉関係機関へ飼い主をつなぎ、本人への福祉的な支援にもつなげている。
「ペットを引き取る」だけでなく、「なぜ飼えなくなったのか」という人の生活上の問題まで支援対象にしている。
多頭飼育崩壊では介護事業者も連携
人と動物を同時に支える考え方は、多頭飼育崩壊への対応でも確認できる。
長崎市は2024年度、高齢者、障害者、生活困窮者に関わる相談支援事業者や介護事業者、動物愛護団体などの協力を得て、多頭飼育崩壊に対応している。
犬猫の不妊去勢や譲渡、適正飼養の助言・指導に加え、飼い主の生活環境改善や生活支援、周辺住民への生活環境被害の軽減までを一体的に進める仕組みだ。
市は、福祉関係事業者との協力によって、飼い主本人への福祉的な支援にもつながっているとしている。
また、公益財団法人どうぶつ基金を活用した多頭飼育救済でも、行政、動物愛護ボランティア、生活困窮者の相談支援事業者などが協働している。
一方、入院時のペットは行政では預からない
ただし、動物行政が高齢の飼い主を包括的に支える制度が整っているわけではない。
長崎市動物愛護管理センターは、入院などで一時的にペットを預ける必要が生じた場合でも、ペットの一時預かりを行っていない。
市はペットホテルやペットシッターなど民間事業者への相談を案内しているが、特定業者の斡旋も行っていないため、飼い主や家族が自ら預け先を探さなければならない。
予定された入院であれば事前に準備できる場合もあるが、救急搬送や突然の長期入院、死亡などでは、残されたペットの世話を誰が引き受けるのかが問題となる。
今回確認した公的資料では、長崎県内全域を対象に、高齢者の入院や施設入所時に利用できる公的なペット一時預かり制度は確認できなかった。
佐世保市は「飼えなくなる前」を譲渡時に確認
佐世保市では、問題が発生した後の支援とは別に、犬猫を譲渡する段階で将来の飼育継続を確認している。
佐世保市動物愛護センターから犬や猫の譲渡を希望する人が一人暮らしの場合、または本人を含む同居家族全員が65歳以上の場合には、別世帯に住む65歳未満の「準譲受人」が必要となる。
飼い主が将来、病気や身体状況の変化などによって犬猫を飼育できなくなった場合は、この準譲受人が代わって飼育する仕組みだ。
65歳以上という年齢だけで譲渡を認めない制度ではない。高齢者への譲渡を可能にしながら、その後の飼育継続が難しくなった場合の引受先を事前に確保する考え方となっている。
県も「福祉関係者との包括的支援」を施策に
長崎県も、多頭飼育問題を動物部門だけの問題とは位置付けていない。
2023年の県議会では、県側が「多頭飼育の背景には福祉的な問題が潜んでいることが多い」と説明し、社会福祉協議会や民生委員に動物の相談窓口や保健所の役割を説明しながら連携を図る考えを示した。
さらに県の総合計画では、動物愛護管理施策として「多頭飼育問題などに対する、市町や福祉関係者と連携した包括的な支援の推進」を掲げている。
2026年6月の県議会における知事説明でも、ボランティア団体などとの連携強化とともに、多頭飼育問題への対応を進める方針が示された。
県条例では、生後90日以内を除く犬と猫を一つの施設で合計10頭以上飼う場合、多頭飼養の届出も義務付けている。行政が問題を早い段階で把握するための仕組みの一つとなっている。
見えないのは「何件起きているのか」
行政と福祉の連携の仕組みは確認できる一方で、実態を数字で把握するには課題が残る。
今回確認した公的資料では、高齢者の病気、入院、施設入所、死亡などを理由に飼育継続が困難となった相談が年間何件あるのか、そこから何頭の犬猫が新しい飼い主へつながったのかといった専用の統計は確認できなかった。
長崎市も「高齢の方が病気等で犬猫を飼えなくなった」といった相談が増えていることは公表しているが、高齢者関連だけを切り分けた件数は示していない。
高齢化率が上昇するなか、動物行政と介護、生活困窮、地域包括支援などをどの段階でつなぐのかを考えるには、相談の内容や件数を継続的に把握することも重要になる。
「飼えなくなってから」の問題にしないために
ペットは高齢者にとって生活の張りや家族の一員になる一方、犬猫の寿命が飼い主自身の健康寿命を超えることもある。
問題になるのは高齢者がペットを飼うことではなく、病気や介護、生活困窮などで飼育環境が変化したときに、相談先や引受先がないまま問題が深刻化することだ。
長崎市では、動物愛護団体と福祉関係機関をつなぐ支援が実際に行われ、佐世保市では譲渡時から将来の引受人を確保する仕組みが設けられている。県も今後、市町や福祉関係者と連携した包括的な支援を進める方針を示している。
飼い主本人への支援と、残される犬猫への支援を別々に考えない。高齢化が進む長崎では、その接点をどう広げるかが次の課題となっている。





