【トイザらス民事再生】玩具市場は過去最高なのになぜ 子供向けは伸び悩み、Amazon時代に薄れた「何でもある店」の強み
日本トイザらスが10月1日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。負債総額は約132億2,600万円。国内最大級の玩具専門店が再建手続きに入った一方、日本の玩具市場は過去最高を更新している。
一見すると矛盾しているように見える。
しかし、現在伸びている玩具と、トイザらスが長年強みとしてきた商品を分けてみると、事情はかなり違ってくる。
さらに長期低迷を考えるうえでは、少子化だけでなく、AmazonなどECの普及によって「大型店へ行けば何でもある」というトイザらス最大の武器そのものが薄れていったことも見逃せない。
| 企業名 | 日本トイザらス株式会社 |
|---|---|
| 所在地 | 神奈川県川崎市 |
| 法人番号 | 6020001071355 |
| 手続き | 民事再生法の適用申請 |
| 申請日 | 2026年10月1日 |
| 負債総額 | 約132億2,600万円 |
| スポンサー | PPIH |
玩具市場は1兆1,664億円、6年連続で過去最高
日本玩具協会によると、2025年度の国内玩具市場は前年度比6.3%増の1兆1,664億円となり、6年連続で過去最高を更新した。
ただし、市場全体を690億円押し上げた中で、最大の伸びを記録したのはカードゲーム・トレーディングカードだった。
同市場は2024年度の約3,024億円から2025年度には約3,384億円へ拡大。1年間だけで約359億円増え、玩具市場全体の3割近くを占めるまでになった。
プラモデルやフィギュアなどのホビーも約1,960億円、ぬいぐるみも約624億円まで拡大した。
つまり、「玩具市場が過去最高」という数字は、必ずしも小さな子供に親が買い与える玩具が絶好調という意味ではない。
トイザらスが強かった子供向け市場は伸びが鈍い
トイザらスが長年強かったのは、乳幼児玩具、知育玩具、人形、ままごと、トミカやプラレールなどの乗り物玩具、自転車、三輪車、ベビーカー、チャイルドシートといった子供・ファミリー向け商品だった。
しかし、この分野は玩具市場全体ほど伸びていない。
ブロック、プリスクール、幼児キャラクター、ベビー用品、乗用商品などを含む「知育・教育」は、2024年度の約1,834億円から2025年度は約1,876億円と伸びは2%台。ドール・ままごとも約350億円とほぼ横ばいだった。
さらに子供用自転車では、2024年の約88万7,000台から2025年は約80万6,000台へ約9%減少。幼児車も約26万8,000台から約26万7,000台へ微減となった。
市場全体は好況でも、トイザらスが得意としてきた「親が子供の成長に合わせて買う商品」の多くは、横ばいか低成長、一部では縮小している。
Amazon時代に薄れた「何でもある大型店」の価値
トイザらスの長期低迷を考えるうえで、もう一つ大きいのがECの普及だ。
かつてトイザらスには、「ここへ行けば子供向け商品が何でもそろう」という圧倒的な品ぞろえの強みがあった。
ところがAmazonなどネット通販が普及すると、欲しい商品が決まっている買い物では、大型店へ足を運ぶ必要そのものが薄くなる。
商品名を検索し、価格を比較し、在庫やレビューを確認して、自宅まで届けてもらえる。レゴ、トミカ、プラレール、キャラクター玩具など、商品名や型番で選びやすい定番玩具ほどECとの競争になりやすい。
トイザらス自身も早い段階から、この変化を認識していた。
2014年には、それまで実店舗価格が対象だった「低価格保証」をインターネット通販価格まで拡大。同年にはオンラインストアを全面刷新し、品ぞろえ拡大やレビュー機能、実店舗との連動強化を進めている。
これは裏を返せば、10年以上前からネット通販との価格・利便性競争が経営課題になっていたことを示している。
自転車や大型遊具はネットでも難しい商品になった
一方、トイザらスが昔から得意としてきた自転車、大型遊具、ベビーカーなどは、ECに移せば簡単に解決する商品でもない。
日本トイザらスは2018年、自転車など大型別送品の送料を1,950円から6,000円へ引き上げた。
さらに2026年4月には、自転車、大型滑り台・ジム、二人乗りベビーカーなどの大型別送品を全国一律8,000円へ値上げしている。
大型店では実物を展示できる強みがある一方、オンラインで販売すれば配送コストが重い。
かつてトイザらスの差別化商品だった大型商品は、市場そのものが伸び悩むうえ、ECでは物流費という別の問題も抱えるようになった。
孫へのプレゼントも「店へ行く」から「ネットで送る」へ
玩具には、誕生日やクリスマスなどプレゼント需要が大きい。
近隣に住む祖父母が孫と一緒にトイザらスへ行き、本人に好きな商品を選ばせるのであれば、店へ行くこと自体が家族のイベントになる。
しかし、遠方の祖父母や叔父、叔母からのプレゼントなら状況は違う。
日本トイザらス自身も2026年にオンラインで利用できるデジタルギフトを導入した際、「遠くに住んでいて直接会えない」「近くに店舗がない」といった利用場面を例に挙げている。
欲しい商品が分かっていれば、オンラインで注文して直接相手の家へ届けることができる。
こうしたギフト需要のオンライン化がトイザらスの売上減少にどこまで影響したかを示す数字は確認できないが、「プレゼントだから玩具店へ行く」という従来の購買行動が必須ではなくなったことは確かだ。
ゲームのDL化だけでは説明できない
ゲームについても、「ダウンロード販売が増えたためトイザらスが苦しくなった」と単純に考えるのは適切ではない。
現在のトイザらスのテレビゲーム売場は、Nintendo Switch、Switch 2など任天堂商品が中心だ。
Switchは子供やファミリー層との親和性が高く、誕生日やクリスマスのプレゼント需要も期待できる商品で、トイザらスにとってむしろ残された有力カテゴリーといえる。
PlayStation商品の取り扱いをいつ終了したかは確認できず、ゲームのDL化を日本トイザらスの長期低迷の主要因とする根拠も確認できない。
トイザらスもキダルトへ動いていた
では、トイザらスは成長する大人向け市場を見ていなかったのか。
そうでもない。
2025年3月には東京・お台場に同社初の常設キダルト専門店を開業。その後、キダルト専門店を4店舗まで増やし、37店舗で専用コーナーを展開。さらに32店舗でブラインドボックスの品ぞろえを強化した。
フィギュア、ブロック、トミカ、ブラインドボックスなど、大人のコレクション需要を取り込む動きは始まっていた。
つまり、「成長市場に全く対応しなかったから倒れた」とするのも正確ではない。
問題は、転換を始めた時点ですでに従来事業の縮小が大きく、キダルト分野の拡大だけでは全社の落ち込みを埋め切れなかったことにある。
売上は約1,943億円から752億円へ
日本トイザらスの売上高は、ピークだった2007年1月期の約1,943億6,500万円から、2025年12月期には約752億1,100万円まで落ち込んだ。
約20年間で売上規模は約61%縮小した計算になる。
2019年1月期に最終赤字へ転落して以降は8期連続の赤字となり、希望退職などの構造改革を進めても業績を立て直すことができなかった。
少子化は当然逆風だった。
ただ、子供が減っただけなら、国内玩具市場が過去最高を更新していることを説明できない。
「誰が玩具を買うか」が子供だけから大人へ広がり、「どこで買うか」が大型玩具店からECや専門店、量販店へ分散した。
トイザらスの長期低迷は、この二つの変化が同時に進んだ結果とみる方が実態に近い。
PPIHが買うのは「昔のトイザらス」ではない
再建スポンサーとなるPPIHが狙うのも、かつての大型玩具店をそのまま復活させることではない。
PPIHとトイザらスを合わせた玩具売上規模は約1,500億円となる見通しで、調達量を生かした人気商品の確保、仕入条件改善、限定商品や先行販売、オリジナル商品の拡充を進める。
さらにアピタやMEGAドン・キホーテへのトイザらス展開も想定する一方、既存店ではIP、キャラクター、キダルト商品を増やす。
PPIHが掲げるのは「おもちゃ屋」から「アソビ業態」への転換だ。
商品を買うだけの場所ではなく、見て、触れて、遊び、人が集まる場所へ変えることで、ECにはない来店理由を作ろうとしている。
玩具市場は最高なのに、なぜトイザらスは民事再生にの答え
日本トイザらスの民事再生は、「子供がおもちゃを買わなくなった」という話ではない。
玩具市場そのものは過去最高だ。
しかし、成長している場所はトレーディングカード、ホビー、フィギュア、ぬいぐるみなど、大人需要も大きい市場へ移っている。
その一方で、トイザらスが伝統的に強かった乳幼児・子供・ファミリー向け市場の伸びは鈍く、自転車など一部の商品では数量そのものが減少している。
さらにAmazonなどECの普及によって、「大型店に行けば何でもある」という優位性まで小さくなった。
売れる玩具が変わった。そして、玩具を買う場所も変わった。
トイザらスはその変化に対応しようとしていたものの、約20年続いた既存事業の縮小を反転させるまでには至らなかった。
PPIHが「アソビ業態」への転換を掲げるのは、昔のトイザらスの再現では、もう再建できないと見ているからともいえそうだ。
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